目次
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ダイジェスト
・原油在庫は991万バレル減少
原油生産量は日量1090万バレルと前週から10万バレルの減少
輸出入では輸入が506万バレル、輸出量が335万バレルで、全体では171万バレルの輸入超過
製油所稼働率は0.8%低下し原油処理量が5万バレル減少
原油輸入量の低下と輸出量の増加が在庫減少要因
・ガソリン在庫は247万バレル増加
生産量以上に供給量と輸出量が減少したための在庫増
ガソリン生産量は21万バレル減少、輸入量は4万バレル減少
ガソリン供給量は28万バレル減少、輸出量は23万バレル減少
・留出油在庫は81万バレル減少
輸出量が30万バレルと比較的大きく減少したが、供給量が48万バレル増加したことが輸出の減少を補い在庫の減少要因となった。
留出油の生産量は1万バレル減少、輸入量は1万バレル増加
留出油の供給量は48万バレルの大幅増加、輸出量は30万バレル減少
・原油と石油製品を合わせた在庫量は19億6000万バレルで前週より1170万バレルの減少
・オクラホマ州クッシング在庫は228万バレル減少した5250万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は69.1%
EIA週間統計の総評
昨日発表のEIAの週間在庫統計では原油在庫が997万バレルの減少。石油製品ではガソリン在庫は247万バレル増加、留出油在庫は81万バレル減少した。原油先物相場は原油在庫の減少が支援材料となったが、上げは続かず取引終盤にかけて売られて引けている。
原油から詳細を見ていくと、原油生産量は日量1090万バレルで今週は10万バレルの減少となった。原油輸入量は前週比で98万バレル減少した日量506万バレル、輸出量は日量110万バレル増加した日量335万バレルとなった。全体としては171万バレルの輸入超過となっている。製油所の稼働率は前週比で0.8%低下した81.7%と今週も80%を超えており、原油処理量は前週比で3万バレル減少とほぼ横ばいの日量1472万バレルだった。戦略備蓄(SPR)の放出は今週も0だった。主要石油製品ではガソリン在庫が247万バレルの増加、留出油在庫は81万バレルの減少となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は19億6000万バレルと前週比で1170万バレルの減少となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの在庫は228万バレル減少した5250万バレルだった。
原油と石油製品の在庫(表1)
週間在庫では997万バレル減少した4億7670万バレル、ガソリン在庫は247万バレル増加した2億4770万バレル、留出油在庫は81万バレル減少した1億6280万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は228万バレル減少して5250万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 260増 | 997減 | 435増 | 324減 | 801減 |
ガソリン(万バレル) | 110増 | 247減 | 25減 | 439増 | 451増 |
留出油(万バレル) | 80増 | 81減 | 45増 | 478増 | 639増 |
クッシング在庫(万バレル) | 247減 | 472減 | 197減 | 76増 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめたもので、原油生産量は今週は1090万バレルと10万バレルの減少となった。原油輸入量は前週比で日量98万バレル減少した506万バレル、輸出量は日量110万バレル増加した335万バレルとなった。需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるAdjustmentは19万バレルと前週と変わらず、Adjustmentで在庫を増加させる形の調整が加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1090 | 1100 | 1100 | 1100 | 1097 | 1300 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 506 | 604 | 623 | 536 | 567 | 666 |
原油輸出(万バレル/日) | 335 | 225 | 301 | 363 | 306 | 350 |
Adjustment(万バレル/日) | 19 | 19 | -4 | 49 | 19 | 19 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
輸入国の国別内訳と前週からの増減は表3の通り。今週はカナダとメキシコ、コロンビアからの輸入が減少した。一方でサウジアラビアなど中東産原油やコロンビア以外の南米産原油の輸入が増加した。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 311 | 389 | -77 |
メキシコ | 46 | 71 | -24 |
サウジアラビア | 20 | 13 | +7 |
イラク | 11 | 9 | +2 |
コロンビア | 7 | 35 | -28 |
エクアドル | 25 | 14 | +11 |
ナイジェリア | 11 | 4 | +7 |
ブラジル | 27 | 7 | +20 |
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表3は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所の稼働率が0.8%低下した81.7%となったが、製油所への原油投入量は5万バレル減少した日量1471万バレルとほぼ横ばいとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週比で21万バレル減少した日量867万バレル、ジェット燃料生産が3万バレ減少した日量123万バレル、留出油の生産は1万バレル減少とほぼ横ばいの日量451万バレルだった。今週も製油所の稼働率が低下したが原油投入量はほとんど変わらず、石油製品の生産もガソリン生産以外はほぼ横ばいだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1471 | 1476 | 1465 | 1437 | 1462 | 1592 |
製油所稼働率(%) | 81.7 | 82.5 | 82.0 | 80.7 | 81.7 | 87.2 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 867 | 888 | 751 | 801 | 827 | 915 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 46 | 50 | 38 | 44 | 44 | 54 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 123 | 126 | 123 | 114 | 121 | 184 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 24 | 19 | 5 | 14 | 15 | 8 |
