エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析10月1日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫は198万バレル減少となった。原油生産量は横ばいで、アラスカの生産が3.6万バレル増加し、2週間前の水準に戻った。原油の輸出入は161万バレルの輸入超過となったが、前週と比べて輸入が4万バレルの減少、輸出が49万バレルの増加となった。戦略備蓄(SPR)は25万バレルの放出が行われている。石油製品ではガソリン在庫が68万バレルの増加、留出油在庫は318万バレルの減少となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億6430バレルと前週比で約230万バレルの減少となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は178万バレル増加としばらくぶりに大きな増加幅となった。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が198万バレル減少となり、SPRを除く在庫は4億9240万バレルとなった。ガソリン在庫は68万バレルの増加、留出油在庫は318万バレルの減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は178万バレル増加となっている。

API統計 EIA統計EIA統計前週  EIA統計2週前 EIA統計3週前  
原油(万バレル)83
198減163減438減203増
ガソリン(万バレル)162
68増402減38減295減
留出油(万バレル)342減318減336減346増167減
クッシング在庫(万バレル)161増178増0.4増7減183増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。

Stock price graphs
図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

今週の原油生産量は日量1070万バレルと横ばいだった。アラスカの産油量は46万バレル増加し、2週間前の水準まで回復している。最盛期(1310万バレル)に比べて240万バレル少ない状態。今週の原油輸入は前週と比べて1日当たり4万バレル減少した512万バレルに、輸出は先週より49万バレル増加して351万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産328万バレル(前週293万バレル)、サウジアラビア産33万バレル(前週30万バレル)、メキシコ産61万バレル(前週80万バレル)、イラク産4万バレル(前週0万バレル)、コロンビア産14万バレル(前週35万バレル)、エクアドル産10万バレル(前週25万バレル)、ブラジル産7万バレル(前週0万バレル)、ナイジェリア産6万バレル(前週3万バレル)等で今週はカナダや中東からの輸入が増加し、南米やアフリカからの輸入が減少した。輸出入は日量161万バレルの輸入超過で今週は輸出入が共に減少したが超過幅は前週比95万バレルの減少となった。今週、Adjustmentが81万バレルとなり前週の17万バレルから64万バレルの増加となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるもので、今週はAdjustmentで在庫を増加させる形の調整となった。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前   4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)107010701090100010571240
戦略備蓄増加(万バレル/日)-25-11-30-4-170
原油輸入(万バレル/日)512516500543518629
原油輸出(万バレル/日)351302259294301286
Adjustment(万バレル/日)8117-75541963
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所の稼働率が1.0%上昇した75.8%となり、製油所への原油投入量は日量約30万バレル増加した1367万バレルとなった。前年の86.4%に比べると稼働率は相変わらず10%以上低い。石油製品の生産では前週と比較してガソリン生産量が日量約43万バレル減少した889万バレル、ジェット燃料の生産は約9万バレル増加した87万バレル、留出油の生産量は12万バレル減少した435万バレルとなった。

製油所稼働率等今週   前週   2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)136713371348127713321601
製油所稼働率(%)75.874.875.871.874.686.4
ガソリン生産(万バレル/日)  8899318818938981008
ジェット燃料生産(万バレル/日)8778816678172
留出油生産(万バレル/日)   435447440439440481
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が前週から日量1万バレル増加した851万バレルとほぼ横ばい。ジェット燃料の供給は8万バレル減少した85万バレル。留出油の供給は前週と比べて30万バレル減少した365万バレルとなった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)852851847839847913
ジェット燃料供給(万バレル/日)8593948690176
留出油供給(万バレル/日)365395280371353396
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べて製油所の稼働率は1.0%増加し、原油消費量は日量30万バレルの増加となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で43万バレルの減少と2週前の水準まで減少した。供給量は1万バレルの増加とほぼ横ばいとなった。輸入は17万バレル増加し、輸出は8万バレル減少した。生産の減少は大きかったが輸入の増加と輸出の減少でガソリン在庫が増加している。留出油の生産量は12万バレルの減少、供給量も30万バレルの減少となった。輸入はほぼ横ばいな一方、輸出は17万バレルの増加となり、生産の減少と輸出の増加が在庫増加の要因となった。ジェット燃料の生産量は9万バレルの増加、供給量は8万バレルの減少となった。航空需要の減少から供給(需要)は前年の半分程度にとどまっている。石油製品全体の供給(需要)量は日量1744万バレルと、前週の1843万バレルに比べて約99万バレルの減少となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は20億6430万バレルと前週から約230万バレルの減少となった。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。ガソリン・ディーゼル燃料の市中への供給量は共に増加したが、ガソリン卸売価格は約3セントの下落、ディーゼル燃料の卸売価格は前週から約5セントの下落となった。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)9/259/189/119/48/28前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.2561.2881.1551.2211.2841.754
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.1271.1711.0371.0881.1641.948
原油(ドル/バレル)40.0641.0937.3339.6642.9655.95
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格は前週からほぼ横ばい、ディーゼル燃料価格は約1セントの値下がりだった。

