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続く天然ガス価格の下落
天然ガス相場はついに1.900ドルを割り込み1.800ドル台前半まで下落した。天然ガス生産が史上最高レベルに達して高止まりしていることや、2月の気温が暖かくなるとの予報が続き、暖房用需要は今後も伸び悩むとの見方が引き続き懸念材料となっている。昨日、発表された天然ガス在庫量は前週比で201Bcf減(各社予想150~200Bcf減と)となり前週の92Bcf減を大きく上回ったが、なお在庫水準が例年より高いことが弱材料となっている(図1)。

天然ガス生産量と在庫
今週のEIAの週間報告から生産量と供給量の数字を抜き出したものが下表となるが、生産量は横ばい、需要量はわずかに減少となった。この今週の需要量は来週の在庫統計に現れてくる数字となるため、来週の在庫減少量は例年並みとなると考えられ、在庫過多の傾向は変わらないと思われる。
表1 天然ガス週生産量(出展元 EIA)
生産量 | 今週(Bcf/日) | 前週(Bcf/日) | 前年同時期(Bcf/日) |
生産量 | 107.4 | 107.5 | 99.9 |
供給量 | 99.4 | 100.3 | 94.0 |
需要量 | 118.1 | 126.9 | 119.6 |
表2は輸出量と需要量について見たもので、先週よりもLNGの輸出量が増大しており、10Bcf/日も見えてきた。日本でも1月23日にアメリカの新しい輸出基地を出発したLNGタンカーが入港しており、今後も輸入量が増大することが見込まれている。
表2 天然ガス週輸出量と需要量(出展元 EIA)
輸出量と需要量 | 今週(Bcf/日) | 前週(Bcf/日) | 前年同時期(Bcf/日) |
輸出量(LNG) | 9.2 | 8.2 | 4.1 |
輸出量(メキシコ向けパイプライン) | 5.6 | 4.9 | 5.0 |
需要量合計 | 118.1 | 126.9 | 119.2 |
最後に在庫量についてまとめたものが下の表3となる。すべての地域で在庫が減量しており、特に東部や南部で在庫の減少が明確に見えている。今回在庫が減少した主な要因は発電用の需要が例年よりも高かったことだった。それでも平年の在庫量2553Bcfに比べて約10%多い状態となっている。
表3 天然ガス地域別在庫(出展元 EIA)
地域別在庫量 | 今週(Bcf/日) | 前週(Bcf/日) | 前週比(Bcf/日) | 平年同時期(Bcf/日量) |
東海岸 | 638 | 696 | -58 | 583 |
中西部 | 761 | 815 | -54 | 687 |
山岳部 | 143 | 151 | -8 | 144 |
太平洋岸 | 210 | 220 | -10 | 235 |
南部 | 995 | 1065 | -70 | 904 |
全体 | 2746 | 2947 | -201 | 2553 |
天然ガス電力需要の今後の伸び
アメリカでは電力用の天然ガス需要が伸びている。図2は11月から3月までの冬の間の電力用の需要を示している。アメリカでの天然ガスの生産量の増加とともに発電用の需要は伸びており、2019年から2020年の冬(黒線)は過去5年間の平均に比べて日量で5Bcf以上増加した。EIAの年次報告ではアメリカ国内の天然ガスの消費量の35%を占めていて今後も増加していくことが予想されている。

図3はアメリカ国内の発電方法別の発電量と、再生可能エネルギーの内訳となっている。2050年までクリーンエネルギーとして再生可能エネルギーを別にすると天然ガスの発電量=需要は伸び続けることが予想されている。
まとめ
今週の天然ガス在庫の取り崩し量は前週を大きく上回ったが、ようやく平年並みの取り崩し量に達したに過ぎない。在庫量は依然として平年より約10%多い水準にあり、今後の相場の重しになると考えられる。加えて、2月中旬も東海岸側を中心に暖かい日が続く見込みで、天然ガスの消費量が増える見込みは立っていないと筆者は考えている。電力用需要は今後とも伸びていくことが期待されるが、即効性はあまりないため今年の冬は天然ガス価格の低迷は続きそうだ。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。