目次
ダイジェスト
・原油在庫は128万バレル増加
原油生産量は日量970万バレルと前週比110万バレルの減少
輸出入では輸入459万バレル、輸出量が231万バレルで228万バレルの輸入超過
製油所稼働率は14.5%低下し原油処理量は258万バレルの大幅減少
寒波による製油所の閉鎖で原油処理量が減少し在庫が増加
・ガソリン在庫は1万バレル増加
出荷量も生産量も減少となり在庫は横ばいだった。
ガソリン生産量は129万バレル減少、輸入量は14万バレル減少
ガソリン出荷量は120万バレル減少、輸出量は3万バレル減少
・留出油在庫は496万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)で在庫が減少
留出油の生産量は95万バレル減少、輸入量は6万バレル減少
留出油の出荷量は52万バレル減少、輸出量は27万バレル減少
・原油と石油製品を合わせた在庫量は19億2250万バレルで前週より1380万バレルの減少
・オクラホマ州クッシング在庫は280万バレル増加した4781万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は62.9%
EIA週間統計の総評
昨日発表のEIAの週間在庫統計は前週にテキサス州を襲った寒波の影響で製油所が閉鎖されたため原油在庫が128万バレルの増加となった。石油製品ではガソリン在庫が1万バレル増加、留出油在庫は496万バレルの減少だった。原油先物相場は経済対策による景気回復期待と需要回復期待から買われた。原油在庫の増加はほとんど影響しなかった。
原油生産量は寒波による油田の閉鎖の影響で110万バレルの大幅減となる日量970万バレルだった。原油輸入量は前週比で129万バレル減少した日量459万バレル、輸出量は日量154万バレル減少した日量231万バレルとなった。全体としては228万バレルの輸入超過となっている。製油所の稼働率は前週比で14.5%大幅低下した68.6%となり、原油処理量は前週比で258万バレルの大幅減となった日量1223万バレルだった。戦略備蓄(SPR)の放出は0だった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は19億2250万バレルと前週比で1380万バレルの減少となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの在庫は280万バレル増加した4781万バレルだった。
原油と石油製品の在庫(表1)
原油の在庫は128万バレル増加した4億6300万バレル、ガソリン在庫は1万バレル増加した2億5710万バレル、留出油在庫は496万バレル減少した1億5270万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は280万バレル増加した4781万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 100増 | 128増 | 725減 | 664減 | 99減 |
ガソリン(万バレル) | 10増 | 1増 | 67増 | 425増 | 446増 |
留出油(万バレル) | 450減 | 496減 | 342減 | 173減 | 1減 |
クッシング在庫(万バレル) | 280増 | 302減 | 65減 | 151減 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。いずれの在庫も過去5年間の在庫レンジ内での動きとなっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は970万バレルと寒波による油田閉鎖の影響で前週比で日量110万バレルの減少となった。原油輸入量は前週比で日量129万バレル減少した459万バレル、輸出量は日量154万バレル減少した231万バレルとなった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計ではAdjustmentが42万バレル増と前週比で49万バレル減少し、在庫を増加させる形で調整が加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 970 | 1080 | 1100 | 1090 | 1075 | 1300 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 459 | 589 | 585 | 650 | 574 | 621 |
原油輸出(万バレル/日) | 231 | 386 | 261 | 348 | 298 | 365 |
Adjustment(万バレル/日) | 42 | 92 | -42 | 57 | 39 | 51 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
輸入国の国別内訳と前週からの増減は表3の通り。今週は主要な輸入国すべての輸入量が減少した。特にカナダの減少が顕著だった。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 283 | 368 | -85 |
メキシコ | 35 | 47 | -12 |
サウジアラビア | 14 | 23 | -9 |
イラク | 0 | 22 | -22 |
コロンビア | 20 | 34 | -14 |
エクアドル | 5 | 18 | -13 |
ナイジェリア | 5 | 7 | -2 |
ブラジル | 0 | 0 | 0 |
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。寒波による閉鎖で製油所の稼働率が14.5%低下した68.6%となり、製油所への原油投入量は258万バレル減少した日量1223万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週比で129万バレル減少した日量773万バレル、ジェット燃料生産が23万バレル減少した日量90万バレル、留出油生産が95万バレル減少した日量362万バレルだった。製油所の稼働率の大幅低下で原油投入量も大幅減少した。石油製品の生産ではガソリンの生産が日量129万バレル、ジェット燃料の生産が23万バレル、留出油の生産が95万バレルと大幅に減少している。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1223 | 1481 | 1479 | 1464 | 1412 | 1600 |
製油所稼働率(%) | 68.6 | 83.1 | 83.0 | 82.3 | 79.3 | 87.9 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 773 | 903 | 868 | 863 | 846 | 979 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 53 | 67 | 65 | 56 | 60 | 40 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 90 | 114 | 119 | 125 | 112 | 161 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 12 | 4 | 4 | 1 | 5 | 4 |