小売価格9/289/219/149/78/31前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1692.1682.1832.2112.2222.642
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5832.5822.6002.6242.6293.082
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8312.8362.8512.8722.8773.341
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.3942.4042.4222.4352.4413.066
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産は1070万バレルと横ばいとなった。前週減少したアラスカの原油生産は44万バレルまで回復している。需要側では製油所の稼働率が1.0%の増加となり、原油の消費量が日量30万バレルの増加となった。原油の輸出入は161万バレルの輸入超過ではあるが、前週比で4万バレル輸入が減少したのに対して輸出が49万バレルの増加となり原油在庫減少の主要要因となった。個々の石油製品ガソリンについては輸入量が増加、輸出量が減少となり、ガソリンの在庫増の要因となった。留出油は生産量の減少と輸出量の増加が供給量の減少を上回った事で、在庫が減少している。前週より石油製品の出荷は日量99万バレルの減少で、全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は、20億6430万バレルと前週比で230万バレルの減少となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格は双方とも供給が減少したが小幅に下落している。
今週の原油在庫の減少は輸出増加主な要因だった。アメリカ国内の石油製品の供給量(市中の需要)は約100万バレルの減少となったとなった。依然として供給量は日量1700万バレルから1900万バレルのレンジとなり、供給の増加と減少が1週間おきに起きるサイクルが続いている。
前週の原油相場は欧州における新型コロナウイルスの感染再拡大でロックダウンが再開し原油需要の先行きが悪化したことで売られたが、今週は欧州株が上昇したことで買い戻しが入る展開で始まったが、火曜日には新型コロナウイルスの感染再拡大に再度焦点が当たったことで、約1.50ドルの下落となった。そんな中リビアの輸出が前週の輸出再開から順調なペースで回復しており、更にゴールドマンサックスなどのレポートでは来年春までに日量100万バレルまで生産が回復すると予想されている。アメリカでも稼働中の原油採掘用リグが4基増となるなど、リグ数が底を打って上昇に転じる、つまりアメリカ産の原油生産が再度増加する兆しが見えている。OPECプラスの協調減産による価格調整には逆行する動きが進んでおり、現状の770万バレルの減産が妥当かどうかの議論が高まることが予想される。ただし、これまでサウジアラビアに最も協力的だった国の一つで自主減産も行っていたUAEが減産破りを行うなど、長引く減産に産油国間の結束も緩んできており、再度の減産枠の拡大は難しいのでないかと考えている。仮に減産枠の拡大が行われなければ、生産の回復と需要の伸び悩みが原油余りを早晩招くと考えている。新型コロナウイルスの最初の感染拡大のために需要が激減したことによる急速な在庫拡大の影響が各国の原油タンクに残っており、在庫の積み上げ余裕は確実に少なくなっている。前週のEIAの統計でオクラホマ州クッシングの原油在庫が増加に転じて、今週は178万バレル積み上がった。在庫率は約73%(在庫量約5600万バレル、貯蔵上限約7600万バレル)となっていおり、この数字は2020年の4月上旬の数字に近い。今後、クッシングの原油在庫が増加するのか減少するのかに注目する必要が高まっている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。