来年以降のコーン由来バイオ燃料について(つらつらコラム2019年12月2日)

 

アメリカでは11月30日にEPA(アメリカ環境保護庁)により来年のRFSが決定した。RFSとは翌年に使用される自動車用ガソリン・ディーゼル燃料の再生燃料基準のこと。2005年に最初のRFSが策定され、2007年に2022年までにアメリカにおける再生可能燃料の使用を360億ガロンまで高めることが要求されており、2018年には実際に約144億ガロンの燃料エタノールが消費された(EIA)。燃料エタノールはガソリンに混合が義務付けられた上で販売されて使用されるが、主としてアメリカ産コーンから製造されている。下の図1は独立行政法人農畜産業振興機構の解説ページから引用したもので、エタノール向けのコーンの消費量は2007年から10年の間に増加し、現在では約5.5億ブッシェルとコーン生産量全体の約4割に達している(2019年USDA予測)に達している。

図6 トウモロコシの用途別需要量の推移
図1 アメリカのコーン用途推移(出展元 独立行政法人農畜産業振興機構

今年策定された来年度のコーン由来の再生燃料の法定値は2019年の199.2億ガロンに対して300.0億ガロンが要求されている。この数字を元に考えれば、来年のコーンのエタノール向け消費量は約3割増加し、約7億ブッシェル(生産量の約5割強)に達することが予想できるが、事態はそう簡単ではないようだ。

現状でアメリカのガソリンには10%のエタノールを配合したE10と呼ばれる燃料が販売されているが、それ以上に配合したE15燃料の普及が進んでいないこと、エタノールの配合が義務付けられる小規模製油所の経営が成り立たなくなるとの指摘から2016-18年の間に85件が配合義務を免除されていること、などでこれ以上のエタノール使用の普及が困難となっているといわれる。実際、昨年度の法定量は199.2億ガロンと書いたが、実際に使用された量との間には約50億ガロンの差が存在する。加えて当のEPAがエタノール300億ガロンとの目標に対して、150億ガロン(現状の水準)以上の使用を約束するとあり、石油産業とコーン農家・エタノール業者との綱引きが続いていることを意味している。

Fuel ethanol production capacity by state
図2 州別エタノール生産能力(出展元:EIA)

今年に入ってもトランプ・アメリカ大統領は、中西部のコーン農家、上の図2のように中西部に集中するエタノール産業にバイオ燃料使用の増加を約束したものの、一方で政府(EPA)は31件の小規模製油所に対してエタノール配合免除許可を出したことで政策がどっちつかずのものとなっている。

まとめると、将来的に燃料用エタノール使用量を今年の約200億バレルを33%上回る300億ガロンとする法的根拠となるRFSは成立した。ただし、石油産業側の巻き返しもあり、使用目標が達成される見通しが立っていない状態となっている。とはいっても、中西部には2020年の大統領選挙の帰趨を制する重要州が多く含まれるため、今後、大統領選挙までにトランプ政権側からエタノール普及のための追加政策が発表されて、コーンのエタノール向け使用量が長期的に増加する可能性は高いのではないかと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。