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カナダにおける原油生産
今日は、アメリカの隣にあるカナダの原油生産について書いてみたい。カナダは世界有数のエネルギー生産国で、内訳は原油、天然ガス、電力(水力)などを生産して輸出している。これらの輸出先の大部分がエネルギーの大量消費国であるアメリカ向けとなっていることが特徴。原油の生産国では2018年時点では4位にランクされていて、埋蔵量では1670億バレルと世界3位の規模を誇っているが、その原油の生産はオイルサンドやビチューメン(天然アスファルト)といった、油田からくみ上げるのではない非在来型の原油が多くを占めている。 カナダでは2000年代以降に西カナダのアルバータ州のオイルサンドからの採掘技術が開発されて当時の100億バレルから急速に埋蔵量を増加させている。
カナダの原油産業の特徴
カナダ産原油の特徴は輸出量のほぼ全てがアメリカへ輸出されていることが上げられる(図1)。

この要因としては輸送インフラが貧弱なことで西カナダから原油を輸出するにはアメリカへ南下するパイプラインを経由するか貨車を使って輸出するしかない状態となっていて生産地でだぶついていることとなっている。どういうことかというと、図2は西カナダ産原油(WCS)の価格とWTIの価格差となっているが、平均で1バレル当たり15ドルも安い価格でアメリカへ販売されている。これは貨車を使って輸送する際の輸送費を割り引いて販売していることのようで、アメリカに投げ売りしているのが現状のようだ。

図3はアメリカの原油輸入量を石油産業の集中している南部地域で見た量の推移となっているが、アメリカの原油輸入全体がシェール革命以後減少する中で、カナダ産は若干ではあるが増加していることがわかる。

カナダの原油生産の将来
下図はEIAによるカナダの原油生産の予想で、2018年の日量520万バレルから2024年には550万バレルまで緩やかに上昇すると見られている。前述のカナダの原油産業の特性として輸送が可能なのがアメリカに限られることで、価格が安く抑えられているため開発が進まないというのが現状といわれている。

*2018年までは実績、それ以後は見通し
まとめ
今回はアメリカの隣にある世界有数の原油輸出国カナダについてまとめてみた。カナダ産の原油は、特筆すべきこととしてはそのほとんどがアメリカに安価で輸出されていることが挙げられる。これはカナダが生産を増加させた分はアメリカに輸出されて最終的にアメリカ産原油が輸出される量が増加することを意味してもいる。WTIの価格が60ドル台となると生産コスト的に西カナダ産原油に経済性が生まれるとされており、原油価格が現状の60ドル台で留まる場合には増産が加速しそうだ。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。