目次
ダイジェスト
・原油在庫は99.4万バレル減少
原油生産量は日量1090万バレルと前週から横ばい
輸出入では輸入が650万バレル、輸出量が348万バレルで、全体では302万バレルの輸入超過
製油所稼働率は0.6%向上したが原油処理量は8万バレル減少
原油輸入量の増加で在庫取り崩し幅が減少
・ガソリン在庫は446万バレル増加
輸入の増加による在庫増
ガソリン生産量は4万バレル減少、輸入量は10万バレル増加
ガソリン供給量は6万バレル減少、輸出量は4万バレル増加
・留出油在庫は1万バレル減少
生産増と輸入増により在庫の取り崩し幅が減少
留出油の生産量は11万バレル増加、輸入量は4万バレル増加
留出油の供給量は11万バレル減少、輸出量は14万バレル増加
・原油と石油製品を合わせた在庫量は19億6290万バレルで前週より290万バレル増加
・オクラホマ州クッシング在庫は151万バレル減少した5099万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率は67.1%
EIA週間統計の総評
昨日発表のEIAの週間在庫統計は原油在庫が99.4万バレルの減少となった。石油製品ではガソリン在庫が446万バレル増加、留出油在庫は1万バレルの減少だった。原油先物相場はガソリン在庫の増加が懸念材料となったが、大きな影響はなかった。
原油から詳細を見ていくと、原油生産量は日量1090万バレル前週から横ばいとなった。原油輸入量は前週比で144万バレル増加した日量650万バレル、輸出量は日量12万バレル増加した日量348万バレルとなった。全体としては302万バレルの輸入超過となっている。製油所の稼働率は前週比で0.6%上昇し82.3%となったが、原油処理量は前週比で8万バレル減少した日量1464万バレルだった。戦略備蓄(SPR)の放出は今週も0だった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は19億6290万バレルと前週比で290万バレルの増加となった。WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの在庫は151万バレル減少した5099万バレルだった。
原油と石油製品の在庫(表1)
原油の週間在庫は99.4万バレル減少した4億7570万バレル、ガソリン在庫は446万バレル増加した2億5220万バレル、留出油在庫は1万バレル減少した1億6280万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は151万バレル減少して5099万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 430減 | 99減 | 997減 | 435増 | 324減 |
ガソリン(万バレル) | 20減 | 446増 | 247減 | 25減 | 439増 |
留出油(万バレル) | 160減 | 1減 | 81減 | 45増 | 478増 |
クッシング在庫(万バレル) | 151減 | 247減 | 472減 | 197減 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。いずれの在庫も過去5年間の在庫レンジ内での動きとなっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめたもので、原油生産量は今週1090万バレルと前週から横ばいだった。原油輸入量は前週比で日量144万バレル増加した650万バレル、輸出量は日量12万バレル増加した348万バレルとなった。需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられるAdjustmentは57万バレルと前週比で12万バレル減少したが、Adjustmentで在庫を増加させる形の調整が加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1090 | 1090 | 1100 | 1100 | 1095 | 1290 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 650 | 506 | 604 | 623 | 596 | 661 |
原油輸出(万バレル/日) | 348 | 335 | 225 | 301 | 302 | 341 |
Adjustment(万バレル/日) | 57 | 69 | 19 | -4 | 45 | 34 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
輸入国の国別内訳と前週からの増減は表3の通り。今週はカナダとメキシコ、コロンビアからの輸入を中心に原油輸入が前週より大幅に増えた。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 423 | 311 | +112 |
メキシコ | 72 | 46 | +26 |
サウジアラビア | 18 | 20 | -2 |
イラク | 9 | 11 | -2 |
コロンビア | 30 | 7 | +23 |
エクアドル | 10 | 25 | -15 |
ナイジェリア | 17 | 11 | +6 |
ブラジル | 6 | 27 | -21 |
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所の稼働率が0.6%上昇した82.3%となったが、製油所への原油投入量は逆に8万バレルの減少となり日量1464万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産が前週比で4万バレル減少した日量863万バレル、ジェット燃料生産が2万バレ増加した日量125万バレル、留出油生産が11万バレル増加したと日量462万バレルだった。今週は製油所の稼働率が上昇したが原油投入量は逆に減少となった。石油製品の生産では留出油の生産がやや増えた他はほぼ横ばいだった。輸入ではジェット燃料の輸入量が0近くまで減少している。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1464 | 1472 | 1476 | 1465 | 1469 | 1597 |
製油所稼働率(%) | 82.3 | 81.7 | 82.5 | 82.0 | 82.1 | 87.4 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 863 | 867 | 888 | 751 | 848 | 981 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 56 | 46 | 50 | 38 | 48 | 67 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 125 | 123 | 126 | 123 | 124 | 185 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 1 | 24 | 19 | 5 | 12 | 8 |
