エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の見通し(つらつらコラム10月30日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫総評
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

EIAが昨日発表した10月23日時点の天然ガス在庫は前週より29Bcf増加の3955Bcfで市場予想の32Bcf増を下回った。在庫量は平年より7.8%多い状態で、増加ペースが減少する傾向にあるが、過去5年で最大の在庫量が続いている。昨日の天然ガス相場は欧州での新型コロナウイルスの感染拡大で換金売りが入り、下落したが、後半買い戻されてで上昇で引けている。気温が上昇することによる需要減の見通しや、ハリケーンの通過による生産量の減少といったことは材料視されなかった。
同日に発表された10月22日から28日までの天然ガス需給ではアメリカ国内の天然ガス総供給量は92.0Bcfと横ばいとなった。国内の生産量が87.3Bcfと前週より1.2Bcfの減少となったが、メンテナンスが終わったことで前週の3.5Bcfから4.6Bcfへ増加したカナダ産天然ガスが穴埋めした。需要側では総需要が4.8Bcf増加した72.1Bcfとなった。住宅・商業用需要が4.1Bcf伸びたこと、LNG輸出が1.1Bcf増加した9.0Bcfとなったことが需要をけん引した。その他発電用需要は28.9Bcfと0.3Bcfの微減、工業用需要は0.7Bcf増加した22.4Bcf、メキシコ向け需要が0.1Bcf減少した5.8Bcfだった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。今週はアメリカ東部と中西部での在庫増加以外はほぼ需給が均衡しており、在庫の増加が少なかった。昨年と比べると東部では天然ガス需要が低下、中西部では冷え込みにより暖房用需要増加、南部や太平洋岸、山岳地域では冷房用需要が平年より多くなったことで、天然ガス需要は平年並みとなっている。在庫量は3955Bcfで平年に比べて289Bcf、前年比で285Bcfの在庫が多くなっている。明日の時点での在庫は4012Bcfとなることが予想されている。この量は平年より289Bcf多く、天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の85.5%、有効容量(4261Bcf)の94.1%に達する見込み。

天然ガス需要と供給

表2は10月22日から10月28日までの天然ガスの供給の内訳となる。天然ガスの生産量は今週日量87.3Bcfと前週の88.5Bcfより1.2Bcfの減少となった一方で、パイプラインのメンテナンスが終了したカナダからの輸入が前週比1.1Bcf増加した4.6Bcfとなり、供給量全体は92.0Bcfと前週から横ばいとなった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は10月22日から28日にかけての天然ガスの需要を示した表で、総需要が前週の67.3Bcfから4.8Bcf増加した72.1Bcfとなった。空調用の需要の増加で住宅・商業用需要が16.4Bcfから4.1Bcf伸びた20.7Bcfとなったこと、LNG輸出が7.9Bcfから1.1Bcf増加した9.0Bcfとなったことが需要をけん引した。特にLNG輸出は9.0Bcfと非常に大きな値となった。その他の需要では発電用需要が29.2Bcfから28.9Bcfへ0.3Bcfの微減、工業用需要は21.7Bcfから0.7Bcf増加した22.4Bcf、メキシコ向け需要が前週の5.9Bcfから0.1Bcf減少した5.8Bcfだった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)となる。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。10月20日発表の稼働リグ数は、原油採掘用が前週から6基増加した211基、天然ガス採掘用は1基減少した73基となり、どちらの用途でもない3基を加えて5基増加した合計287基となった。原油採掘用リグ数は210基を超えて増加している。一方で、天然ガス採掘用リグ数は73基付近で一進一退となっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計で発表された10月23日時点の在庫は前週比で29Bcf増と各社予想の32Bcf増を下回った。天然ガスの供給は生産量の減少を輸入量が打ち消し前週から横ばいとなる92.0Bcfとなった。
天然ガスの需要側ではLNG輸出需要が1.1Bcf増加、メキシコ向けパイプライン輸出が0.1Bcf減と横ばいとなり、昨年の需要を上回り輸出需要は堅調となっている。空調・発電用需要ではアメリカ東部や中西部の気温低下とアメリカ南部や太平洋岸で続く冷房用需要から、住宅用・商業用需要が4.4Bcfと大幅に増加した。発電用需要はアメリカ南部や太平洋沿岸で気温が依然高く0.3Bcfの減少となった28.9Bcf増となった。総量では93.6Bcfと前週の87.8Bcfを5.8Bcfと大幅に上回った。
供給面では先週発表の統計では天然ガス生産用のリグ数が減少し、生産量は1.2Bcfの減少となっている。一方で原油(シェールオイル)生産用のリグ数が6基増加し210基を回復した。今後、原油生産の副産物としてのガス生産が増加すると考えられる。
今週の天然ガス在庫の増加量は市場予想をやや下回り、在庫量は3955Bcfとなった。在庫増加ペースが平年より鈍化しているが天然ガス在庫は平年より約8%多い。今月31日時点の在庫予想は4012Bcfとなる見込みで、筆者は積み上がっている在庫が市場に意識されるのではないかと予想していたが、天然ガス市場は需給の状況と合わない上昇が続いている。上昇は投機によるものと考えられるが、新型コロナウイルスの感染拡大で需要の伸び悩みも予想される中で、判断の難しい値動きが続いている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。