目次
ダイジェスト
- 原油在庫は427万バレル増加
- 原油生産量はハリケーン「ゼータ」の影響が残り日量1050万バレルで横ばい
- 需給調整分(Adjustment、後述)は74万バレル増加
- 輸出入では輸入が47万バレル増加、輸出量が50万バレルの増加となり、全体では283万バレルの輸入超過
- 製油所稼働率の低下による原油需要の減少と好調な輸入が在庫増加要因
- ガソリンの在庫は230万バレル減少
- 生産量+輸入量<供給量+輸出量で在庫減
- ガソリン生産量は22万バレル減少、供給量は43万バレル増加
- ガソリン輸入量は18万バレル減少、輸出量は横ばい
- 留出油在庫は535万バレル減少
- 生産量+輸入量<供給量+輸出量で在庫減
- 留出油の生産量は4万バレル減少、供給量は29万バレル増加
- 留出油の輸入量は20万バレル減少、輸出量は横ばい
- 原油と石油製品を合わせた在庫量は20億0380万バレル(前週比1200万バレルの減少)
- オクラホマ州クッシング在庫は51万バレル減少した6041万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は79.5%
EIA週間統計の総評
今週発表のEIAの週間在庫統計では、原油在庫は427万バレルの増加となった。アメリカの原油生産量はハリケーン「ゼータ」接近が残した減産の影響が出ていて、前週と同量の日量1050万バレルとなった。原油の輸出入は283万バレルの輸入超過で、前週と比べて輸入が47万バレルの増加、輸出が50万バレルの増加となった。原油の製油所投入量は製油所の稼働率が0.8%低下したことで11万バレル減少し、1344万バレルとなった。戦略備蓄(SPR)は8万バレルの放出が行われている。原油は生産量は横ばいだったが輸入量の増加と原油需要の減少で在庫増加となった。石油製品ではガソリン在庫が230万バレルの減少、留出油在庫は535万バレルの減少となり、原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億0380バレルと前週比で約1200万バレルの減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は51万バレルの減少となり、総量は6042万バレルとなった。
原油と石油製品の在庫
今週の統計では原油在庫が市場の減少予想に反して427万バレル増加となり、SPRを除く在庫は4億8887万バレルとなった。ガソリン在庫は230万バレル減少、留出油在庫535万バレル減少となった。WTIの指標として使われるオクラホマ州クッシングの原油在庫は51万バレルの減少となっている。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 515減 | 427増 | 799減 | 432増 | 100減 |
ガソリン(万バレル) | 330増 | 230減 | 154増 | 89減 | 189増 |
留出油(万バレル) | 562減 | 535減 | 158減 | 449減 | 383減 |
クッシング在庫(万バレル) | 117増 | 51減 | 93増 | 42減 | 97増 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油も石油製品の在庫も過去5年の上限値まで減少している。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)
今週の原油生産量は、ハリケーン「ゼータ」による生産減の影響が残りで日量1050万バレルと前週から横ばいとなった。原油輸入量は前週比で1日当たり47万バレル増加した550万バレルに、輸出量は同50万バレル増加した276万バレルとなった。輸入の国別内訳はカナダ産368万バレル(前週314万バレル)、メキシコ産43万バレル(前週63万バレル)、サウジアラビア産35万バレル(前週20万バレル)、イラク産18万バレル(前週13万バレル)、エクアドル産29万バレル(前週4万バレル)、コロンビア産0万バレル(前週28万バレル)、ブラジル産6万バレル(前週8万バレル)等でカナダやサウジアラビア、エクアドルからの輸入が増加し、メキシコやコロンビアからの輸入は減少した。Adjustmentは74万バレル増加となり前週の87万バレルの減少から161万バレルの増加となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるものであるが、今週は前週とは逆にAdjustmentで在庫を増加させる形の調整となった。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1050 | 1050 | 1110 | 990 | 1050 | 1260 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -8 | -2 | -9 | -10 | -7 | -20 |
原油輸入(万バレル/日) | 549 | 502 | 566 | 511 | 532 | 575 |
原油輸出(万バレル/日) | 276 | 226 | 345 | 303 | 244 | 263 |
Adjustment(万バレル/日) | 74 | -87 | -60 | 79 | 31 | 10 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率
製油所の稼働率は0.8%低下した74.5%となり、製油所への原油投入量は日量約1344万バレルと11万バレルの減少となった。前年の87.8%に比べると今週の稼働率は13.3%低い。石油製品生産量では前週と比較してガソリン生産量が日量約22万バレル増加した917万バレル、ジェット燃料の生産は約12万バレル増加した103万バレル、留出油の生産量は4万バレル減少した423万バレルとなった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1344 | 1355 | 1338 | 1302 | 909 | 1591 |
製油所稼働率(%) | 74.5 | 75.3 | 74.6 | 72.9 | 74.3 | 87.8 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 917 | 895 | 927 | 895 | 909 | 1037 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 45 | 63 | 46 | 50 | 51 | 67 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 103 | 91 | 84 | 78 | 89 | 178 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 30 | 4 | 19 | 17 | 17 | 14 |
留出油生産(万バレル/日) | 423 | 427 | 412 | 413 | 419 | 503 |
