目次
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ダイジェスト
- 大豆の油脂用需要の増加で期末在庫が0.15億ブッシェルの引き下げ
- 期末在庫予測は0.15億ブッシェル引き下げられた1.75億ブッシェル
- 大豆の輸出需要は3.25億ブッシェルで据え置き
- コーンはすべての項目で11月から据え置き
- 期末在庫は17.02億ブッシェル
- エタノール用需要は50.50億ブッシェル
- 輸出需要予測は26.50億ブッシェル
- アルゼンチンの大豆とコーンの生産量予測は乾燥により100万トン引き下げ
- ブラジルの大豆とコーンの生産量予測は据え置き
総評
日本時間12月10日26時にUSDAが12月の穀物の需給報告を発表した。今回の報告は11月の報告に引き続きアメリカ産の大豆とコーンの期末在庫の引き下げや輸出需要の引き上げが行われるかが注目材料だった。大豆の期末在庫は0.15億ブッシェル引き下げられた1.75億ブッシェルとなったが、市場予想を上回った。油脂用の需要増に起因しており、注目の輸出需要予測は据え置かれた。コーンについては供給側も需要側も全ての項目で据え置かれた。需要面では輸出需要は3.25億ブッシェル、エタノール向け需要は50.50億ブッシェルとなり、期末在庫は17.02億ブッシェルでの据え置きとなった。大豆相場・コーン相場共に発表直後に売られて大きく下落した。
需給-大豆-
表1が大豆の2019/2020年シーズン(旧穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(新穀)の需給見通しで、2020/2021年シーズンについては11月の報告と比較している。
2020/2021年シーズン 予想(11月時点) | 2020/2021年シーズン 予想(11月時点) | 2020/2021年シーズン 予想(11月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 7610 | 8310 | 8310 |
収穫面積(万エーカー) | 7490 | 8230 | 8230 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 47.4 | 50.7 | 50.7 |
期初在庫(億ブッシェル) | 9.09 | 5.23 | 5.23 |
生産量(億ブッシェル) | 35.52 | 41.70 | 41.70 |
輸入(億ブッシェル) | 0.15 | 0.15 | 0.15 |
供給合計(億ブッシェル) | 44.76 | 47.09 | 47.09 |
消費合計(億ブッシェル) | 39.53 | 45.19 | 45.34 |
内圧砕(油)(億ブッシェル) | 21.65 | 21.80 | 21.95 |
内輸出(億ブッシェル) | 16.76 | 22.00 | 22.00 |
期末在庫(億ブッシェル) | 5.23 | 1.90 | 1.75 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 857 | 1040 | 1055 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
今月の報告では供給側の全ての項目、需給側では国内向けの食用油脂用である圧搾需要が0.15億ブッシェル引き上げられた21.95億ブッシェルとなったが、注目されていた輸出用需要は22.00億ブッシェルで据え置かれた。結果、圧搾需要の引き上げ分だけを反映し、期末在庫は11月の報告の1.90億ブッシェルから1.75億ブッシェルへの引き下げとなった。
需給-コーン-
表2はコーンの2019/2020年シーズン(旧穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(新穀)の需給見通し、および新穀の前月の予想を比較したものとなる。
2019/2020年シーズン 予想(12月時点) | 2020/2021年シーズン 見通し(11月時点) | 2020/2021年シーズン 見通し(12月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 8970 | 9100 | 9100 |
収穫面積(万エーカー) | 8130 | 8250 | 8250 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 167.5 | 175.8 | 175.8 |
期初在庫(億ブッシェル) | 22.21 | 19.95 | 19.95 |
生産量(億ブッシェル) | 136.20 | 145.07 | 145.07 |
輸入(億ブッシェル) | 0.04 | 0.02 | 0.02 |
供給合計(億ブッシェル) | 158.83 | 165.27 | 165.27 |
