目次
2月の原油相場と金相場の相関
データ分析の3回目として、今年2月の原油と金の値動きの相関についての分析を紹介する。
原油相場

図1に示す2月の原油相場はアメリカ政府の大規模経済対策で原油需要が回復するとの期待や、今後の原油需要のひっ迫期待から上昇した。月初めの52ドル台から1月の間に約10ドル以上上昇し月末前には64ドル寸前まで到達した。
スポット金相場

図2はスポット金相場を示している。アメリカ政府の経済対策による景気の回復期待からリスク選好が高まった。このため金の魅力が薄れたことから資金が金相場から他の商品へ流出している。金相場は2月初めに1860ドル台を付けていたが月末には1720ドルと120ドル以上の下落となっている。
今回は2月の原油相場と金相場の間の相関を分析した。
原油相場と金相場の相関
図3 2020年 図4 2021年
図3は2020年に2月の、図4は2021年の2月の図で、横軸に原油の時間足の終値、縦軸は金の時間足の終値の相関を見た散布図となる。この散布図の対角線上に点が並んでいれば原油と金がどちらも動いたことを示していて、横方向に水平に点が並べば原油だけが、縦方向に垂直に点並べば金だけが動いていたことを意味している。
このような散布図で相関の度合いと方向性を数値化する際には相関係数という値を使い相関を確認する。相関の方向性には正の相関と負の相関がある。例を挙げれば、原油が上昇した際に金が上昇すれば正の相関、原油の上昇時に金が下落すれば負の相関があると言える。また相関の強さは前述の相関係数の大きさを使って表されて、以下のように分類される。
- 相関係数が1.0~0.7:強い正の相関
- 相関係数が0.7~0.4:正の相関
- 相関係数が0.4~0.2:弱い正の相関
- 相関係数が-0.2~0.2:相関はほとんどない
- 相関係数が-0.4~-0.2:弱い負の相関
- 相関係数が-0.7~-0.4:負の相関
- 相関係数が-1.0~-0.7:強い負の相関
相関係数の値が小さく0に近い場合は金と原油の動きには関連性がなく双方が勝手に動いているだけを示し、値が1に近い場合は原油が上昇すれば動けば必ず金も上昇すること、値が-1に近い場合は原油が上昇すれば動けば必ず金も下落することを示している。図に対して相関係数を計算したものが下の表になる。
2020年2月 | 2021年2月 | |
相関係数 | -0.02 | -0.71 |
2020年の2月の原油相場と金相場の動きの間には相関がほとんどなかった。今年2020年2月には原油の上昇と金の下落が連動する負の強い相関が見えている。
まとめ
金は安全資産であり景気の状態に相場が左右される。今年2月にはワクチン開発により新型コロナウイルスの流行で落ち込んでいた経済が今後回復するとの期待が高まり金が大きく下落した。一方で原油は景気回復とともに需要が拡大する。今年2月は大規模経済対策による景気回復や原油需給のひっ迫期待をっ材料に原油が上昇した。一方で大規模経済対策に対するインフレ懸念を材料に金は上昇した。 実際に分析してみると、新型コロナウイルスの流行が中国以外で本格化する前の2020年の2月の原油相場と金相場の間にはほとんど相関がみられなかったが、今年2021年2月の原油相場と金相場の間には強い負の相関がみられる。今後も原油の上昇と金の下落という場面が増えるかもしれない。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。