エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム10月23日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

EIAが発表した10月15日から10月21日までの天然ガス在庫の増減は前週より49Bcf増加(市場予想は50Bcf増、5年平均は75Bcf増)した3926Bcfだった。在庫量は平年同時期に比べ9.6%多い状態で、過去5年の同時期で最大の在庫量であることに変化はないが、例年より増加幅が小さくなっている。昨日の天然ガス市場は、LNG輸出需要が順調なことと、気温の低下による暖房用需要の増加見通しから上昇したが、後半利食い売りに押された。
今週のアメリカ国内の天然ガス供給量は日量92.0Bcfで、国内需要と輸出需要を合わせた総需要は日量87.7Bcfとなっている。
供給側の内訳は、天然ガス生産が前週より2.6Bcfの増加したの88.5Bcf、カナダからの輸入がパイプラインのメンテナンスが行われたため0.5Bcf減少した3.5Bcfとなっている。需要側では総需要が前週の81.2Bcfから6.5Bcfと大幅増加した87.7Bcfとなった。内訳では住宅・商業用需要が5.6Bcfと大幅増加した16.4Bcf、電力用需要が1.2Bcf減少した29.2Bcf、工業用需要が0.8Bcf増加した21.7Bcfとなった。輸出需要はLNG輸出が1.3Bcf増加した7.9Bcf、メキシコ向けのパイプライン輸出は5.9Bcfで横ばいだった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。例年ほどではないが、アメリカ中西部や東部を中心に気温が低下し、暖房用需要が増加、南部や太平洋岸では気温が高くなお冷房用需要があったため、在庫増加スピードが落ちている。在庫量の合計は3926Bcfで平年と比べて327Bcf、前年と比べて345Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並み(57Bcf)の増加とした場合には今月31日時点の在庫予想は4050Bcfとなる見込みで、在庫はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の86.2%、有効容量(4261Bcf)の95.0%に達する。ほぼ一杯となる見込みは変わっていないが、暖房や冷房といった空調用需要の伸びが大きく在庫量の増加スピードが落ちている。

天然ガス需要と供給

表2は10月15日から10月21日までの天然ガスの供給の内訳となる。天然ガスの生産量は日量88.5Bcfと前週の85.9Bcfと比べて2.6Bcfの増加となった。カナダからの輸入がパイプラインのメンテナンスで前週比0.5Bcf減少した3.5Bcfとなり、供給量全体では前週比で2.0Bcf増加した92.0Bcfとなっている。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(10月15日から10月21日)の天然ガスの部門別需要の表となる。一日当たりの総需要量は67.3Bcfとなり前週比で5.2Bcfの大幅な増加となった。内訳は発電用需要が29.2Bcfと前週比で0.7Bcfの減少、工業用は21.7Bcfと前週から0.8Bcfの増加、住宅用・商業用は16.4Bcfと前週から5.6Bcfの大幅増加となった。発電用需要はこれまで気温の高かった太平洋岸や南部でやや気温が低下したため冷房用需要が例年並みとなっている。一方で、住宅用需要はアメリカ東部や中西部の気温低下による暖房用需要の増加で前週より約50%の大幅増加となった。なお、今年は新型コロナウイルスの感染対策としてテレワークが推進されており、例年と比べて住宅暖房用のガス需要は5%程度高まると予想されている。
輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.9Bcfと横ばい、LNG輸出は前週から1.3Bcfの増加となる7.9Bcfとなった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で最新の10月13日付の情報によると、リグ数の合計は279基と前週比で13基増加した。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。10月13日発表のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が12基増加した205基、天然ガス採掘用は1基増加した74基となり、どちらの用途でもない3基を加えて13基増加した合計279基となった。原油採掘用リグ数は6月以来の値となる200基を超えて増加しつつあり、天然ガス採掘用リグ数は70基付近で横ばいとなっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では10月16日時点の在庫は前週比で49Bcf増加と各社予想の50Bcf増とほぼ一致した。天然ガスの供給は前週比で2.0Bcf増加した92.0Bcfとなった。アメリカ国内のガス生産量が2.6Bcfの増加となったことが要因。
需要側では輸出用需要でLNG輸出が1.3Bcf増加、メキシコ向けパイプライン輸出が横ばいだったが、昨年の需要をいずれも上回っており、全体として輸出需要は堅調だった。一方でアメリカ東部や中西部の気温低下で住宅用・商業用需要が5.6Bcfと大幅に増加した。発電用需要はアメリカ南部や太平洋沿岸で気温が以前高く1.2Bcfの減少となったものの、なお29.2Bcf消費されている。全体では6.5Bcfの大幅な需要増となった。特に、LNG需要が例年より1.3Bcf多い7.9Bcfとなっている。今週の最新の情報ではLNG輸出が8.0Bcfを超える日も記録されており、今後も好調な輸出が続きそうだ。
供給面では先週発表の統計では天然ガス生産用のリグ数が増加となり、生産量は2.6Bcfの増加となっている。加えて原油(シェールオイル)生産用のリグ数が12基の大幅増加で200基を回復しており、今後、原油生産の副産物としてのガス生産が増加すると考えられる。
今週の天然ガス在庫の増加量は市場予想をやや下回り、在庫量は3926Bcfとなった。在庫増加ペースは平年より鈍化している。今後の在庫増加ペースが例年通りのペース(57Bcf)となった場合は今月31日時点の在庫予想は4050Bcf(有効容量の95.0%)となる見込み。
天然ガス価格はLNG輸出需要の増加と冬の訪れによりアメリカ国内の暖房用の天然ガス需要が高まっている。ただ、シェールオイル生産用のリグ数が大幅増加しており今後は天然ガスの生産量が高まると考えられる。天然ガス在庫は平年より約10%多いため、筆者はそろそろ過剰に積み上がっている在庫が市場に意識されるのではないかと考えているが、報道によると天然ガス市場には個人投資家を中心とした投機資金が流れ込んでおり、需給の状況と合わない判断の難しい値動きが続いている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。