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ダイジェスト(原油量はいずれも日量)
・キーストーンXLパイプラインが明日に建設許可撤回の可能性
・新パイプラインはカナダ産オイルサンド原油やアメリカ産シェール原油の輸送用
・容量は日量51万バレル
・カナダの原油生産が伸び悩む可能性
バイデン新政権の成立
バイデン次期アメリカ大統領は明日1月20日に就任する。就任に伴って、トランプ政権から方針転換される政策があるが、日本時間の朝方(アメリカ時間18日)、原油パイプライン「キーストーンXL」の建設許可を取り消すことが発表された。今日はこれによる影響について調べてみたい。
キーストーンXL

図はキーストーンXLパイプラインの計画図となる。このキーストーンXLパイプラインはキーストーンパイプラインの拡張計画として提案されたもので、元々のキーストーンパイプラインはカナダのアルバータ州からメキシコ湾岸までアメリカ合衆国を縦断して、カナダのオイルサンド地帯で産出された原油をメキシコ湾の製油所・積み出し基地まで輸送することを目的として計画された。図中の実線部分(フェイズ1~3)はキーストーンパイプラインを示しており、2010年にアルバータ州ハーディスティからオクラホマ州クッシングまで、2014年にはクッシングからメキシコ湾岸のテキサス州ネダーランドまでが完成し、カナダ産の原油をメキシコ湾から輸出することが可能となった。
キーストーンXLパイプライン(図中点線)は、アルバータ州ハーディスティから既存のキーストーンパイプラインに並行して敷設された後、モンタナ州、サウス・ダコタ州を経由してネブラスカ州で既存のキーストーンパイプラインに接続、容量は日量51万バレルとされている。
このパイプラインの経由地にはアルバータ州のオイルサンド地帯やモンタナ州とノース・ダコタ州、サウス・ダコタ州のパッケンと呼ばれるシェール地帯から現在生産されている日量83万バレルの原油を運び出す目的で使用される。更に、カナダの内陸部やパッケンでは輸送容量の問題で輸送の一部を鉄道貨車に頼っているが、新しいパイプラインの開通で低い輸送コストでの増産が可能となる。パーミヤンがシェール生産の中心になっているのは輸送インフラが整っていることも大きい。
計画の迷走
2015年にアメリカのオバマ政権は建設計画を却下した。背景には環境破壊への懸念が挙げられている。その後、2016年の大統領選挙で当時のトランプ候補が建設再開を公約にして当選したことで2017年に建設許可が下りカナダ側から建設が開始された。このまま順調に進かと思われたが、複数の差し止め訴訟によりアメリカ国内の建設は進んでいない。そんな中、2020年の大統領選挙でオバマ政権の副大統領だったバイデン候補が建設撤回を公約に当選したことで建設が中止される可能性が浮上している。
今後の見通し
新型コロナウイルスの感染拡大で原油需要は伸び悩んでおり、現在、キーストーンXLパイプラインの重要性が下がっているのは事実となっている。仮に建設が中止されれば、カナダのオイルサンド原油やアメリカ内陸部でのシェール原油の生産は抑制されることは間違いなく、両国の原油生産量、特にカナダの生産量が今後伸び悩むことが予想される。逆に現在の原油価格のまま完成すれば、アメリカやカナダの原油生産が今以上に増加することが考えられる。明日の大統領就任式後にアクションがあるかには注目したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。