留出油輸入(万バレル/日) | 13 | 33 | 34 | 15 | 24 | 23 |
石油製品供給(日量、需要)
石油製品の供給(需要)一覧が表4となる。前週と比較してガソリン供給が前週比で日量43万バレル増加した876万バレル、ジェット燃料供給は前週比で41万バレルの大幅増した132万バレル、留出油供給は前週比で29万バレル増加した405万バレルとなった。今週はジェット燃料の供給が大幅増となっている。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 876 | 833 | 854 | 828 | 848 | 832 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 71 | 71 | 53 | 69 | 66 | 81 | |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 132 | 91 | 101 | 97 | 105 | 175 | |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 5 | 5 | 5 | 4 | 5 | 22 | |
留出油供給(万バレル/日) | 405 | 376 | 424 | 358 | 391 | 453 | |
留出油輸出(万バレル/日) | 107 | 107 | 87 | 124 | 106 | 109 |
石油製品需給(日量)
製油所稼働率が前週比で0.8%低下したことで、原油消費量は日量1344万バレル(前週比11万バレル減)となった。石油製品ではガソリン生産量が前週比で22万バレル減少した917万バレル、供給量が43万バレル増加した876万バレルとなった。ガソリン輸入量は18万バレル減少した45万バレル、輸出量は71万バレルと横ばいとなった。生産量の減少と供給量の増加で需要側が多くなり、ガソリン在庫が減少した。留出油生産量は4万バレル減少した423万バレル、供給量は29万バレル増加した405万バレルとなった。輸入量は20万バレル減少した13万バレル、輸出量は107万バレルで横ばいだった。輸出など需要側が多く留出油在庫が減少している。ジェット燃料生産量は12万バレル増加した103万バレル、供給量は41万バレルと大幅増加した132万バレルとなった。石油製品全体の供給(需要)量は日量2018万バレルと前週の1836万バレルから約181万バレルの増加となった。全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比1200万バレル減の20億0380万バレルとなった。
石油製品価格
表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となるが今週の卸売価格はガソリンが約5セントの上昇、ディーゼル燃料が約5セントの上昇となった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 11/6 | 10/30 | 10/23 | 10/16 | 10/9 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 1.121 | 1.078 | 1.168 | 1.215 | 1.252 | 1.730 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 1.145 | 1.089 | 1.152 | 1.183 | 1.194 | 1.919 |
原油 (ドル/バレル) | 36.97 | 35.64 | 39.73 | 40.70 | 40.44 | 57.02 |
表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなるが、今週のガソリン小売価格はガソリンは1~2セントの下落、ディーゼル燃料は約1セントの上昇となった。
小売価格 | 11/9 | 11/2 | 10/26 | 10/19 | 10/12 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.096 | 2.112 | 2.143 | 2.150 | 2.167 | 2.605 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.517 | 2.533 | 2.559 | 2.565 | 2.579 | 3.064 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.771 | 2.786 | 2.810 | 2.815 | 2.829 | 3.313 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 2.383 | 2.372 | 2.385 | 2.388 | 2.395 | 3.062 |
今後の見通し
EIA週間統計ではハリケーン「ゼータ」がメキシコ湾の海上油田地帯への接近して生産量が減少した影響が残り、原油生産量は1050万バレルで横ばいだった。需要面では製油所稼働率が0.8%低下したため、原油の消費量が日量11万バレル減少した1577万バレルとなった。原油輸出入では273万バレルの輸入超過で、輸入量が前週比で47万バレル増加した549万バレル、輸出量が50万バレル増加した276万バレルとなった。消費量減少とAdjustmentの分、原油在庫は増加した。主要石油製品ではガソリンについては需要側(供給)が多く在庫減、留出油は需要側(供給)が多く共に在庫減となった。前週より石油製品の出荷は日量181万バレル増加した2018万バレルとなり2000万バレルの大台を超えた。全ての石油製品と原油を合わせた在庫は、20億0380万バレルと前週比で約1200万バレルの減少となっている。
原油生産量は1050万バレルと据え置きになった。ハリケーンの影響が残ったものだが、今後の生産回復が予想される。原油の生産面ではシェールオイル生産用リグ数が5基増と確実な増加が続いており、原油生産の増加がまだ続くのではないかと考えられる。クッシング原油在庫の増加は今週一服したが、在庫が約6050万バレル、貯蔵率はおよそ80%となっている。アメリカ国外ではリビアの最新の原油生産量が予定より早く100万バレルの大台を超え、日量110万バレルに達したと報告されている。一方OPECの月報では年内の原油需要は新型コロナウイルスのの感染拡大で前年比で980万バレルの減少となり、現在の減産水準では原油あまりが確実な状況となっている。昨日は欧州でのロックダウン開始に次いで、アメリカでニューヨークやシカゴといった大都市圏で移動制限や商店の営業制限が始まり、今後原油需要の更なる落ち込みが予想される。EIAの予測のようにブレント原油で40ドル台を維持することは極めて難しい情勢となっているのではないか。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。