目次
ダイジェスト
・昨日の原油相場は新型コロナウイルスデルタ株の感染拡大やダウの下落を材料に下落した。原油在庫は減少しているが大きな影響はなかった。
・原油在庫は323万バレル減少
原油生産量は日量1140万バレルで前週から10万バレルの増加
輸出入では輸入量が635万バレル、輸出量が343万バレルで292万バレルの輸入超過
製油所稼働率は0.4%上昇したが、原油処理量は逆に19万バレルの減少
Adjustmentによる在庫調整は今週も増加側で調整量は122万バレル
・ガソリン在庫は69万バレル増加
(生産量+輸入量)>(出荷量+輸出量)で在庫が増加。ガソリン出荷量や輸出量が減少したことで在庫増となった
ガソリン生産量は4万バレル増加、輸入量は18万バレル減少
ガソリン出荷量は10万バレル減少、輸出量は9万バレル減少
・留出油在庫は269万バレル減少
(生産量+輸入量)<(出荷量+輸出量)で在庫が減少。出荷量の増加で在庫が減少
留出油の生産量は4万バレル減少、輸入量は4万バレル減少
留出油の出荷量は59万バレル増加、輸出量は3万バレル減少
・原油と石油製品を合わせた在庫量は18億8350万バレルで前週より350万バレルの減少
・オクラホマ州クッシング在庫は98万バレル減少した3360万バレル、クッシングのタンク容量は約7600万バレルで貯蔵率44.2%
EIA週間統計の総評
日本時間18日23時半にEIAの週間在庫統計が発表された。原油在庫は323万バレルの減少。製油所の稼働率は前週比で0.4%上昇した92.2%となり、原油消費量は前週比で19万バレル減少した1600万バレルとなった。石油製品ではガソリン在庫が69万バレルの増加、留出油在庫は269万バレルの減少、WTI指標原油であるオクラホマ州クッシングの在庫は98万バレル減少した3360万バレルだった。
原油生産は日量1140万バレルで前週から10万バレルの増加、原油輸入量は前週比で4万バレル減少した日量635万バレル、輸出量は日量76万バレル増加した日量343万バレルで輸出入全体としては292万バレルの輸入超過となっている。戦略備蓄(SPR)の放出は今週も0だった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫は18億8350万バレルと前週比で530万バレルの減少だった。
原油と石油製品の在庫(表1)
表1は過去4週間分の結果を示している。原油の在庫は323万バレル減少した4億3550万バレル、ガソリン在庫は69万バレル増加した2億2820万バレル、留出油在庫は269万バレル減少した1億3780万バレル、オクラホマ州クッシングの原油在庫は98万バレル減少した3360万バレルだった。
API統計 | EIA統計今週 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 120減 | 323減 | 44減 | 362増 | 408減 |
ガソリン(万バレル) | 200減 | 69増 | 140減 | 529減 | 225減 |
留出油(万バレル) | 50増 | 269減 | 176増 | 83増 | 308減 |
クッシング在庫(万バレル) | 98減 | 32減 | 54減 | 126減 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれの図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油在庫とガソリン在庫、留出油在庫全てで過去5年間の在庫レンジの中央値より在庫が少なくなっており、特にガソリン在庫は過去5年の在庫レンジより少なくなっている。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)(表2と表3)
表2は原油の生産量と輸出入についてまとめている。原油生産量は日量1140万バレルで前週から10万バレル増加した。原油輸入量は前週比で4万バレル減少した日量635万バレル、輸出量は前週比で76万バレル増加した343万バレルで292万バレルの輸入超過となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計ではAdjustmentとして先週から12万バレル増加した122万バレルが在庫を増加させる形で調整が加わっている。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年 同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1140 | 1130 | 1120 | 1120 | 1127 | 1070 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 635 | 639 | 643 | 650 | 642 | 573 |
原油輸出(万バレル/日) | 243 | 266 | 190 | 248 | 262 | 213 |
Adjustment(万バレル/日) | 122 | 110 | 71 | 7 | 77 | -42 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
輸入国の国別内訳と前週からの増減は表3の通り。今週はカナダやロシアからの輸入が増加した。一方でブラジルやコロンビアからの輸入が大きく減少している。
輸入国 | 輸入量(万バレル/日) | 前週輸入量(万バレル/日) | 増減(万バレル) |
カナダ | 305 | 337 | +32 |
メキシコ | 62 | 60 | +2 |
サウジアラビア | 36 | 30 | +6 |
イラク | 15 | 12 | +3 |
コロンビア | 14 | 29 | -15 |
エクアドル | 19 | 15 | +4 |
ナイジェリア | 21 | 15 | +6 |
ロシア | 50 | 19 | +31 |
ブラジル | 7 | 39 | -32 |
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率(表4)
表4は主要石油製品の生産と輸入(供給)についてまとめたものとなる。製油所稼働率は前週から0.4%上昇した92.2%となり、製油所への原油投入量は19万バレル減少した日量1600万バレルとなった。石油製品の生産ではガソリン生産は前週から4万バレル増加した日量1000万バレル、ジェット燃料生産は前週から4万バレル増加した日量145万バレル、留出油生産は前週から4万バレル減少した日量484万バレルだった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度 同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1600 | 1619 | 1592 | 1587 | 1600 | 1465 |
製油所稼働率(%) | 92.2 | 91.8 | 91.3 | 91.1 | 91.4 | 81.0 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1000 | 996 | 1015 | 977 | 997 | 940 |
