原油増産レース(つらつら分析3月12日)

OPECプラスの崩壊と増産レースの始まり

新型コロナウイルスの流行による原油需要の減少見通しから原油価格は金融危機以来の大幅安となり、現在は1バレル30ドル台で推移している。 先週、OPECプラスは追加の協調減産を行うための会合を開いたが、ロシアとサウジアラビアの立場の違いから交渉が決裂し、協調減産自体が終わりを迎えている。今週には、ロシアとサウジアラビアが増産の方針を表明したほか、今日UAEも増産の方針を示し、シェア獲得のための増産レースが始まっている。今日は、OPECプラス各国の増産余地について調べて、増産今後の見通しについて述べておきたい。

2016年の協調減産開始前の生産量

OPECとロシア、メキシコ、カザフスタンなどがOPECプラスの枠組みを作り、2001年以来となる協調減産を始めたときの生産量は以下の表の通りだった。

表1 OPECとOPEC非加盟国 原油生産量推移(出展元 OPEC, EIA)

2015年実績概算(万バレル/日)2019年実績概算(万バレル/日)2020年推計概算(1月時点)(万バレル/日)
OPEC加盟国380030002900
OPEC非加盟国(OPECプラス参加)180016001600
OPEC非加盟国(OPECプラス非参加)360055005750
世界需要92001010010100

協調減産開始の前の年の2015年には、OPEC加盟国の生産量が約3800万バレル/日、OPECプラスに参加した非OPEC加盟国の生産量が約1800万バレル/日、世界需要は約9200万/日バレルだった。その後、2019年の時点ではOPEC加盟国の生産量は約2950万バレル/日、OPECプラス参加の非OPEC加盟国側が約1600万バレルと減産がおこなわれている(OPECには経済制裁中のイランとベネズエラ、内戦中のリビアの産油量約400万/日バレルを含む)。一方で世界需要は約1億100万バレル/日まで拡大している。
2016年以来、OPECプラス参加国が減産を続ける一方で、アメリカやブラジルなどOPECプラス非参加国が増産を続けており、約2000万バレル/日まで生産量を伸ばしており、かつて世界の原油生産の6割強を占めていたOPECプラスの生産量は半分を割り込み、影響力が低下している。

減産枠

協調減産を行っていた主な国を挙げると、

以上5か国となり、この5か国で約130万バレル/日とOPECプラスの総減産量の75%に当たる。

2015年の生産高による増産余力推計とまとめ

協調減産が終了した場合にどこまで生産が増加する余力があるのかを推定するために2015年と2020年1月の生産量を比較してみたのが下表となる。

表2 OPECプラス主要5か国の生産量推移(出展元 OPEC, IEA, EIA)

2015年平均(万バレル/日)2020年1月(万バレル/日)
イラク452450
クウェート302266
サウジアラビア1195973
UAE393303
ロシア11251038
アメリカ(参考)9201300

イラク戦争からの再建途上にあったイラクを除けば、2015年の生産量より現在の生産量は低く、生産増加余力があることがわかる。最も少ないクウェートで50万バレル/日、サウジアラビア220万バレル/日、UAEが100万バレル/日、ロシア90万バレル/日、合計460万バレル/日という数字が得られる。加えてサウジアラビアやUAEでは更に生産能力拡大を行いサウジアラビアは1300万バレル/日、UEAは500万バレル/日まで増強すると報道されている。

サウジアラビアとUAE以外はまだ増産を表明していないが、他の国も遅かれ早かれ増産に追い込まれるため、500万バレル/日以上の原油が追加供給されると考えられる。一方で昨日発表されたOPECの最新推計では世界の原油需要は前月の推計10073万バレル/日に対して100万バレル引き下げられ、9973万バレル/日となる。供給増加と需要減少から原油価格の更なる大幅下落が予想される。例えば、今日発表されたアメリカ欧州便の全面運行停止では、おおよそ30万バレル/日の航空燃料需要が失われる。このようなコロナウイルスによる需要減が今後も拡大することも考えると、1バレル20ドル台前半へ下落すると予想する。 一方で、アメリカの石油会社は大手のオクシデンタル石油やマラソン石油がすでに生産削減を発表しており、今後アメリカが産油量世界一から再び滑り落ちることだけは間違いない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。