消費合計(億ブッシェル) | 138.87 | 148.25 | 148.25 |
内輸出(億ブッシェル) | 17.78 | 26.50 | 26.50 |
内工業・種子・食品用(億ブッシェル) | 62.82 | 64.75 | 64.75 |
内エタノール用(億ブッシェル) | 48.52 | 50.50 | 50.50 |
内飼料用(億ブッシェル) | 58.27 | 57.00 | 57.00 |
期末在庫(億ブッシェル) | 19.95 | 17.02 | 17.02 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 356 | 400 | 400 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
今月の報告では供給側、需要側ともすべての項目で据え置きとなった。需要側では、飼料用需要が57.00億ブッシェル、食品・種子は64.75億ブッシェル、エタノール用需要は50.50億ブッシェル、注目の輸出需要は11月の報告の26.50億ブッシェルで過去最高値とは言え据え置きとなった。期末在庫は需給が据え置かれたため11月の報告の17.02億ブッシェルで据え置きとなった。
世界需給
世界需給についてのダイジェスト
大豆
大豆の2020年/2021年シーズンの世界の推定生産量は11月の3億6264万トンから約60万トン引き下げられた3億6205万トンとなった。主要国生産国ではアメリカは1億1350万トンで据え置き、乾燥の続く南米産地ではアルゼンチンが約100万トン引き下げられた5000万トン、ブラジルは1億3300万トンで据え置き、パラグアイが1025万トンで据え置きとなった。需要側では世界全体の消費量は11月の3億6903万トンから約70万トン引き下げられて3億6972万トンとなった。主要輸入国では中国需要は1億1740万トンで据え置き、欧州需要も1851万トンで据え置かれた。
コーン
コーンの2020年/2021年シーズンの世界生産量予想は11月の11億4463万トンから約100万トン引き下げられた11億4356万トンとなった。主要生産国ではアメリカが3億6849万トンで据え置き、ロシアが1400万トンで据え置き、ウクライナが約100万トン増の2950万トン、南アフリカが1600万トンで据え置き、アルゼンチンが100万トン減の4900万トン、ブラジルは1億1000万トンで据え置きだった。黒海沿岸では干ばつとなっているがウクライナで約100トン戻しており、予想より干ばつの被害が小さかったと考えられる。南米での干ばつではアルゼンチンの生産量が100万トン引き下げられる一方で、ブラジルの生産量は据え置かれた。世界需要は11月の11億5654万トンから約150万トン増加した11億5801万トンと予測している。主要輸入国では新型コロナウイルスの感染が拡大している欧州が約110万トンの需要減となっているが、中国向けが約350万トンの需要減増予測となっている。
今後の見通し
今回の12月の需給報告では2020年/2021年シーズンの大豆の油脂向けの圧搾需要が0.15億ブッシェル引き上げられたほかは需要側、供給側とも据え置きとなった。大豆とコーン共に輸出需要が据え置きとなったほか、市場予想を期末在庫が上回ったため、大豆相場、コーン相場共に大きく下落した。
世界需給では11月の報告と比べて大豆の生産量が約100万トン、コーンで約60万トン引き下げられた。アメリカ産大豆とコーンの生産量は据え置きとなったが、南米での乾燥によるアルゼンチン産大豆とコーンの生産量が100万トンずつ引き下げられた。一方でブラジルの大豆とコーンの生産量は据え置きだった。需要面では中国のコーン需要が飼料の需要拡大から350万トン引き上げられた一方で、欧州の需要は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で110万トン引き下げられた。
今回の需給報告では輸出需要が大豆、コーン共に据え置きとなったが、11月以降停滞している輸出が拡大すると、在庫のひっ迫による供給不安が発生する可能性はまだ消えていない。特に南米では降雨が確認されているが、今後現地の乾燥被害が明らかになってくるにつれて、アルゼンチンやブラジルの生産量が引き下げられて、供給が減少するような事態となれば相場が高騰する可能性は残っている。ブラジルでは50年に1回といわれる干ばつと言われた乾燥だったため、現在降っている雨では解決しないとの見方もある。公式には生産量の減少予測はいまだ出ていないが、民間会社からは生産量の引き下げ予測が報道されている。今後の南米の降雨報道や1月末の収穫開始に向けて行われる大豆とコーンの生産量予測の報道、1か月以上絶えている中国からの大口成約があるかどうかに注意していきたい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。