天然ガス在庫減少に歯止め(つらつら分析3月20日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

表1 地域別天然ガス在庫(出展元EIA)

今週の在庫減少量は-9Bcfと非常に小さな値となった。図1は過去2年間の天然ガス在庫の変動を見たもので、冬の需要期に天然ガス在庫が減少していることが分かるが、今週は在庫の減少に歯止めがかかっており冬の需要期が終わったと言える。表1は在庫の増減の内訳を見たものだが需要地の東部(-14Bcf)や中西部(-17Bcf)で在庫が減少しているものの、産地を抱える南部(+23Bcf)で大きく在庫が積み増されている。全体的な在庫水準は昨年度に比べて+176%と高い水準にあり、過去5年の平均と比べても116%の在庫量となった。

天然ガス需要と供給

今週の天然ガスの供給についてまとめたものが表2となる。天然ガスの生産が94.5Bcfと過去最高水準の値となっていることが分かるが。

表2 部門別天然ガス供給(出展元EIA)

次に需要側だが、表3は部門別に天然ガス消費をまとめたもので、前週は暖かな日が続いていたという情報を補足すると、一般用住宅需要が40.3Bcfと低かったが、今週は43.0Bcfと前週より増加している理由が寒さによる暖房用需要であることが理解できる。他の部門の値は大きく変動してはいない。

表3 部門別天然ガス需要先(出展元EIA)

今後の需要と供給見通し

図2は昨年2019年までの天然ガス需要の推移を見たもので、2019年も順調に需要が伸びていること、特に発電セクタで需要の伸びが見えていることが分かる。

図2 アメリカの天然ガス国内消費量(出展元 EIA)

現在、新型コロナウイルスの流行によって、天然ガスの価格も昨日の終値時点で18年ぶりとなる安値圏にある。天然ガス生産量が伸びを見せ続けており、供給サイドは増加しているが、需要サイドを見ると足元の需要は堅調に推移している。ただし、天然ガス在庫は過去5年平均より高い状態で止まっており、今年の冬は気温が下がらなかったことを考えても、天然ガス余りの状況が続いている。

直近の状況と見通し

アメリカの天然ガスの多くはシェールガス由来で、シェールガスの採算性は同時に算出されるシェールオイルの価格に左右される。現在原油価格は20ドル台に低迷しており多くの採掘業者がリストラを始めている。図3はノースダコタとコロラドでシェール採掘を行っているホワイティング石油の債券の価格の推移で、価格は2020年に入って急落してることが分かる。

Line chart of $770m bond maturing in March 2021 showing Whiting Petroleum debt plunges
図3 原油会社の社債価格の推移(出展元: フィナンシャルタイムズ)

コンサルティング会社によれば、アメリカのシェール(オイル、ガス含む)生産の費用分岐点は50ドル、掘削後に仕上げを行っていない井戸を使っても25ドルが必要だとしている。このことは現在の原油価格は探査に資金を割かず、手持ちの井戸だけを使っても採算が取れないことを意味している。法律事務所Haynes&Booneによる調査によれば、まだ原油価格が1バレル50ドル前後であった2018年の石油会社の倒産は28社、債務は130億ドル、昨年で42社260億ドルへ増加している。1月以降原油価格が約3分の1となったため、今年の倒産数は加速すると予想されいる。ある推計では原油価格が30から35ドルで推移した場合(おおよそ2015年当時の価格)、業者の倒産と生産削減で、日量200万から300万バレルの生産が減少すると試算されている。この場合、中長期的(約18か月後)には、生産の減少で需給と価格は改善の方向へ向かうと考えられる。
ただし、サウジアラビアとロシアが過剰供給を行い、1バレル20ドル台が続いた場合にはシェールはほとんど採算がとれる状態でなくなり、大幅(現在の800万バレルのほぼ全て)な生産減が起きると考えられる。新型コロナウイルスの感染が収束すれば現在落ち込んでいる原油需要が回復すると考えられるため、退場したシェールの分は価格が上昇する。今後半年の原油価格が1バレル30-35ドルの水準だった場合、今から1年半後に供給が日量300万バレル不足することになる。この場合には少なくとも今回の値下がり前の水準である1バレル50ドル程度となると考えている。向こう半年が、1バレル20ドルの場合には、シェール産業がほぼ淘汰されるなら最大日量800万バレルの供給不足が生じる。この場合、供給不足がサウジアラビアとロシアの増産で穴埋めできる分を大きく上回るため、1バレル70ドル程度へ原油価格が一時的に上昇するのではないかと筆者は考えている。以上は原油価格をベースにしたシェールオイルの試算だが、天然ガスについても同様にシェール生産削減で原油価格と同等の想定では2015年当時の4-5ドルへ価格は上昇していくのではないか考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。