エネルギー速報:原油の値動きと原油を取り巻く状況のまとめ(つらつらコラム11月4日)

ダイジェスト

原油の値動き

図1 原油日足(出展元 サクソバンク証券)

原油が図1の様に不安定な値動きを続けている。欧州、特にスペインやフランス、イギリスでの新型コロナウイルスの感染拡大で都市封鎖が行われて、原油需要が先細りになるとの観測から40.00ドルの大台を10月26日に割り込んだ。加えてリビアの原油生産量が急速に回復していることが懸念材料として急浮上し、需要減と供給増の見方から下落が続いて、11月2日の日本時間で朝方に6月初め以来となる35.00ドルを割り込んだ。
筆者はこのまま30ドル台前半に定着すると考えていたが、11月2日3日と欧州時間から強く買い戻されて、3日には38ドル台前半まで戻した。ロシアやサウジアラビアがOPECプラスの原油増産を延期するとの観測が強まったことによる。
背景について下落要因と上昇要因に分けて整理したものが下の通りとなる。

下落要因

リビア産原油は9月末の日量10万バレルから前週末には日量80万バレルまで急速に回復した。今後も生産の回復は続き、月末には日量100万バレル、年末には130万バレルとなる見込み。

欧州では新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しており、スペインに続いて、フランス、ドイツ、イギリスが1か月の期間限定ではあるが、ロックダウンを再開している。これによる移動需要の激減で、燃料用原油需要が減少すると見込まれている。今年4月の際には欧州で日量約400万バレルの需要が減少、その後300万バレル分回復したと推計されている。前回と同様なら約300万バレルの需要が失われる。ただし、今回は東欧でも感染が拡大しているため、需要減は前回を上回るかもしれない。

先月のOPECの原油生産は2459万~2474万バレルで前月比で21万~47万バレルの増加となっている。減産遵守率は101%となったものの、4か月連続で生産量が増加している。主要な増加要因は先に上げたリビア産原油の増産だが、イラクが16万バレル、ナイジェリアが12万バレル、UAEが10万バレルなど、減産破りにともなう減産補償分を減産していないことが明らかになっている。

米民主党のバイデン候補は、イラン核合意へのアメリカの復帰を方針に掲げている。そのためにはイランへの制裁を解除する必要があり、制裁解除の結果イランが原油輸出を大幅に増加させるのは間違いない。原油の輸出量は各社の予想によって異なるが概ね日量100万バレル規模となる。

上昇要因

東アジアでは第2波の影響が比較的少ないため、原油需要が比較的堅調に推移している。中国が来年原油輸入を増加させるとの報道もあり、堅調な需要が期待される。なお、中国は今年原油輸入に占める米国産原油の割合を1%未満から7%程度まで増加させている。インドは新型コロナウイルスの感染拡大が起きているが原油需要が伸びており、輸入が増加している。

現在OPECプラスは日量770万バレルで減産を行っているが、当初の予定通りなら来年1月から190万バレル減産幅を減らし、日量580万バレルの減産へ移行する。ただし、前述の欧州でのロックダウン前から、新型コロナウイルスの感染拡大による需要減が懸念されており、前月のJMMCでも議題に上げられていた。この時点でロシアのプーチン大統領は増産の延期に前向きと伝えられていた。その後、更に感染拡大で原油需要が減少するとの見方から、増産延期では足りないとの見方があり、減産枠の拡大も検討されているとされている。ただし、減産の拡大は市場シェアの縮小にしか繋がらないとの慎重意見もあると伝えられる。これは、11月30日、12月1日のOPECプラスの会合で討議されると思われる。

民主党のバイデン候補は環境保護の観点から公有地でのフラッキング規制を行うと表明している。これによりシェールオイルの開発にブレーキが掛かることが予想される。また、北米大陸の内陸のカナダで生産されたオイルサンド原油をメキシコ湾へ輸送するためのキーストーンXLパイプラインと両ダコタ州のパッケンからシェールオイルをメキシコ湾へ輸送するダコタ・アクセスパイプラインが環境問題から訴訟になっており、政権交代の場合建設が中止される可能性が高い。これらのパイプラインは輸送コストの低減に寄与するため、中止により油田の開発が抑制される。また、シェールオイル産業全体では原油価格の低迷により2016年の142件に次ぐ84件の倒産が起きており、生産・輸送コストの上昇は新規開発や運用に悪影響があると考えられる。

政権交代が起きた場合も起きない場合も追加経済対策が行われることは確実視されており、経済の下支えで原油需要も支えられると予想されている。また、アメリカでは感染の拡大は続いているが、未だロックダウンや行動制限を全国的に行う動きはないため、需要がある程度確保されると予測されている。

今後の見通し

今日あげた要因の内、米大統領選挙については今日ひとまずの結果が出ると考えている。今後の原油価格は欧州(あるいは米国)の需要がどこまで減少するかに左右されると考えている。年末の需給を考えると、欧州の需要減が日量300万バレル、リビアの増産分や減産破りを考えると日量200万バレルの供給増となる。来年1月以降にOPECプラスの当初の予定通りなら、現在の日量770万バレルから190万バレルの増産を行い、減産幅を日量580万バレルへ減らすことになるが、需給面や既存の在庫を考えると既にこの計画は不可能となっていると言えるのではないだろうか。未だ憶測や期待にとどまっているが、原油価格の維持のためには今月末のOPECプラスの会合では減産幅の拡大が行われ、減産幅は8月までの水準である日量970万バレルとなるのではないかと筆者は考えている。ただ、これではまだ供給過剰である。4月のように非OPECプラス産油国の減産参加がない限りは原油相場を支え切れないと思われる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。