目次
ダイジェスト
- 原油在庫は50万バレル増加
- 原油生産量は日量1100万バレルへ増加
- 需給調整分(Adjustment、後述)は113万バレル
- 輸出入量は輸出が85万バレル減少、輸入量が61万バレルの増加、308万バレルの輸入超過
- 生産量増加と輸出量の減少、輸入量の増加が在庫増加の要因
- ガソリンの在庫は143万バレル減少
- 要因は生産量の増加幅を、供給量と輸出量の増加が上回ったこと
- ガソリン生産量は63万バレル増加、供給量は47万バレル増加
- ガソリン輸入量は11万バレル増加、輸出量も24万バレル増加
- 留出油在庫は96万バレル減少
- 要因は供給量の増加
- 留出油の生産量は18万バレル増加、供給量は21万バレルの増加
- 留出油の輸入量は9万バレルの増加、輸出量は26万バレル減少
- 原油と石油製品を合わせた在庫量は20億6110万バレル(前週比310万バレル減少)
- オクラホマ州クッシング在庫は47万バレルと4週連続の増加、今週のクッシング在庫容量は約5653万バレル(4月10日より高い水準)、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は73.8%
EIA週間統計の総評
今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫は50万バレル増加と4週間ぶりの増加となった。原油生産量は30万バレル増加した日量1100万バレルとなった。原油の輸出入は308万バレルの輸入超過で、前週と比べて輸入は61万バレルの増加、輸出が85万バレルの減少となった。戦略備蓄(SPR)は16万バレルの放出が行われている。石油製品ではガソリン在庫が143万バレルの減少、留出油在庫は96万バレルの減少となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億6110バレルと前週比で約310万バレルの減少となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は47万バレル増加と4週間連続の増加となった。
原油と石油製品の在庫
原油在庫が50万バレル増加となり、SPRを除く在庫は4億9290万バレルとなった。ガソリン在庫は68万バレルの増加、留出油在庫は96万バレルの減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は47万バレル増加となっている。
API統計 | EIA統計 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 95増 | 50増 | 198減 | 163減 | 438減 |
ガソリン(万バレル) | 87減 | 143減 | 68増 | 402減 | 38減 |
留出油(万バレル) | 103減 | 96減 | 318減 | 336減 | 346増 |
クッシング在庫(万バレル) | 75増 | 47増 | 178増 | 0.4増 | 7減 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)
今週の原油生産量は日量1100万バレルと前週比で30万バレルの増加となった。最盛期(1310万バレル)に比べて200万バレル少ない。今週の原油輸入は前週と比べて1日当たり61万バレル増加した573万バレルに、輸出は先週より85万バレル減少した265万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産358万バレル(前週328万バレル)、サウジアラビア産42万バレル(前週33万バレル)、メキシコ産45万バレル(前週61万バレル)、イラク産4万バレル(前週4万バレル)、コロンビア産35万バレル(前週14万バレル)、エクアドル産14万バレル(前週10万バレル)、ブラジル産7万バレル(前週7万バレル)、ナイジェリア産0万バレル(前週6万バレル)等でカナダや南米からの輸入が増加し、メキシコからの輸入が減少した。輸出入は日量308万バレルの輸入超過で前週より140万バレル増加した。今週、Adjustmentは31万バレルとなり前週の81万バレルから113万バレルの減少となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるもので、今週はAdjustmentで在庫を減少させる形の調整となった。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1100 | 1070 | 1070 | 1090 | 1082 | 1260 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -16 | -25 | -11 | -30 | -20 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 573 | 512 | 516 | 500 | 525 | 622 |
原油輸出(万バレル/日) | 265 | 351 | 302 | 259 | 294 | 340 |
Adjustment(万バレル/日) | -31 | 81 | 17 | -75 | -1 | 62 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率
製油所の稼働率が1.3%上昇した77.1%となり、製油所への原油投入量は日量約18万バレル増加した1385万バレルとなった。前年の88.8%に比べると今週の稼働率も10%以上低い。石油製品の生産では前週と比較してガソリン生産量が日量約62万バレル増加した952万バレル、ジェット燃料の生産は約7万バレル減少した79万バレル、留出油の生産量は17万バレル増加した453万バレルとなった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1385 | 1367 | 1337 | 1348 | 1359 | 1565 |
製油所稼働率(%) | 77.1 | 75.8 | 74.8 | 75.8 | 75.9 | 85.7 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 952 | 889 | 931 | 881 | 913 | 1006 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 79 | 87 | 78 | 81 | 81 | 169 |
留出油生産(万バレル/日) | 453 | 435 | 447 | 440 | 444 | 483 |
石油製品供給(日量、需要)