留出油生産(万バレル/日) | 451 | 452 | 466 | 478 | 462 | 497 |
留出油輸入(万バレル/日) | 47 | 46 | 34 | 30 | 39 | 12 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の供給(需要)と輸出の内訳一覧となる。前週比でガソリン供給が日量28万バレル減少した783万バレル、ジェット燃料供給は16万バレルと増加した日量124万バレル、留出油供給は48万バレル増加して日量430万バレルとなった。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
ガソリン供給(万バレル/日) | 783 | 811 | 753 | 744 | 772 | 879 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 50 | 73 | 59 | 88 | 75 | 64 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 124 | 108 | 146 | 91 | 117 | 167 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 7 | 5 | 3 | 5 | 5 | 10 |
留出油供給(万バレル/日) | 430 | 382 | 360 | 294 | 366 | 390 |
留出油輸出(万バレル/日) | 80 | 110 | 71 | 123 | 96 | 138 |
石油製品需給(日量)
原油需要側では製油所稼働率が前週比で0.8%低下したが、原油消費量は5万バレル低下と前週から大きく変わらない日量1471万バレルとなった。主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で21万バレル減少した867万バレル、輸入量は4万バレル減少した46万バレルとなった。一方、ガソリン供給量は28万バレル減少した783万バレル、輸出量は23万バレル減少した50万バレルとなった。ガソリン生産量は減少したがそれ以上にガソリン供給量が減少したことや輸出量が減少したことからガソリン在庫が増加となった。次に留出油生産量は1万バレル減少とほぼ横ばいの451万バレル、輸入量は1万バレル増加した47万バレルだった。留出油供給量は48万バレル増加して430万バレルとなった。輸出量は30万バレル減少した80万バレルとなった。留出油生産量や輸入量は横ばいとなった。留出油の輸出は30万バレルと比較的大きな減少幅だったが、供給量が48万バレルの大幅増加となったため在庫の取り崩しが進み留出油在庫は減少に転じた。ジェット燃料生産量は3万バレル増加した123万バレル、供給量は16万バレル増加した124万バレルだった。石油製品全体の供給(需要)量は前週比で4万バレル小幅増加した1968万バレルとなった。ガソリン在庫が増加したが原油を始めとした他の石油製品の在庫が減少したことから、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比1170万バレル減少した19億6000万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品の卸売価格となる。ガソリン価格、ディーゼル燃料価格共に前週比で約2セントの上昇だった。原油価格は直近3週間で52.00ドル台で横ばいとなっている。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 1/22 | 1/15 | 1/8 | 1/1 | 12/25 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 1.578 | 1.561 | 1.576 | 未発表 | 未発表 | 1.559 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 1.569 | 1.585 | 1.582 | 未発表 | 未発表 | 1.709 |
原油 (ドル/バレル) | 52.28 | 52.25 | 52.14 | 未発表 | 未発表 | 54.09 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果で、今週のガソリンとディーゼル燃料の小売価格は共に前週比で約2セントの上昇となった。
小売価格 | 1/25 | 1/18 | 1/11 | 1/4 | 12/28 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.392 | 2.379 | 2.317 | 2.249 | 2.243 | 2.506 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.776 | 2.759 | 2.702 | 2.639 | 2.634 | 2.911 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.033 | 3.014 | 2.959 | 2.895 | 2.889 | 3.163 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 2.716 | 2.696 | 2.670 | 2.640 | 2.635 | 3.010 |
今後の見通し
原油生産量は日量1090万バレルで10万バレルの減少となった。需要面では製油所稼働率が0.8%低下し、原油消費量は日量5万バレルと小幅減少した日量1471万バレルとなった。原油輸出入は日量208万バレルの輸入超過で、輸入量が前週比で日量98万バレル減少した日量506万バレル、輸出量が110万バレル増加した日量335万バレルだった。原油輸入量の減少と輸出量の増加が在庫減少の要因となった。主要石油製品ではガソリンは需要側(供給量+輸出量)が減少したが供給側(生産量+輸入量)のを減少がより大きく在庫増となった。留出油は需要側(供給量+輸出量)が減少し供給側(生産量+輸入量)が増加したため在庫減となった。週より石油製品の出荷は日量4万バレルと小幅増加の1968万バレルとなった。全ての石油製品と原油を合わせた在庫は、1160万バレル減少した19億6000万バレルだった。
今週の原油先物相場は、新型コロナウイルスの変異種による感染拡大が欧米で続いていることを材料に売られる場面もあったが、イラクがOPECプラスの生産枠を順守するために行う補償減産計画が発表したこと、待遇改善を求める準軍事組織がリビアの輸出港を占拠したことによってリビアの原油輸出の内20万バレル分が減少しているとの情報が相場を支えている。一方で、先週誕生したバイデン米新政権による大規模経済対策の実施に議会対策が必要となったことで足踏みに追い込まれており、原油相場は横ばい状態となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大による需要減少が進む方向に事態が進んでいることから、1バレル50ドルをそろそろ割り込むのではないかと考えている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。