ガソリン輸入(万バレル/日) | 74 | 92 | 84 | 90 | 85 | 55 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 145 | 141 | 143 | 144 | 143 | 93 |
ジェット燃料輸入(万バレル/日) | 32 | 2 | 5 | 27 | 17 | 47 |
留出油生産(万バレル/日) | 484 | 488 | 487 | 473 | 483 | 474 |
留出油輸入(万バレル/日) | 14 | 18 | 16 | 18 | 16 | 4 |
石油製品供給(日量、需要)(表5)
表5は主要石油製品の出荷量(需要)と輸出量の内訳一覧となる。ガソリン出荷量は前週比で10万バレル減少した日量933万バレル、ジェット燃料の出荷量は40万バレルの増加した日量167万バレル、留出油の出荷量は前週比59万バレル増加した日量432万バレルとなった。
石油製品 出荷量(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週 平均 | 前年 同時期 |
ガソリン出荷(万バレル/日) | 933 | 943 | 977 | 932 | 946 | 863 |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 65 | 74 | 62 | 71 | 68 | 80 |
ジェット燃料出荷(万バレル/日) | 167 | 127 | 164 | 165 | 156 | 98 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 9 | 22 | 10 | 6 | 11 | 5 |
留出油出荷(万バレル/日) | 432 | 373 | 361 | 435 | 400 | 325 |
留出油輸出(万バレル/日) | 105 | 108 | 130 | 101 | 111 | 151 |
石油製品需給(日量)
原油の需要側では製油所稼働率が前週から0.4%上昇した92.2%となり、原油消費量は前週より19万バレル減少した日量1600万バレルとなった。
主要な石油製品ではガソリン生産量が前週比で4万バレル増加した日量1000万バレル、輸入量は18万バレル減少した日量74万バレルだった。ガソリンの出荷量は前週比で10万バレル減少した日量933万バレル、輸出量は前週から9万バレル減少した日量65万バレルだった。ガソリンの出荷量や輸出量の減少でガソリン在庫が増加となった。ガソリン在庫は69万バレルの増加だった。
次に留出油は生産量が前週から4万バレル減少した日量484万バレル、輸入量は前週から4万バレル減少した日量14万バレルだった。留出油の出荷量は前週から59万バレルの増加となる日量432万バレル、輸出量は3万バレル減少した日量105万バレルとなった。出荷量の増加で269万バレルの在庫減少となった。
ジェット燃料生産量は前週から4万バレル増加した145万バレル、出荷量は前週比で40万バレル増加した167万バレルとなった。
石油製品全体の出荷量(需要)は前週比で195万バレル増加した日量2146万バレルとなった。原油在庫が323万バレル減少、ガソリン在庫が69万バレル増加、留出油の在庫が269万バレル減少となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は前週比で530万バレル減少した18億8350万バレルとなった。
石油製品価格(表6と表7)
表6はニューヨーク港渡しの石油製品のスポット卸売価格となる。今週の燃料の卸価格はガソリンが横ばい、ディーゼル燃料は約1セントの下落となった。原油価格は約0.10ドル下落とほぼ横ばいだった。
スポット卸売価格 (ニューヨーク港渡し) | 8/13 | 8/6 | 7/30 | 7/16 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 2.263 | 2.265 | 2.359 | 2.243 | 1.234 |
ディーゼル燃料 (ドル/ガロン) | 2.063 | 2.076 | 2.191 | 2.102 | 1.224 |
原油 (ドル/バレル) | 68.36 | 68.26 | 73.93 | 71.76 | 42.05 |
表7は全米の石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計した結果となる。今週のガソリン小売価格はほぼ横ばい、ディーゼル燃料の小売価格は約1セントの下落だった。レギュラーガソリン価格は1ガロン当たり3.100ドルを超えた状態が続いている。
小売価格 | 8/16 | 8/9 | 8/2 | 7/26 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.174 | 3.172 | 3.159 | 3.136 | 2.166 |
中間グレードガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.629 | 3.624 | 3.607 | 3.584 | 2.577 |
プレミアムガソリン価格 (ドル/ガロン) | 3.882 | 3.874 | 3.861 | 3.829 | 2.829 |
ディーゼル燃料価格 (ドル/ガロン) | 3.356 | 3.364 | 3.367 | 3.342 | 2.427 |
今後の見通し
アメリカの原油生産量は日量1140万バレルと前週から10万バレルの増加。需要面では製油所稼働率が前週から0.4%上昇した92.2%となったが、原油消費量は逆に19万バレル減少した日量1600万バレルだった。夏の需要期で製油所の稼働率は90%超が続いている。原油輸入量は前週比で日量4万バレル減少した日量635万バレル、輸出量が76万バレル増加した日量343万バレルで、日量292万バレルの輸入超過となっている。原油輸出の増加で原油在庫は323万バレルの在庫減少となった。
ガソリンは生産量が4万バレルの増加、ガソリン出荷量は10万バレルの減少、ガソリン輸入量は18万バレルの減少、ガソリン輸出量は9万バレルの減少となった。出荷量や輸出量の減少したため、9万バレルの在庫増加となった。留出油は生産量が4万バレルの減少、輸入量が4万バレルの減少、出荷量が59万バレルの増加、輸出量は3万バレルの減少となった。出荷量の増加で269万バレルの在庫減少となった。燃料価格はガソリン卸売価格が横ばい、ディーゼル燃料卸売価格が約1セントの下落、小売価格はガソリンが横ばい、ディーゼル燃料は約1セントの下落となった。
全ての石油製品の出荷量は日量195万バレル増加した2146万バレル、全ての石油製品と原油を合わせた在庫は350万バレル減少した18億8530万バレルとなった。
原油相場は株安や世界各地で新型コロナウイルスのデルタ株の感染が拡大していることによる原油需要の先行き不透明感を材料に売られ、62ドル台後半まで下落した。アメリカで1兆ドル規模のインフラ投資法案の進展が見られれば、買いが入る可能性があるが、長期的な下落トレンドへ入った可能性があるので、今後の動向に注目したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。