エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム10月09日)

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週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

EIAが発表した9月25日から10月2日までの天然ガス在庫の増減は前週より75Bcf増加(市場予想は72Bcf増、5年平均は86Bcf増)した3831Bcfだった。在庫の増加スピードは横ばい。在庫量は平年同時期に比べ11.5%多い状態で、過去5年の同時期で最大の在庫量であることに変化はないが、例年より増加幅が小さい。昨日の天然ガス市場は、ハリケーン「デルタ」の接近によりメキシコ湾岸のガス生産量が減少する見通し材料に上昇した。LNG輸出需要が順調ながらも減少したことは材料視されなかった。
今週のアメリカ国内の天然ガス供給量は日量91.5Bcfで、国内需要と輸出需要を合わせた総需要は日量84.0Bcfとなっている。
供給側の内訳は、天然ガス生産が前週より0.1Bcfの微減の87.1Bcf、カナダからの輸入が0.5Bcf増加した4.3Bcfとなっている。需要側では総需要が前週の79.3Bcfから4.7Bcfと大幅増加した84.0Bcfとなった。内訳では住宅・商業用需要が4.4Bcfと大幅増加した13.2Bcf、電力用需要が0.7Bcf減少した29.7Bcf、工業用需要が0.4Bcf増加した21.6Bcfとなった。輸出需要はLNG輸出が0.8Bcf増加した7.3Bcf、メキシコ向けのパイプライン輸出は0.4Bcf減少した5.5Bcfだった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。在庫の増加量に前週と大きな差はなかった。例年と比べアメリカ南部や中西部、東部で気温が低下したため、住宅空暖房用需要が増加したため在庫増加スピードが落ちている。在庫量の合計は3831Bcfで平年と比べて394Bcf、前年と比べて444Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並み(86Bcf)の増加とした場合には今月31日時点の在庫予想は4117Bcfとなる見込みで、在庫はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の87.7%、有効容量(4261Bcf)の96.6%に達しほぼ一杯となる見込みは変わっていないが、気温低下により需要が伸びたため在庫量の増加スピードが落ちている。

天然ガス需要と供給

表2は10月1日から10月7日までの天然ガスの供給の内訳となる。天然ガスの生産量は日量87.1Bcfと前週の87.2Bcfと比べて0.1Bcfの微減となった。カナダからの輸入が4.3Bcfと0.5Bcfの増加となり、供給量全体では前週比で0.5Bcf増加した91.5Bcfとなっている。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(10月1日から10月7日)の天然ガスの部門別需要の表となる。一日当たりの総需要量は64.5Bcfとなり前週比で4.1Bcfの大幅な増加となった。内訳は発電用需要が29.7Bcfと前週比で0.7Bcfの減少、工業用は21.6Bcfと前週から0.4Bcfの増加、住宅用・商業用は13.2Bcfと前週から4.4Bcfの大幅増加となった。発電用需要は気温低下による冷房用需要の落ち込みで前年と比べて10%以上低くなっているが、気温低下による暖房用需要の高まりで住宅用需要が伸びて前週より需要が約50%の大幅増加となった。今年は新型コロナウイルスの感染対策でテレワークが推進されているため、例年と比べて住宅暖房用のガス需要は高まると予想されており、EIAの予想では5%程度需要が増加する見込み。
輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.5Bcfと前週から0.4Bcfの減少、LNG輸出は前週から0.8Bcfの増加となる7.3Bcfとなった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で最新の9月29日付の情報によると、リグ数の合計は266基と前週比で5基増加した。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。9月29日発表のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が6基増加した189基、天然ガス採掘用は1基減少した74基となり、どちらの用途でもない3基を加えて5基増加した合計266基となった。原油採掘用リグ数は190基付近と増加しつつあり、天然ガス採掘用リグ数は70基付近で横ばいとなっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では10月2日時点の在庫は前週比で75Bcf増加と各社予想の72Bcf増をやや上回った。天然ガスの供給は前週比で0.5Bcf増加した91.5Bcfとなった。カナダからのガスの輸入増加が要因で、アメリカ国内のガス生産量は0.1Bcfの増加とほぼ横ばいだった。
需要側では輸出用需要がLNG輸出の0.8Bcf増加に対して、メキシコ向けパイプライン輸出が0.4Bcf減と伸び悩んだが、全体として輸出は堅調だった。一方で住宅用・商業用需要が4.4Bcfと大幅に増加し、発電用需要は0.8Bcfの減少となった。アメリカ東部からテキサス西部にかけての気温の低下で冷房用の発電用需要は大幅減少となったが、同時に一方で暖房用需要が例年より高まり、全体で4.1Bcfの大幅な需要増となった。LNG需要は前週の6.5Bcfから0.8Bcf増加と順調となっており、新型コロナウイルスの感染再拡大前の需要を上回っている。
供給面では先週発表の統計では天然ガス生産用のリグ数が減少となり生産量は横ばいとなっている。一方で原油(シェールオイル)生産用のリグ数は6基増加しており、今後、原油生産の副産物としてのガス生産が増加すると考えられる。
今週の天然ガス在庫の増加量は市場予想をやや上回った3831Bcfとなったが在庫増加ペースは平年より小さい。今週の在庫増加ペースが75Bcf増なら3週間で225Bcf増加し、月末には4056Bcfとなり4000Bcf(貯蔵施設有効容量の93.8%)を上回ると予想している。例年通りのペース(86Bcf)となった場合は今月31日時点の在庫予想は4117Bcf(有効容量の96.6%)となる見込み。
天然ガス価格はハリケーンの接近による一時的な上げと、LNG輸出需要の増加が相場の下支えとなっている。とはいえ、主要輸出先の一つであるヨーロッパ(EU)の今日のガス在庫は有効容量の95.3%(前週の金曜日時点で94.7%)に達している。アメリカ国内では例年より早い冬の訪れにより暖房用の天然ガス需要が高まっているが、天然ガス在庫は平年より10%以上多いため、そろそろ過剰に積み上がっている在庫が市場に意識されるのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。