ベネズエラへの制裁拡大(つらつらコラム2020年2月20日)

 

アメリカによるベネズエラへの追加制裁

アメリカはベネズエラと原油取引を行っていたロシアの石油大手ロスネフチの子会社ロスネフト・トレーディングへ火曜日から制裁を科した。この制裁は2015年から始まり、2017年8月に金融制裁、2019年1月の石油輸出制裁と強化されてきたベネズエラのマドゥロ政権への経済制裁の一端となる。同社がベネズエラの国営石油会社PDVSAのアジア・アフリカ向けの300万バレル分の原油輸出の仲介を行ったとの疑いが持たれている。

ベネズエラでの原油生産
monthly venezueal crude oil production
図1 ベネズエラの産油量(出展元 EIA)
*2003年の落ち込みは大規模ストライキによる

ベネズエラは古くから世界有数の産油国で、2000年代初めには一日300万バレルの原油を輸出してきた。2003年以降も250万バレルの水準を維持してきたが、2017年の金融制裁強化前後から、資金不足や技術者不足から原油生産が減少し始め、現在は日量70万バレルと30年前の水準まで低下している。

monthly venezuela crude oil exports by destinatoin
図2 ベネズエラ産原油の輸出先(出展元 EIA)

また、図2はベネズエラの原油の取引先で、2017年の時点ではアメリカが最大の輸出先であった。ベネズエラは地理的にアメリカに最も近い原油供給国として長らく機能しており、アメリカへの輸出量は反米を掲げていたチャベス前政権の時代(1999-2013)にピークを迎えた。その後も、アメリカにおけるシェール革命の影響で、アメリカへの輸出量が減少しつつもベネズエラにとって最大の原油輸出国はアメリカだった。これは制裁が強化されつつも、PDVSAの製油施設・子会社がアメリカ国内にあり、負債の返済のための原油輸出が続けられていたことが理由となっている。2019年1月のトランプ政権の制裁強化はこの抜け道をつぶしたもので、上図に示す通りアメリカ国内向けの原油輸出はほぼストップした。

今後の見通し

今回の経済制裁の強化で、ベネズエラは最後の資金支援元となっているロシアルートを失い最終的に経済が破綻することになるかもしれない。しかし、先日このコラムでも触れたとおり、2020年の上半期の原油余剰量が日量100万バレル発生する見込みとなっていること、加えて中国でのコロナウイルス流行による影響から世界の原油需要が2011年以来の低い伸びとなり、昨年度の予想より日量にして約40万バレル分の需要落ち込み(IEA月報による)が年内に発生すると予想されていることから、今回の制裁強化で日量70万バレルの輸出が失われても原油相場への影響は一時的なものにとどまると予想する。むしろ、制裁強化によってマドゥロ政権が倒れることになれば、縮小していたベネズエラの石油輸出が正常化に向かい、原油相場が将来的に下落することが予想される。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。