目次
ダイジェスト
・大豆(アメリカ)
全ての需給項目で据え置き
予想期末在庫は1.20億ブッシェルで据え置き
在庫は直近7年で最低の水準
・コーン(アメリカ)
全ての需給項目は据え置き
予想期末在庫は15.02億ブッシェルで据え置き
・世界需給
乾燥の為アルゼンチンの大豆生産量が50万トンの引き下げ、コーン生産量は据え置き
降雨による作柄改善でブラジルの大豆生産量が100万トンの引き上げ、コーン生産量は据え置き
中国の大豆需要が100万トンの引き下げ
総評
日本時間3月10日26時にUSDAから3月の穀物の需給報告が発表された。今回の報告は南米アルゼンチンの乾燥やブラジルの収穫遅れが生産量へ影響するかどうか、アメリカ産の大豆とコーンの期末在庫がどれだけ引き下がるかが注目材料だった。報告では大豆ではすべての項目が前月より据え置きとなり、予想期末在庫も1.20億ブッシェルのまま据え置かれた。前月に引き続き7年間で最低の水準となっている。コーンも供給側、需要側全ての項目で据え置きとなった。予想期末在庫も15.02億ブッシェルで据え置きだった。
大豆・コーン共に事前の市場予想と比べると期末在庫が弱気な内容となり、大豆・コーン相場ともに利食い売りに押されて大幅安となった。南米ではアルゼンチンで乾燥の影響で大豆生産量が50万トンの引き下げ、ブラジルでは降雨による作柄改善で大豆生産量が100万トン引き上げられた。南米産コーンの生産量には変化がなく、南アフリカの生産量が100万トンの引き上げとなった。需要面では中国の大豆需要が100万トンに引き下げとなった他は大きな変化はなかった。
需給-大豆-
表1が大豆の2019/2020年シーズン(旧穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(新穀)の需給見通しで、2020/2021年シーズンについては12月の報告と比較している。
2019/2020年 シーズン予想 (3月時点) | 2020/2021年 シーズン見通し (2月時点) | 2020/2021年 シーズン見通し (3月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 7610 | 8310 | 8310 |
収穫面積(万エーカー) | 7490 | 8230 | 8230 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 47.4 | 50.2 | 50.2 |
期初在庫(億ブッシェル) | 9.09 | 5.25 | 5.25 |
生産量(億ブッシェル) | 35.52 | 41.35 | 41.35 |
輸入(億ブッシェル) | 0.15 | 0.35 | 0.35 |
供給合計(億ブッシェル) | 44.76 | 46.95 | 46.95 |
消費合計(億ブッシェル) | 39.52 | 45.75 | 45.75 |
内圧砕(油)(億ブッシェル) | 21.65 | 22.00 | 22.00 |
内輸出(億ブッシェル) | 16.82 | 22.50 | 22.50 |
期末在庫(億ブッシェル) | 5.25 | 1.20 | 1.20 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 857 | 1115 | 1115 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
今月の報告では2020年/2021年シーズンの生産量などの供給面、輸出などの需要面全ての項目で据え置きとなった。予想期末在庫も前月から据え置かれた1.20億ブッシェルとなった。
需給-コーン-
表2はコーンの2019/2020年シーズン(旧穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(新穀)の需給見通し、および新穀の前月の予想を比較したものとなる。
2019/2020年 シーズン予想 (3月時点) | 2020/2021年 シーズン見通し (2月時点) | 2020/2021年 シーズン見通し (3月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 8970 | 9080 | 9080 |
収穫面積(万エーカー) | 8130 | 8250 | 8250 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 167.5 | 172.0 | 172.0 |
期初在庫(億ブッシェル) | 22.21 | 19.19 | 19.19 |
生産量(億ブッシェル) | 136.20 | 141.82 | 141.82 |
輸入(億ブッシェル) | 0.04 | 0.02 | 0.02 |
供給合計(億ブッシェル) | 158.83 | 161.27 | 161.27 |
