目次
アンケートのお願い
ダイジェスト
- 原油在庫は1518万バレル増加
- 原油生産量は日量1110万バレルで横ばい
- 需給調整分(Adjustment、後述)は2万バレルの減少
- 輸出入では輸入が108万バレル増加、輸出量が162万バレルの大幅減少で、全体では464万バレルの輸入超過
- 製油所稼働率は1.7%上昇で原油処理量も増加
- 輸出量の減少と輸入量の増加による在庫増加
- ガソリンの在庫は422万バレル増加
- 生産量+輸入量>供給量+輸出量で在庫増
- ガソリン生産量は24万バレル減少、輸入量は26万バレル増加
- ガソリン供給量は37万バレル減少、輸出量は22万バレル増加
- 留出油在庫は522万バレル増加
- 生産量+輸入量>供給量+輸出量で在庫増
- 留出油の生産量は9万バレル増加、輸入量は34万バレル減少
- 留出油の供給量は40万バレル減少、輸出量は13万バレル減少
- 原油と石油製品を合わせた在庫量は20億1200万バレル(前週比1980万バレルの増加)と大幅増加
- オクラホマ州クッシング在庫は136万バレル減少した5821万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は76.6%
EIA週間統計の総評
今週発表のEIAの週間在庫統計では、原油在庫が1518万バレルの大幅増加となった。原油生産量は日量1110万バレルで前週から横ばい。原油の輸出入は、輸入が108万バレル増加した日量647万バレル、輸出が162万バレル減少した日量183万バレルで464万バレルの輸入超過となっており、在庫増加の原因となった。製油所の稼働率は前週比で1.7%向上した79.9%となり、原油処理量は42万バレル増加した1443万バレルとなった。加えて今週から戦略備蓄(SPR)の放出が再開し1万バレルの減少となった。石油製品ではガソリン在庫が422万バレルの増加、留出油在庫は522万バレルの増加だった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は1980万バレルの大幅増加となり、在庫量は20億1200万バレルとなった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの在庫は、136万バレル減少し5821万バレルとなった。
原油と石油製品の在庫(表1)
週間統計では原油在庫の増加量が市場予想を大幅に下回り、1518万バレル増加した5億323万バレルとなった。ガソリン在庫は422万バレル増加した2億3785万バレル、留出油在庫は522万バレル増加した1億5109万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は136万バレル減少した5821万バレルとなった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 114増 | 1515増 | 67減 | 75減 | 76増 |
ガソリン(万バレル) | 644増 | 422増 | 349増 | 218増 | 261増 |
留出油(万バレル) | 232増 | 522増 | 323増 | 144減 | 521増 |
クッシング在庫(万バレル) | 185減 | 136減 | 31減 | 172減 | 120増 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と3)
原油生産量は前週より横ばいで1110万バレルだった。原油輸入量は前週比で日量108万バレル増加した647万バレル、輸出量は同162万バレルと大幅に減少して183万バレルとなった。輸入国の国別内訳と前週からの増減は表2のとおり。今週はカナダやサウジアラビア、メキシコからの輸入が増加したが、コロンビアとナイジェリアなど中東からの輸入が減少している。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 398 | 363 | +35 |
メキシコ | 67 | 53 | +14 |
サウジアラビア | 28 | 7 | +21 |
イラク | 10 | 0 | +10 |
コロンビア | 21 | 28 | -7 |
エクアドル | 24 | 12 | +12 |
ナイジェリア | 8 | 14 | -6 |
ブラジル | 28 | 18 | +10 |
需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるAdjustmentは84万バレルとなり前週の87万バレルから3万バレル減少した。今週も前週と同様にAdjustmentで在庫を増加させる形の調整となっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1110 | 1110 | 1100 | 1090 | 1102 | 1280 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -1 | 0 | -1 | -5 | -2 | -2 |
原油輸入(万バレル/日) | 647 | 539 | 522 | 525 | 559 | 688 |
原油輸出(万バレル/日) | 183 | 345 | 283 | 275 | 271 | 340 |
Adjustment(万バレル/日) | 84 | 87 | 74 | 48 | 73 | 37 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
製油所の稼働率が79.9%と1.7%の上昇となったため、製油所への原油投入量は42万バレル増加した日量1443万バレルとなった。稼働率は前年の91.9%を下回っている。石油生産量では前週比でガソリン生産が24万バレル減少した日量834万バレル、ジェット燃料生産が1万バレル増加した日量112万バレル、留出油の生産が9万バレル増加した日量467万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1443 | 1401 | 1426 | 1384 | 1413 | 1659 |
製油所稼働率(%) | 79.9 | 78.2 | 78.7 | 77.4 | 78.5 | 90.6 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 834 | 858 | 885 | 906 | 870 | 975 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 78 | 52 | 44 | 53 | 57 | 57 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 112 | 111 | 102 | 108 | 108 | 179 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 18 | 9 | 21 | 2 | 12 | 6 |
留出油生産(万バレル/日) | 467 | 458 | 460 | 427 | 453 | 522 |
