アルゼンチンの輸出関税引き上げ(つらつら分析3月2日)

コロナウイルスの影響による需要減少懸念が主な要因になって前週の大豆相場は値を下げたが、その中でもアルゼンチンの輸出関税の引き上げ見通しが支援材料となって上昇する場面が見られた。今日はこのアルゼンチンの輸出関税についてどのような影響があるのかを述べてみたい。

アルゼンチンの輸出関税について

一般的に関税は国内産業の保護を目的に国外からの輸入品に対して課される税金となっている。しかし、例外的に国家収入を得るために輸出品に対して関税を課している国も存在する。対象の多くは需要の高い農産物や資源などで国内経済にはほとんど影響を与えずに国家財政に寄与できるメリットがある。アルゼンチンでは、伝統的に農産物の輸出に関税をかけており、2015年の時点で、コーンに20%、小麦に23%、大豆に35%の関税がかけられていた。2015年に誕生したマクリ新政権は、アルゼンチン産農産物の輸出拡大のためにこれらの輸出関税を引き下げてアルゼンチン産の農産物のシェア引き上げに成功した(図1)。しかし、2019年の選挙でフェルナンデス新大統領へ再度政権交代が行われ、就任直後の改正で輸出関税が引き上げられた。加えて、先週アルゼンチンの農務省が輸出登録の延期を通達、これは更なる関税引き上げの前兆と捉えられている。

輸出関税のインパクト
argentina-corn-acres-exports
図1 アルゼンチンのコーンの作付面積(黒線)、輸出シェア(緑線)の推移 、縦線は輸出関税の変更時期 (出展元 FBN)

図1はアルゼンチンのコーンの栽培面積と世界のコーン輸出に占めるアルゼンチン産の割合を示している2015年に輸出関税が引き下げられたためアルゼンチンではコーンの作付面積が350万から600万ヘクタールにまで上昇(図1黒線)し、コーン輸出に占めるシェアも2014/2015シーズンの13%付近から2019/2020シーズンの20%付近まで上昇した(図1緑線)。

argentina-soybean-harvest
図2 アルゼンチンの大豆の作付面積(緑線)の推移、縦線は輸出関税の変更時期
(出展元 FBN)

図2は大豆の作付面積の推移で2013年から15年の間コーンの輸出関税が高かったため、相対的に税金の安い大豆への転作が進んでいたが、2015年の関税引き下げによって税金の安くなったコーンの作付けが増えた影響で減少に転じている。
昨年末のコーンの輸出関税の引き上げ(+12%)でアルゼンチンの農家がコーン輸出への意欲を失い、引き上げ以前の水準まで生産が落ち込むとすれば、アルゼンチンがコーン輸出に占める世界シェアの内約7%が宙に浮くことになり、アメリカ等他の輸出国への利益があると予想されている。一方の大豆については、関税引き上げは相対的に大豆の引き上げ幅が小さいため、大豆の作付面積への増加影響があると考えられる。ただし、大豆と同時に大豆ミールや大豆油に対する関税が18%から30%へ引き上げられたため、アルゼンチンの大豆の作付け自体にブレーキがかかり、他の輸出国の競争力が高まると予想される。

まとめ

今日はアルゼンチンの昨年末の輸出税の引き上げと先週舞い込んできた輸出登録の制限について解説した。昨年末の輸出税の引き上げだけでも、世界有数の輸出国であるアルゼンチンのコーンと大豆の輸出にブレーキがかかっている。これ以上の税金の引き上げがあれば、今シーズンのアメリカの大豆やコーンの生産や価格にもプラスの影響があると筆者は予想する。今後のアルゼンチンからの続報に注意したい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。