エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の見通し(つらつらコラム11月6日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫総評
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日EIAが発表した10月30日時点での天然ガス在庫量は前週より36Bcf減少した3919Bcfとなり在庫減少に転じた。減少量は市場予想の34Bcf減少を上回った。在庫量は平年より5.4%多い状態であり、なお過去5年で最大の在庫量となっている。昨日の天然ガス先物相場はLNG輸出が過去最高の水準が続いていることは材料視されず、今後11月下旬までの気温上昇で天然ガス需要の減少懸念から下落となり、3.000ドルの大台を割り込んだ。
同日に発表された10月29日から11月4日までの天然ガス需給ではアメリカ国内の天然ガス総供給量は94.2Bcfと1.7Bcfの増加となった。国内生産量が89.1Bcfと前週より1.3Bcfの増加となったこと、カナダからの輸入が5.0Bcfと前週の4.6Bcfから増加したことが要因となった。需要側では総需要は前週より1.0Bcf増加した73.0Bcfとなった。住宅・商業用需要が4.2Bcf増加した24.9Bcf、LNG輸出が1.1Bcf増加し、過去最高の10.1Bcfとなったことが需要を牽引している。この他、工業用需要が0.3Bcfと微増した22.9Bcf、発電用需要が25.2Bcfと3.6Bcfの減少、メキシコ向け需要が0.4Bcf減少した5.4Bcfだった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。今週はアメリカ南部で在庫が大きく減少している。人口の多い東部や中西部ではほぼ需給が均衡しており、在庫の増減が少なかった。気象要因では大西洋岸南部では今なお冷房用需要が見られているが、他の地域では冬の訪れと共に暖房用需要が増加しており、特に中西部や山岳地域、南部の内陸部で需要が大きくなった。一方、在庫量は3919Bcfで5年平年に比べて201Bcf、前年比で200Bcf在庫が多い状態となっているが、図1の在庫グラフの落ち込みの比較から、生産量の減少と例年より早い冬の冷え込みで在庫減少が始まったと推測される。現時点の在庫は天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の83.5%、有効容量(4261Bcf)の92.0%に達しているが、今後は減少に転じると考えられる。

天然ガス需要と供給

表2は10月29日から11月4日までの天然ガスの供給の内訳となる。天然ガスの生産量は今週日量89.1Bcfと前週の87.8Bcfより1.3Bcfの増加となった。カナダからの輸入が前週比0.4Bcf増加した5.0Bcfとなり、供給量全体は94.2Bcfと前週から1.3Bcf増加した。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は10月29日から11月4日にかけての天然ガスの需要の内訳で、総需要が前週の72.0Bcfから1.0Bcf増加した73.0Bcfとなった。暖房用需要の増加で住宅・商業用需要が20.7Bcfから4.2Bcf伸びた24.9Bcf、LNG輸出が9.0Bcfから1.1Bcf増加した10.1Bcfとなったことが需要をけん引した。特にLNG輸出は10.1Bcfと歴史的な値となった。その他の需要では工業用需要は22.6Bcfから0.3Bcf増加した22.9Bcf、発電用需要が25.2Bcfから28.8Bcfへ4.6Bcfの減少、メキシコ向け需要が前週の5.8Bcfから0.4Bcf減少した5.4Bcfだった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)となる。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガス別の採掘用リグ稼働数となる。10月27日発表の稼働リグ数は、原油採掘用が前週から10基増加した221基、天然ガス採掘用は1基減少した72基となり、どちらの用途でもない3基を加えて9基増加した合計296基となった。原油採掘用リグ数が10基を超えた大幅増加となった一方で、天然ガス採掘用リグ数はここしばらく73基付近で一進一退の状況が続いている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週発表された10月30日時点の天然ガス在庫は、前週比で36Bcf減と在庫の減少量は各社予想の34Bcf減を上回った。天然ガス供給が生産量増加で前週を上回ったものの、暖房用需要の増加により例年より早い在庫減少となった(図1参照)。
天然ガスの需要側ではLNG輸出需要が前週に続いて1.1Bcf増加した10.1Bcfとなり10.0Bcfの大台に乗り過去最高の値を記録した。メキシコ向けパイプライン輸出は0.4Bcf減少した5.4Bcfとなったが、輸出需要全体(LNG+パイプライン輸出)では昨年同時期の12.8Bcfを上回る15.5Bcfとなり、輸出需要が天然ガス需要を引き続き牽引している。住宅用・商業用需要は、アメリカ東部や中西部に加えてアメリカ南部の内陸部で暖房用需要が高まり、4.2Bcfの増加した24.9Bcfとなった。発電用需要は太平洋沿岸南部で冷房用需要が続いているが、3.6Bcfの減少した25.2Bcfとなった。総量では95.5Bcfと前週の93.7Bcfから1.8Bcfの増加となった。
供給面では前週と比較して、生産量が1.3Bcf増加した89.1Bcf、カナダからの輸入が0.4Bcf増加した5.0Bcfとなり、供給量全体では1.7Bcf増加した94.2Bcfとなった。天然ガス生産用のリグ数は前週から1基減少した72基だったが、原油生産用のリグ数は10基と大幅に増加し221基となった。今後、原油生産の副産物としてのガス生産が増加すると考えられる。
天然ガス市場は需給の状況と合わない投機的な上昇で3.300ドル付近での値動きが続いていた。今週に入り来週以降11月下旬までの気温上昇に伴う暖房用需要の落ち込み予想から売りが入って、3.000ドルの大台を割り込んだ。秋以降に在庫の積み上がりペースが減速したことで、結局在庫が溢れるようなことはなかったものの、依然として天然ガス在庫量は例年より多い。今後、LNG輸出量の減少や暖冬により天然ガス需要が減少することがあれば、在庫の多さを背景に価格が大きく下落する可能性が大きくなっていると思われる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。