留出油輸入(万バレル/日) | 27 | 61 | 18 | 28 | 34 | 16 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
石油製品の供給(需要)一覧が表5となる。前週比でガソリン供給が日量37万バレル減少した760万バレル、ジェット燃料供給は17万バレル増加して日量130万バレル、留出油供給は40万バレル減少した日量338万バレルとなった。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
ガソリン供給(万バレル/日) | 760 | 797 | 812 | 825 | 799 | 888 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 90 | 68 | 76 | 69 | 76 | 91 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 130 | 113 | 116 | 98 | 115 | 158 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 12 | 5 | 8 | 9 | 9 | 14 |
留出油供給(万バレル/日) | 338 | 378 | 417 | 422 | 389 | 378 |
留出油輸出(万バレル/日) | 81 | 94 | 82 | 108 | 91 | 107 |
石油製品需給(日量)
原油需要側では製油所稼働率が前週比で1.7%向上し、原油消費量は42万バレル増加した日量1443万バレルとなった。石油製品ではガソリン生産量が前週比で24万バレル減少した834万バレル、輸入量は26万バレル増加した78万バレルとなった。一方、ガソリン供給量は37万バレル減少した760万バレル、輸出量は22万バレル増加した90万バレルとなった。ガソリン生産量は減少、輸入量は増加となったが、供給量の減少と輸出量の増加で、今週も供給側(生産量+輸入量)が需要側(供給量+輸出量)より多くガソリン在庫は増加となった。留出油生産量は9万バレル増加した467万バレル、輸入量は34万バレル減少した27万バレルとなった。一方、留出油供給量は40万バレル減少した338万バレル、輸出量は13万バレル減少した81万バレルとなった。供給側(生産量+輸入量)より需要側(供給量+輸出量)が少なくなり、留出油在庫は今週も増加した。ジェット燃料生産量は1万バレル増加した112万バレル、供給量は17万バレル増加した130万バレルとなった。石油製品全体の供給(需要)量は前週比で7万バレル増加した1853万バレルとなった。全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は原油在庫の大幅増加で、前週比1980万バレル増加した20億1200万バレルとなり、20億バレルの大台に逆戻りした。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。前週の卸売価格は感謝祭の祝日のため未公開となっているが、前々週と比較してガソリンが8セント、ディーゼル燃料が11セント値が値上がりしている。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 12/4 | 11/27 | 11/20 | 11/13 | 11/6 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 1.287 | 未公開 | 1.202 | 1.158 | 1.121 | 1.687 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 1.397 | 未公開 | 1.288 | 1.201 | 1.145 | 1.954 |
原油 (ドル/バレル) | 46.23 | 未公開 | 41.99 | 39.93 | 36.97 | 59.20 |
表7は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなるが、今週のガソリン小売価格は約3セントの上昇、ディーゼル燃料は約3セントの上昇となった。
小売価格 | 12/7 | 11/30 | 11/23 | 11/16 | 11/9 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.156 | 2.120 | 2.102 | 2.111 | 2.096 | 2.561 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.567 | 2.540 | 2.525 | 2.532 | 2.517 | 2.981 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.820 | 2.792 | 2.779 | 2.783 | 2.771 | 3.230 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 2.529 | 2.502 | 2.462 | 2.411 | 2.383 | 3.049 |
今後の見通し
今週の原油生産量は日量1110万バレルで横ばいだった。需要面では製油所稼働率が1.7%向上したため、原油の消費量は42万バレル増加した日量1443万バレルとなった。原油輸出入では464万バレルの輸入超過で、輸入量が前週比で108万バレル増加した647万バレル、輸出量が162万バレルの大幅減となった183万バレルだった。原油輸入量の増加と、輸出量の大きな減少のため原油在庫が大幅増加した。主要石油製品ではガソリンと留出油ともに供給側(生産量+輸入量)は需要側(供給量+輸出量)より多く在庫増となった。前週より石油製品の出荷は日量7万バレル増加した1853万バレルとなった。全ての石油製品と原油を合わせた在庫は、20億1200万バレルと前週比で1980万バレルの増加となり20億バレルの大台を回復した。
アメリカの原油生産量は日量1110万バレルで横ばいだったが、主要石油製品のアメリカ国内向けの需要は減少しており、原油と石油製品合わせた在庫も大幅増加となっている。1日前のAPIの週間統計でも原油在庫、石油製品在庫共に増加となっている。
前週12月3日に開催されたOPECプラスの会合では、1月以降50万バレルずつ増産するロシア案で決定した。1月の減産量は12月の770万バレルから50万バレル減った日量720万バレルとなる。その後の原油相場は新型コロナウイルスワクチンの実用化で、ワクチンによる新型コロナウイルスの感染抑制で今後の原油需要の見通しが明るくなるとの見方から、原油先物相場は45.00ドル付近で推移している
EIAの月報が昨日発表となった。原油需要は今後回復していき、原油増産量が頭を押さえるものの原油価格は44から46ドルで推移すると予想されている。しかし、EIAの原油在庫が1518万バレルと増加しただけでなく主要な石油製品の在庫も増加となったことから原油需要は減少していると考えられ、現状の相場の維持には黄色信号が灯っていると考えている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。