ダイジェスト
- ブラジルでは干ばつが依然として続く
- アルゼンチンも乾燥状態
- USDAの需給報告と世界需給は今週10日に発表される
南米の干ばつの状況
ブラジルやアルゼンチンでは11月の終わりごろから雨が増えていると報道されているが、今日はNASAの観測衛星による土壌中の水分量分析を見てみたい。
図1は根のあたりの深さの土壌の水分量を今年11月30日のデータで見たものとなる。これらの図は1948年から2012年の水分量の平均を平年のデータとして、平年からの水分量のずれをパーセンテージで見ている。図中で青色が強いほど、平年より水分が豊富で、茶色が濃いほど水分が少なく乾燥していることを意味している。2020年の11月時点では南米の多くの地域が乾燥していることが分かる。まず直近の4年間との比較をしてみよう。

図2は2016、図3は2017年、図4は2018年、図5は2019年のそれぞれ11月最後の週の土壌中の水分量を示している。2019年ではブラジルやアルゼンチンでやや干ばつとなっている地域が広いものの、今年の状態はどの年に比べても深刻であることが分かる。
図2 2016年土壌中の水分量(出展元 NASA) 図3 2017年土壌中の水分量(出展元 NASA) 図4 2018年土壌中の水分量(出展元 NASA) 図5 2019年土壌中の水分量(出展元 NASA)
図6は土壌表面の水分量を見たもので、特にブラジル中部では茶色が強くなっており土壌表面がひどく乾燥していることが分かる。またブラジルよりも雨が多かったはずのアルゼンチンの中央部のパンパ地帯でも土壌表面が乾燥していることを示す茶色が広がっており、11月後半に雨が続いたが、平年並みまで土壌の水分が回復していないことが示されている。

図7は図1の土壌中水分量の図の上にブラジルとアルゼンチンと大豆とコーンの主要産地の範囲(黒枠内)を載せたものとなる。ブラジルの産地は北側の新興産地と南側かつ内陸の旧来からの産地となるが、旧来からの産地は南側を除いたほとんどの地域で干ばつとなっている。新興産地では内陸部は平年並みから平年以上の乾燥となっているが、海岸部では水分が豊富な青色となっている。ただし、大豆とコーンの産地は乾燥している内陸側にあるため干ばつの影響を受けている。アルゼンチンでは雨が降っていると報道されていたわりに土壌乾燥の解消が進んでおらず、依然として平年より乾燥が続いていることが分かる。

まとめ
穀物相場は12月の需給報告で、アメリカ国内のアメリカ産の大豆・コーンの在庫の引き下げと輸入の引き上げが行われるかが注目されているが、需給報告と同時に発表される世界需給でブラジル産とアルゼンチン産の大豆とコーンの生産量が干ばつを理由に引き下げられるかにも注目が集まっている。ロイターの報道では、取材したアナリストの多くがブラジル産の大豆生産量予想を小幅に引き下げていると伝わっている。今後もブラジルでは雨が期待されているが、中長期予報では乾燥となっており、どこまで現状の乾燥が解消するかは分かっていない。最初の収穫は例年なら1月末ごろを予定しているが、干ばつが続き乾燥が解消しない場合は、一旦落ち着いていた穀物相場が再度上昇を始めると予想している。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。