原油価格の暴落と天然ガス(つらつらコラム3月10日)

 

天然ガス相場の急伸

昨日の天然ガス相場は、日本時間午後に1998年以来の安値を記録したが、日付が変わる頃から急伸して1.800ドルを回復している。支援材料の一つとして原油生産の減少に伴う付随ガスの減少が挙げられていたが、今日は付随ガスを中心に天然ガスと原油の生産上の関係を見ていこう。まずは原油の採算ラインと、下落理由について説明する。

原油相場の急落の影響とシェールオイルの採算ライン

新型コロナウイルスの流行で移動や生産が制限されているため原油需要が減少している。先週これを受けて、追加の協調減産を行うためOPECプラスが会合を開いたが、ロシアとサウジアラビアの立場の違いから交渉が決裂し、追加の減産が行われないばかりか、現在の協調減産の期限が3月に切れることが確定した。更に、ロシアとサウジアラビアがともに増産の方針であることから、週明けの原油市場は1991年以来となる下落率で急落し、一時1バレル30ドルを大きく割り込んだ。現在の原油価格は33ドル付近での値動きとなっているが極めて低い水準にある。図1はシェールオイルの生産コストを示した図で、シェールオイルの採算ラインは25から90ドルという数字が挙げられている。つまり、現在の原油価格はほぼ採算ラインの下限にある。

図1 原油生産コスト比較(出展元 JOGMEC)
付随ガス(associated gas)

2018年末のアメリカ産天然ガスの生産(1日97.5Bcf)の内、12bcfはシェールオイルの付随ガスとしてパーミヤン、バッケン、イーグルフォード、ニオブララ、アナダルコの各地域のシェールオイルの油井から生産された(図2がその内訳となる)。アメリカ国内の定義として、井戸から産出される天然ガスと原油の比率を取り、これが6000cf/bblの比率を上回った場合はガス井、下回った場合は油井と定義される。

図2 シェールオイル生産地域における付随天然ガスの生産量の推移
(出展元 EIA)

ガス井から採掘された天然ガスを非付随ガスと呼び、油井から採掘された天然ガスを付随ガスと呼ぶが本質的には同様のガスとなる。図3は天然ガス生産(黒線)に占める付随ガス(淡)と非付随ガス(濃)のシェアの割合を見たもので、左図はアメリカ全体の天然ガスに占める割合を示し、右図は先に上げた主要シェールオイル地帯での割合を示している。どちらの図でも天然ガスの多くは非付随ガスとして生産されているということと、近年付随ガスの生産が伸びていることがわかる。つまり、原油価格の下落でこれらの油井が生産を停止することになれば、原油だけでなく付随ガスの生産も止まり、アメリカ全体で大体12bcf(2018年実績)の天然ガスの生産が止まることになる。先週のデータによるとアメリカの天然ガス供給は日量約100bcf、消費は最新データで日量約110bcfなので、12bcfは非常に大きな数字といえる。

図3 天然ガス生産量(黒線)と付随ガスと非付随ガスのシェア割合
(出展元 EIA)
まとめと今後の見通し

アメリカのシェールオイルの原油生産からは副産物として天然ガスの生産が行われており、その量は全体の10%を超えている。今回の原油の下落はシェールオイルの生産に大きな影響を与えると考えられる。情報筋によると、サウジアラビアはロシアに損害を与えるために原油の価格を下げることを決定したといわれている。一方のロシアは、先日ロシアから欧州(ドイツ)へ向けて建設中の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」についてアメリカが制裁を加えたことへの報復として原油価格の下落を決定したとも伝えられている。総合すると、今回の原油価格の下落は新型コロナウイルスの流行による原油価格下落を最大限に利用したアメリカのシェール産業潰しの続編となると考えられる。そして、その副産物として今後天然ガスの価格には生産減からの上昇圧力がかかっていくと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。