天然ガスの長期見通し(つらつらコラム2月28日)

 

天然ガス在庫
Working Gas in Underground Storage Compared with Five-Year Range
図1 LNG在庫水準(出展元 EIA)
*右側の点線付近が2020年2月現在のデータ

今日はEIAが今週発表した天然ガス在庫から見ていきたい。図1に示す在庫(青線)は2200Bcfと前週の2343Bcfから143Bcf減少した。この量は前週の151Bcf減少を下回った他、現在の在庫水準は過去5年平均(青線)より約200Bcf多い水準となっている。表1に示す内訳をみると、太平洋岸と山岳地域を除いたすべての地域で在庫が過去5年平均を上回っている。冬の在庫減少期もあと数週間で終わるため、これ以上の大幅な在庫水準の減少はないだろう。

表1 地域別天然ガス在庫(単位 Bcf、出展元 EIA)

Region2020/02/21(Bcf)2020/02/14(Bcf)差分(Bcf)5年平均(Bcf)
East484527-43415
Midwest591639-48494
Mountain108117-9121
Pacific196198-2211
South Central821861-40779
内salt244257-13234
内nonsalt578605-27545
Total22002343-1432021
新型コロナウイルスと暖冬の影響

新型コロナウイルスの流行影響と暖冬で、世界的に天然ガスの需要が低下している。中国で不可抗力条項による契約キャンセルが出たことはすでにこのコラムでお伝えしているが、ゴールドマンサックス証券の最新の予測では2020年の天然ガス平均価格は今後2021年に向けて緩やかに上昇していくものの、年平均価格は1MMBtuあたり2.50ドルから2.20ドルへ約10%引き下げられた。この予想には今年の天然ガス生産量がエネルギー価格の落ち込みから、現状の生産水準(今週時点で94.7Bcf)が維持できず、94.1Bcf程度に落ち込むとの予想が含まれている。またEIAによると欧州も暖冬だったため、欧州のガス在庫も例年比で約50%高い水準にあると報告している。欧州向けのLNGに占めるアメリカ産の割合は約55%あるため、今後の輸出の落ち込みが懸念されている。これらの状況を反映して、アメリカのLNG輸出基地では今年後半にメンテナンス期間の延長など、事実上の輸出削減の可能性があるとのアナリスト予想も出ている。

インド向け天然ガスの輸出期待
India LNG import capacity buildout by terminal
図2 インドにおけるLNG受け入れ能力推移(出展元 EIA)

需要の落ち込みが予想される中、明るいニュースとしては今週トランプ・アメリカ大統領とインドのモディ首相がインド向けのLNG輸出の拡大で合意したことが挙げられる。インドにおける天然ガスの輸入能力について見ておこう。図2はEIAの報告によるインドのLNG輸入用インフラ設備容量(縦軸Bcf/day)を示している。インド国内の消費量の増大により、インドは図3の様に全土でLNGの受け入れ基地と全国を結ぶパイプラインの整備を進めており、今後3年で受け入れ能力は約5割高まる予定となっている。今後インド向けの輸出が拡大することが予想されている。アメリカの現在のLNG輸出量(今週時点で8.7Bcf)の3割にも及ぶ受け入れ能力の拡大は、今後ガス価格の上昇要因となると予想される。

India LNG and natural gas pipeline infrastructure
図3 インドにおける天然ガス受け入れ基地をパイプライン(出展元 EIA)
*青丸が建設中受け入れ基地と点線が建設中パイプライン
まとめ

天然ガスの終値は、昨日の時点で1.700ドルまで下落している。冬は間もなく終わり、夏の冷房需要踏まえた相場へ移ることになる。今年の長期予報ではまず平年並み以上の夏と予報されているが、暖冬や新型コロナウイルスの流行による需要への影響が今後も在庫という形で残る。冬までの価格は高くても2ドル台前半と低迷が続くと筆者も予想する。ただし、これはあくまで現時点の予想で、ウイルス流行の収束時期が見えず、在庫の増加がどこまで続くかが予想できないため、この数字は楽観的な価格だと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。