目次
ダイジェスト
・中国向けエタノールの輸出が再開
・2021年上半期分で7.5億リットル
・今後も中国国内の需要拡大と共に輸出拡大が期待される
中国のエタノール使用事情と経緯のまとめ
中国は2006年策定の第11次5か年計画においてバイオ燃料の導入を決定し自動車燃料用のエタノール燃料の導入を進めてきた。背景としては2006年当時の原油価格の高騰と大気汚染の拡大防止を目的としていた。2014年以降には国内のエタノール需要の拡大に伴いアメリカ産のバイオエタノール(コーン原料)の輸入が始まり、2016年には7.5億リットルのバイオエタノール輸出が行われて当時の中国国内のエタノール需要の25%を賄っていた。
この流れが変わったのは2017年で、中国国内の国内産業とコーン農家保護を名目に燃料用エタノールの輸入関税が5%から30%(当時)に引き上げられた。その後、米中間の貿易戦争に巻き込まれる形でアメリカからの中国向けの輸出は減少し、2019年には輸入量がゼロとなった。
一方で、同年に中国政府は深刻化する大気汚染対策と当時供給過剰に悩んでいたコーン農家の救済策として2020年までにエタノール10%混合燃料の使用を義務付ける政策を発表している。その後、国内のエタノール生産量の増加で国内需要(2020年で43億リットル)を賄ってきたが、2020年に中国国内のコーン供給がひっ迫したため上記の政策は中断に追い込まれた。
中国によるエタノールの輸入再開と今後の見通し
米国産バイオエタノールへの関税は70%に達していたが、2020年の米中の協議の結果45%まで関税が引き下げられた。しかし、関税により中国国内のエタノールより米国産は高価であり、輸入は行われなかった。ところが、2020年だけでも約3割上昇するなど中国国内のコーン価格が上昇を続けたことに加えて、2020年12月10%エタノール混合ガソリン(E10)の供給再開と全国での使用計画の再開を行うように中国政府が指示を出した。これにより中国国内で不足するエタノールを輸入する必要性が生じたが、バイオエタノールを大規模輸出できるのはアメリカしかない。結果、2021年の上半期だけで7.5億リットルの米国産バイオエタノールが輸出され2016年の輸出記録をわずかに更新した。全国供給を行うには更なるエタノール需要の拡大が見込まれているが、既に中国の国内生産は原料となるコーンの供給ひっ迫で限界に達している。
アメリカでは最近のバイオエタノール価格の低迷で工場の停止が相次いでいるとはいえ、アメリカのコーン生産のうち約3割がバイオエタノール生産に使用され、バイオエタノール生産能力は年間おおよそ640億リットル(EIA調べ)となっている。生産量の9割以上が国内で消費され輸出は合計で51億リットル行われれているに過ぎない。中国向けの需要が今後も拡大するなら、アメリカのバイオエタノール向けコーンの消費量が拡大することは間違いない。今後長期にわたってコーン相場を下支えする事は間違いないと言える。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。