留出油生産(万バレル/日) | 362 | 457 | 466 | 462 | 436 | 484 |
留出油輸入(万バレル/日) | 30 | 36 | 35 | 51 | 38 | 16 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。前週比でガソリン出荷量が日量120万バレルと大幅減少した720万バレル、ジェット燃料の出荷量は20万バレル減少した日量97万バレル、留出油の出荷量は52万バレル減少した日量393万バレルとなった。テキサス州に集中する製油所の閉鎖で石油製品の出荷が減った。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 720 | 840 | 785 | 777 | 781 | 903 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 44 | 47 | 48 | 54 | 65 | 55 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 97 | 117 | 126 | 75 | 104 | 145 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 4 | 12 | 4 | 25 | 11 | 25 |
留出油出荷(万バレル/日) | 393 | 445 | 430 | 419 | 422 | 445 |
留出油輸出(万バレル/日) | 70 | 97 | 95 | 94 | 89 | 120 |
石油製品需給(日量)
原油の需要側では製油所稼働率が前週比で14.5%と大幅低下したことで、原油消費量は前週より258万バレル減少した日量1223万バレルとなった。テキサス州を中心とする寒波で多数の製油所が閉鎖された影響が出ている。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で129万バレル減少した773万バレル、輸入量は14万バレル減少した53万バレルとなった。ガソリンの出荷量は120万バレル減少した720万バレル、輸出量は3万バレル減少した44万バレルだった。寒波で出荷量と生産量の双方が減少したが、ガソリン在庫はほぼ横ばいだった。
次に留出油は生産量が95万バレル減少した362万バレル、輸入量は6万バレル減少した30万バレルだった。留出油の出荷量は52万バレル減少した393万バレル、輸出量は27万バレル増加した70万バレルとなった。生産量が出荷量より減少したことで在庫の取り崩しが続いている。
ジェット燃料生産量は24万バレル減少した90万バレル、出荷量は20万バレル減少した97万バレルだった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で200万バレル減少した1866万バレルとなった。在庫では原油在庫とガソリン在庫が増加、留出油の在庫が減少した。全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で1380万バレル減少した19億2250万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品の卸売価格となる。今週のガソリン卸売価格が約14セントの上昇、ディーゼル燃料卸売価格が約4セントの上昇となった。製油所の閉鎖による供給減によって価格が上昇した。原油価格がはほぼ横ばいだった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 2/19 | 2/12 | 2/5 | 1/29 | 1/22 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 1.807 | 1.661 | 1.672 | 1.594 | 1.578 | 1.625 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 1.818 | 1.778 | 1.716 | 1.599 | 1.569 | 1.700 |
原油 (ドル/バレル) | 59.12 | 59.50 | 56.80 | 52.16 | 52.28 | 52.03 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果で、今週のガソリン小売価格は約13セント、ディーゼル燃料の小売価格は約10セントの上昇となった。製油所閉鎖による供給減のため上昇している。
小売価格 | 2/22 | 2/15 | 2/8 | 2/1 | 1/25 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.633 | 2.501 | 2.461 | 2.409 | 2.392 | 2.428 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.006 | 2.890 | 2.847 | 2.792 | 2.776 | 2.841 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.263 | 3.141 | 3.104 | 3.051 | 3.033 | 3.091 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 2.973 | 2.876 | 2.801 | 2.738 | 2.716 | 2.890 |
今後の見通し
原油生産量はテキサス州の寒波で油田が閉鎖されたため日量110万バレル減少した970万バレルとなった。需要面でも製油所の多数閉鎖で製油所稼働率が14.5%の大幅低下となった。原油消費量は258万バレルと大幅減少し、日量1223万バレルとなった。原油輸出入は日量228万バレルの輸入超過で、輸入量が前週比で日量129万バレル減少した日量459万バレル、輸出量が154万バレル減少した日量231万バレルだった。原油生産が減少したが、原油消費量が大幅低下となり原油在庫が増加した。
ガソリンでは生産量、出荷量ともに減少となりガソリン在庫はほぼ横ばいとなった。
留出油も生産量と出荷量がともに減少したが、供給側(生産量+輸入量)より需要側(出荷量+輸出量)が多い状態が続き、留出油在庫は減少している。
全ての石油製品の出荷量は日量200万バレル減少した1866万バレル、全ての石油製品と原油を合わせた在庫は、1380万バレル減少した19億2250万バレルだった。
今週の原油先物相場は、テキサス州の寒波で原油生産が日量400万バレル以上落ち込んだことで需給がひっ迫するとの見方、バイデン新政権による経済対策で原油消費量が増加するとの期待感を材料に上昇を続けて1バレル63ドル台に到達した。ゴールドマン・サックスは今期の原油価格見通しを約10ドル引き上げるなど、新型コロナウイルスの流行による経済の落ち込みからの回復期待が支援材料となっているが、投機資金は続くのだろうか?
来週にはOPECプラスの会合があるため、減産幅を巡る情報が材料となると考えている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。