会員限定ページへログイン

IDとパスワードは半角英数字で入力してください。
最新情報をすぐに閲覧したい方は有料メルマガ登録(まぐまぐ!)をしてください。

  • ◆ ID
  • ◆ パスワード

コラム
column

2021/06/16

エネルギー速報:アメリカのバイオ燃料の現状(つらつらコラム2021年6月16日)

ダイジェスト

・2020年夏からのコーン価格の上昇でコーン由来のバイオエタノールの価格は4倍
・原料コストの上昇でガソリン精製業者の負担が増加
・負担軽減のため米政府はバイオ燃料混合の緩和を検討中との報道
・緩和の場合コーンの需要が大きく減少する可能性

概要

 前週末にアメリカ政府がバイオ燃料の混合義務を緩和するとの報道があり、今週にかけて穀物市場が下落する場面があった。今日はアメリカのバイオ燃料産業の現状と規制緩和の影響にについて考察する。

バイオ燃料とは

 バイオ燃料は植物の種子や廃棄物などのバイオマスから製造される。産業ベースに乗っているものではコーンやサトウキビ、甜菜など糖分の多い種子や植物から生成されるバイオエタノールが最も有名で、バイオエタノールはガソリンと混合されて乗用車の燃料として使用される。このほか大豆油や廃油などを主原料とするバイオディーゼル(軽油に混合)が広範囲でトラック燃料に使用されているほか、航空燃料や船舶燃料(灯油や軽油に混合)でも使用され始めている。バイオ燃料は石油燃料に含まれる硫黄を含まないため環境汚染が少ない点や、原油資源は少ないが穀物生産が多い国が自国のエネルギー安全保障の一環として始めたことで広まっている。近年ではサステナビリティの観点やCO2排出量削減の観点からも注目されている。

アメリカのバイオ燃料事情

 アメリカでは販売されているガソリンの多くは10%のエタノールを配合したE10と呼ばれる燃料となっており、100%ガソリンしか使用できない一部の車向けを除けば、10%以上のエタノールを含むE15燃料(15%エタノール)から専用エンジンの必要なE85燃料(85%エタノール)までが販売されている。現状でアメリカで販売されているすべての新車のエンジンはE10対応となっており、燃料の使用による不具合が起きることはない。*低温起動時ではエンジン内でのエタノールの気化が困難なためE70(70%エタノール)程度の使用が上限となる。
一方でトラックなどが使用するディーゼルエンジン向けにはバイオディーゼル燃料として大豆油などからの精製物を混合されて使用されている。アメリカでは約5%のバイオ燃料がディーゼル燃料である軽油に混合されて使用されている。

図1 アメリカ、EU、ブラジルのバイオ燃料生産量の推移(出展元 国際環境経済研究所)
左:バイオエタノール 右:バイオディーゼル

 図1に示す通りアメリカでは1980年代に生産が始まり2005年以降に生産が急増した。これはそれまでハイオク燃料に添加物として使用されていたMTBE(メチルtert-ブチルエーテル)の使用が禁止されたこと、原油価格の上昇でエタノール燃料の競争力が高まったこと、アメリカ政府が一定割合以上のバイオ燃料の混合を義務付けたことがあげられる。その後2007年に配合比率がE5(5%)からE10(10%)に規制が強化されるにしたがってエタノールの生産量が増加したが、現在は頭打ちになっている。これはE15以上の燃料には夏季のエタノール気化の問題から安全性の問題がありE10以上の規制強化が進まないこと、燃費向上などでアメリカのガソリン消費量が頭打ちとなったことが要因となっている。それでもエタノール向けのコーン需要が生産量全体の40%程度まで上昇したことに伴い、品薄となったアメリカ産コーンの価格は2005年の1ブッシェル当たり2ドルから3ドル以上に上昇している(図3参照)。

図2 バイオエタノールとバイオディーゼルの価格推移(出展元 EIA)
濃:バイオディーゼル 淡:バイオエタノール
図3 大豆価格(上)とコーン価格(下)(出展元EIA)

バイオ燃焼規制の緩和

 今回のバイオ燃料混合規制の緩和が検討されている背景にはガソリン精製業者が経済的に苦境に陥っていることがあげられる。図2はバイオエタノール価格とバイオディーゼル燃料の価格推移を見たもので2020年には1ガロン当たり0.50ドル以下だった価格が2.00ドル近くまで高騰していることがわかる。図3はコーンと大豆の価格推移を見たもので完全連動していることがわかる。コーンの価格の上昇でエタノールの価格が上昇している。一方でガソリン価格はEIAの調査結果によると2020年6月には1ガロン当たり約2.00ドルだったものが現在約3.00ドルと価格上昇が1.5倍にとどまっている。ガソリン価格に占めるエタノールのコストは混合比率が体積で10%とすると、2020年は0.05ドル(全体の2.5%)だったものが、2021年には4倍の0.20ドル(全体の10%)に達しておりコスト負担が大きくなったがガソリン価格に転嫁できていない状況にある。

まとめ

 コーン価格の上昇によりガソリンに混合されるバイオエタノールの価格が急騰している。原材料費の高騰でガソリンの精製業者が苦境に陥っており、救済のためバイオ燃料の混合規制(10%以上の混合義務)が緩和される可能性があると報じられている。コーン産地の多くは共和党支持のため民主党のバイデン政権にとっては対策が取りやすいという事情があると考えられるが、仮に混合義務がE5まで引き下げられるとするとコーンのエタノール向け需要(2021/2022年シーズンで52億ブッシェル)が半減すると考えられる。アメリカのコーンの生産量は2021/2022年シーズンで150億ブッシェルと推定されるため6分の1に当たる26億ブッシェルが需要先を失うことになる。これはトンに直すと約6500万トンに当たり、ブラジルのサフリナコーンの生産量に匹敵する量が放出されることになる。ここまで大量の需要減になるとは考えにくいが、コーン相場の大幅下落の可能性があるのでバイオ燃料規制に関する続報には注意したい。

 


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。

Contact

お問い合わせ

お問い合わせ、アポイント予約は
こちらからお気軽にご連絡ください。

Register

有料メルマガ登録

有料メルマガ登録をしていただいた方は
鍵マークのついた記事もご購読いただけます。