石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が前週から日量47万バレル増加した889万バレル、ジェット燃料の供給は5万バレル増加した90万バレル、留出油の供給は前週と比べて21万バレル増加した386万バレルとなった。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
ガソリン供給(万バレル/日) | 889 | 852 | 851 | 847 | 860 | 946 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 90 | 85 | 93 | 94 | 91 | 177 |
留出油供給(万バレル/日) | 386 | 365 | 395 | 280 | 357 | 403 |
石油製品需給(日量)
前週と比べて製油所の稼働率は1.3%増加し、原油消費量は日量18万バレルの増加となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で62万バレルと大幅に増加した。供給量は47万バレルの増加となった。ガソリンの輸入量は11万バレル増加したが、輸出量も24万バレルの増加となった。生産増加幅は大きかったが供給量の増加と輸出量の増加でガソリン在庫が減少した。留出油の生産量は18万バレルの増加、供給量は21万バレルの増加となった。輸入量が9万バレル増加、輸出量は26万バレルの減少となり、供給量の増加が在庫減少の要因となった。ジェット燃料の生産量は8万バレルの減少、供給量は5万バレルの増加となった。航空需要の減少から供給(需要)は今週も前年の半分程度にとどまっている。石油製品全体の供給(需要)量は日量1834万バレルと、前週の1744万バレルに比べて約90万バレルの増加となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は20億6110万バレルと前週から約310万バレルの減少となった。
石油製品価格
表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。今週もガソリン・ディーゼル燃料の市中への供給量は共に増加しており、ガソリン卸売価格は約7セントの下落、ディーゼル燃料の卸売価格は前週から約4セントの下落となった。
スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し) | 10/2 | 9/25 | 9/18 | 9/11 | 9/4 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン) | 1.187 | 1.256 | 1.288 | 1.155 | 1.221 | 1.673 |
ディーゼル燃料(ドル/ガロン) | 1.088 | 1.127 | 1.171 | 1.037 | 1.088 | 1.902 |
原油(ドル/バレル) | 36.90 | 40.06 | 41.09 | 37.33 | 39.66 | 52.84 |
表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格、ディーゼル燃料価格ともにほぼ横ばいだった。
小売価格 | 10/5 | 9/28 | 9/21 | 9/14 | 9/7 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.172 | 2.169 | 2.168 | 2.183 | 2.211 | 2.645 |
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.583 | 2.583 | 2.582 | 2.600 | 2.624 | 3.097 |
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.833 | 2.831 | 2.836 | 2.851 | 2.872 | 3.356 |
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン) | 2.387 | 2.394 | 2.404 | 2.422 | 2.435 | 3.047 |
今後の見通し
今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産は1100万バレルと30万バレルの増加となりハリケーンシーズン前の生産量まで回復した。需要側では製油所の稼働率が1.3%の増加となり、原油の消費量が日量18万バレルの増加となった。原油の輸出入量は308万バレルの輸入超過だった。前週比で61万バレル輸入量が増加したのに対して輸出量が85万バレルの減少だった。生産量の増加と輸出量の減少が在庫増加の要因。石油製品ガソリンについては生産が大幅に増加したが、供給量の増加と輸出量が増加が生産増を上回り、ガソリンの在庫減の要因となった。留出油は生産量以上の供給量増加で在庫が減少している。前週より石油製品の出荷は日量99万バレルの減少で、全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は、20億6110万バレルと前週比で310万バレルの減少となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格は双方とも供給が増加したが横ばいとなっている。アメリカ国内の原油生産の増加と輸入量の増加で原油在庫は4週間ぶりに増加した。アメリカ国内の石油製品の供給量(市中の需要)は約310万バレルの減少となっているが、依然として日量1700万バレルから1900万バレルの供給量レンジでの変動となっている。
先週末の原油相場はトランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染したことで下落したが、今週は大統領の退院とハリケーン「デルタ」がメキシコ湾岸の海上油田に接近することによる上昇で始まった。ただし、火曜日の米国時間には新型コロナウイルスの追加経済対策法案の与野党協議がトランプ大統領が停止指示をしたとの報で上値が抑えられた。昨日は一転して、追加経済対策のツイートをトランプ大統領が行ったことで、株価が上昇し原油も上昇に転じた。一方、発表済みの各種統計ではアメリカで稼働中の原油採掘用リグが前週比で6基増とリグ数が順調に上昇傾向に転じ、アメリカの原油生産が増加する兆しが見えている。需要面では、新型コロナウイルスの再度の感染拡大のため、パリやマドリードなどの欧州の大都市、アメリカでもNY州で一部の規制が再開されるなど、状況が悪化しており、今後の原油需要の減少が懸念されている。その中でクッシング原油在庫に続いて、原油在庫量がAPI、EIAの両統計で今週から増加に転じたことで、いよいよ、過剰な原油在庫や需要の減少が材料として注目されるのではないかと考えており、割高な原油相場が下落すると考えている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。