エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム10月02日)

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週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

EIAが発表した9月18日から9月25日までの天然ガス在庫の増減は前週より76Bcf増加(市場予想は78Bcf増、5年平均は78Bcf増)した3756Bcfだった。在庫の増加スピードが加速しに転じた。在庫量は平年同時期に比べ12.1%多い状態で、過去5年の同時期で最大の在庫量であることに変化はない。昨日の天然ガス市場は、生産量の増加を材料に下落で始まったが、LNG輸出が順調であることが下値を支える展開となった
今週のアメリカ国内の天然ガス供給量は日量91.1Bcfで、国内需要と輸出需要を合わせた総需要は日量79.2Bcfとなっている。
内訳だが、今週の天然ガス生産は前週より0.2Bcfの微増となった。需要面では総需要が前週の78.7Bcfから0.5Bcf増加した79.2Bcfとなった。内訳では住宅・商業用需要が0.7Bcf減少した8.9Bcf、電力用需要が1.1Bcf増加した30.4Bcf、工業用需要が0.1Bcf減少した21.2Bcfでほぼ横ばいとなった。輸出需要はLNG輸出が0.5Bcf増加した6.5Bcf、メキシコ向けのパイプライン輸出は0.1Bcf減少した5.9Bcfだった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。西海岸地域(PacificやMountain)では平年より高い気温が続いているため在庫の増加が少なかった。それ以外のアメリカ南部や中西部、東部では穏やかな気温となり、空調用需要が減少して在庫が積み上がった。在庫量の合計は3756Bcfで平年と比べて405Bcf、前年と比べて471Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並み(88Bcf)の増加とした場合には今月31日時点の在庫予想は4128Bcfとなる見込みで、在庫はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の87.9%、有効容量(4261Bcf)の96.9%に達しほぼ一杯となる見込み。

天然ガス需要と供給

表2は9月24日から9月30日までの天然ガスの供給の内訳となる。天然ガスの生産量は日量87.2Bcfと前週の87.0Bcfと比べて0.2Bcfの増加となった。カナダからの輸入が3.8Bcfと0.3Bcfの増加となり、供給量全体では前週比で0.6Bcf増加した91.1Bcfとなっている。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(9月24日から9月30日)の天然ガスの部門別需要の表となる。一日当たりの総需要量は60.5Bcfとなり前週比で0.3Bcfの小幅な増加となった。発電用需要が30.4Bcfと前週比で1.1Bcfの増加、工業用は21.2Bcfと前週から0.1Bcfの微減、住宅用・商業用は8.9Bcfと前週から0.7Bcfの増加となった。発電用需要は気温低下による冷房用需要の落ち込みで前年と比べて10%以上低くなっているが、統計に暖房用需要が表れてきたため、前週より需要が増加している。
輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.9Bcfと前週の6.0Bcfからほぼ横ばい、LNG輸出は前週から0.5Bcfの増加となる6.5Bcfだった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で最新の9月22日付の情報によると、リグ数の合計は261基と前週比で6基増加した。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。9月22日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が4基減少した183基、天然ガス採掘用は2基増加した75基となり、どちらの用途でもない3基を加えて6基増加した合計261基だった。原油採掘用リグ数は180基付近、天然ガス採掘用リグ数は70基付近で推移していたが、再び増加し始めているようにみえる。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では9月25日時点の在庫は前週比で76Bcf増加と各社予想の78Bcf増をやや下回った。天然ガスの生産量がハリケーンの通過で回復したことが要因になっていると考えられる。
需要側ではLNGやパイプラインによる輸出用需要がLNGの輸出が増加する等、今週も引き続き順調だった。一方で住宅用・商業用需要は0.7Bcf減少し、発電用需要は大幅減少の反動か1.1Bcfの増加となった。発電用需要はアメリカ東部からテキサス西部にかけての気温の低下により冷房用需要が大幅減少となった。一方で暖房用需要が例年より高まり、冷房用需要の低下を補っているため大は晩にはならなかった。記録的な熱波が山岳地域と太平洋岸で続いており、特に山岳地域では例年に比べて暖房用需要が大幅に減少している。LNG需要はハリケーン「ベータ」による混乱が収まったことで前週の6.0Bcfから0.5Bcf増加となり、新型コロナウイルスの感染再拡大前の需要を維持している。ただし、ハリケーン「ローラ」により被害を受けたキャメロン(Cameron)輸出基地の復旧は10月内には不可能と報じられている。ただし、新型コロナウイルスの大流行でLNG輸出設備の容量が余る中で、輸出港の振り替えで対応していると伝えられており、直近で大きな影響はないと考えられる。
供給面ではハリケーンの通過により生産量が回復しており、リグ数も増加しているため今後も増加することが期待される。
ハリケーン通過により一時的に在庫の増加ペースが落ち込んだが、通過後となった今週の統計では増加ペースが低下前の水準に回復している。増加量自体は市場予想をやや下回ったが今週の在庫は3756Bcfとなった。今週の在庫増加ペース76Bcfのままなら4週間で304Bcfが増加し、月末には4060Bcfとなり4000Bcf(貯蔵施設有効容量の93.8%)を上回る。例年通りのペース(88Bcf)となった場合は今月31日時点の在庫予想は4128Bcf(有効容量の96.9%)となる見込み。
天然ガス価格はLNG輸出需要の増加が相場の下支えとなっているが、世界全体で原油と同様LNGも在庫が過剰となっている。1例としてはヨーロッパ(EU)のガス在庫は昨日時点で有効容量の94.7%に達している。アメリカ国内のガス生産量の増加の見方に加えて、そろそろ過剰に積み上がった在庫が市場に意識されるのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。