消費合計(億ブッシェル) | 139.63 | 146.25 | 146.25 |
内輸出(億ブッシェル) | 17.78 | 26.00 | 26.00 |
内工業・種子・食品用(億ブッシェル) | 62.86 | 63.75 | 63.75 |
内エタノール用(億ブッシェル) | 48.57 | 49.50 | 49.50 |
内飼料用(億ブッシェル) | 58.99 | 56.50 | 56.50 |
期末在庫(億ブッシェル) | 19.19 | 15.02 | 15.02 |
平均価格(セント/ブッシェル) | 356 | 430 | 430 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
今月の報告では2020年/2021年シーズンの供給側・需要側全ての項目が据え置かれた。予想期末在庫も前月から据え置きの15.02億ブッシェルだった。
世界需給のダイジェスト
大豆
2020年/2021年シーズンにおける世界の予想生産量は2月の3億6108万トンから74万トン引き上げられた3億6182万トンとなった。主要国生産国ではアメリカが1億1255万トンで据え置き、南米ではアルゼンチンが2月の報告から50万トン引き下げられた4750万トン、ブラジルは逆に100万トン引き上げられた1億3400万トンとなった。南米アルゼンチンの乾燥による被害と、ブラジルの降雨による作柄改善が反映された。
需要側では世界全体の消費量が2月の3億6982万トンから157万トン引き上げられた3億7131万トンとなった。主要輸入国である中国の需要は100万トン引き下げらられた1億1670万トン、欧州需要は1851万トンで据え置きとなった。
コーン
2020年/2021年シーズン、世界の予想生産量は2月の11億3405万トンから226万トン引き上げられ11億3631万トンとなった。主要生産国ではアメリカが3億6025万トン、アルゼンチンが4750万トン、ブラジルが1億900万トン、ウクライナが2950万トンで据え置かれた。南アフリカは生産量が100万トン引き上げられた1750万トン、ロシアは13万トン引き下げられた1387万トンだった。南米アルゼンチンの乾燥やブラジルの雨による大豆収穫遅れのコーン生産への影響は特に反映されなかった。
世界の予想需要は2月の11億5052万トンから約125万トン引き上げられた11億5177万トンとなった。主要輸入国のうち欧州は7700万トン、日本が1565万トン、韓国が1160万トン、メキシコが4385万トンで据え置きとなった。中国需要も2億8900万トンで据え置かれた。
今後の見通し
3月のアメリカの需給報告では2020年/2021年シーズンの大豆・コーン共にすべての項目で据え置きとなった。大豆の予想期末在庫が1.20億ブッシェルで据え置き。大豆在庫は前月に引き続き過去7年で最低の水準となっている。コーンの期末需要も15.02億ブッシェルで据え置きとなった。
世界需給では2月の報告と比べて大豆の予想生産量がアルゼンチンで50万トン引き下げ、ブラジルで100万トンの引き上げとなった。コーンの予想生産量は南アフリカが100万トンの引き上げ、ロシアが13万トンの引き下げとなった。
大豆需要では中国の需要が100万トンの引き下げとなったほかは主要輸入国は据え置き、世界全体では157万トンの需要引き上げとなった。コーン需要は主要輸入国で据え置きとなり、世界全体の需要は125万トンの引き下げとなった。
今回の需給報告では大豆・コーン共に需給に大きな変化がなかった。事前の市場予想では期末在庫の減少を見込んでいたが据え置きとなる弱気な結果となった。南米の産地ではアルゼンチンが乾燥を反映して大豆生産量が50万トンの引き下げ、ブラジルでは降雨による作柄改善を反映して大豆生産量が100万トン引き上げられた。コーンの生産量についてはアルゼンチン、ブラジル両国とも据え置かれた。
大豆・コーン相場の動きに関する2月の観測ではブラジルの降雨で大豆の収穫が遅れるとの見方から需給が締まると見られていたが、春節明けから中国向けの大口成約が見られていないこともあり、大豆・コーン相場共に横ばいの動きが続いている。今後は南米の収穫が進むにつれて需給が改善し下落する可能性が高い。
南米では2月後半からアルゼンチンでは少雨が続いている。昨日発表されたロザリオ穀物取引所の生産量予想では大豆の生産量が4900万トンから4400万トンへ引き下げられた。一方でブラジルでは南部では乾燥、北部や中部でなお降雨が続いている。北部や中部では大豆の収穫が例年と比べ10%以上遅れていると報告されている。また、大豆の裏作となるコーンも20%を超える作付け遅れが出ており、最適な季節を外れるとの見方が強い。いまだ予想生産量に変化はないが、生産量の引き下げにより今後のコーン相場に影響が出る可能性がある。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。