留出油生産(万バレル/日) | 462 | 451 | 452 | 466 | 458 | 497 |
留出油輸入(万バレル/日) | 51 | 47 | 46 | 34 | 45 | 19 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の供給(需要)と輸出の内訳一覧となる。前週比でガソリン供給が日量6万バレル減少した777万バレル、ジェット燃料供給は49万バレル減少した日量75万バレル、留出油供給は11万バレル減少して日量419万バレルとなった。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
ガソリン供給(万バレル/日) | 777 | 783 | 811 | 753 | 781 | 893 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 54 | 50 | 73 | 59 | 72 | 98 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 75 | 124 | 108 | 146 | 113 | 183 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 25 | 7 | 5 | 3 | 10 | 30 |
留出油供給(万バレル/日) | 419 | 430 | 382 | 360 | 398 | 421 |
留出油輸出(万バレル/日) | 94 | 80 | 110 | 71 | 89 | 117 |
石油製品需給(日量)
原油需要側では製油所稼働率が前週比で0.6%上昇したが、原油消費量は逆に前週より8万バレル減少して日量1464万バレルとなった。主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で4万バレル減少した863万バレルとほぼ横ばい、輸入量は10万バレル増加した56万バレルとなった。一方、ガソリン供給量は6万バレル減少した777万バレル、輸出量は4万バレル増加した54万バレルだった。ガソリン生産量は減少したがガソリン供給量も同程度減少したことや輸入量が増加したことからガソリン在庫が増加となった。次に留出油では生産量が11万バレル増加した462万バレル、輸入量は4万バレル増加した51万バレルだった。留出油の供給量は11万バレル減少した419万バレル、輸出量は14万バレル増加した94万バレルとなった。生産量の増加と供給量の減少により在庫の取り崩し幅が減少している。ジェット燃料生産量は2万バレル増加した125万バレル、供給量は49万バレル減少した75万バレルだった。石油製品全体の供給(需要)量は前週比で116万バレル減少した1852万バレルとなった。ガソリン在庫が増加したが原油を始めとした他の石油製品の在庫は小幅減少した。全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で290万バレル増加した19億6290万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品の卸売価格となる。ガソリン価格が約2セント、ディーゼル燃料価格は約3セント前週より上昇した。原油価格は直近3週間で52.00ドル台で横ばいとなっている。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 1/29 | 1/22 | 1/15 | 1/8 | 1/1 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 1.594 | 1.578 | 1.561 | 1.576 | 未発表 | 1.534 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 1.599 | 1.569 | 1.585 | 1.582 | 未発表 | 1.620 |
原油 (ドル/バレル) | 52.16 | 52.28 | 52.25 | 52.14 | 未発表 | 51.58 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果で、今週のガソリン小売価格は1.5セントの上昇、ディーゼル燃料の小売価格は約2セントの上昇となった。
小売価格 | 2/1 | 1/25 | 1/18 | 1/11 | 1/4 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.409 | 2.392 | 2.379 | 2.317 | 2.249 | 2.455 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.792 | 2.776 | 2.759 | 2.702 | 2.639 | 2.872 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.051 | 3.033 | 3.014 | 2.959 | 2.895 | 3.125 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 2.738 | 2.716 | 2.696 | 2.670 | 2.640 | 2.956 |
今後の見通し
原油生産量は日量1090万バレルで前週から横ばいだった。需要面では製油所稼働率が0.6%上昇したが、原油消費量は逆に8万バレル減少した日量1464万バレルとなった。原油輸出入は日量302万バレルの輸入超過で、輸入量が前週比で日量144万バレル増加した日量650万バレル、輸出量が12万バレル増加した日量348万バレルだった。原油輸入量の増加が在庫取り崩し幅減少の要因となった。主要石油製品ではガソリンは需要側(供給量+輸出量)が減少したが供給側(生産量+輸入量)が増加し在庫増となった。留出油は需要側(供給量+輸出量)は増加となったが、供給側(生産量+輸入量)がより増加したため在庫取り崩し幅が減少し在庫変化がほぼ0となった。全ての石油製品の出荷量は日量116万バレル減少した1852万バレル、全ての石油製品と原油を合わせた在庫は、290万バレル増加した19億6290万バレルだった。
今週の原油先物相場は、新型コロナウイルスの感染拡大懸念と株安により1バレル52ドルを割り込む場面から始まったが、米新政権による追加経済対策で米経済が持ち直し、原油需要が回復するとの期待と、サウジアラビアの自主原産で需給バランスが回復するとの見方から火曜日水曜日と1ドル以上の上昇となり56.00ドルを超えている。売りに対する下値が堅く下落幅が小さい状態が続いており、このまま追加経済対策が順調に進展するような場合は1バレル60ドルへ向けて上昇するとみられる。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。