エタノール向けコーン需要の減少(つらつらコラム3月23日)

始めに

先週のコーン相場は、エタノール向け需要の減少見通しから週で約19セントの下落となった。今日はアメリカのエタノール産業について述べておきたい。

エタノール向けコーン需要
図1 アメリカの燃料向けエタノール生産量の推移(出展元 EIAを筆者が加工)

アメリカでは2001年の同時多発テロ時の原油価格の高騰による混乱と、10年以上過剰生産が続いたため価格低迷に喘ぐコーン農家の救済の一石二鳥を狙って、導入されたのがコーン由来のエタノール生産であった。2007年に成立したエネルギー自立・安全保障法では2022年までにすべての燃料にバイオ燃料(エタノールなど)を混合することが義務付けられた。この制度により、コーン価格の下支えと自発的な供給過剰解消による政府補助金の削減が確かに達成された。図1に示す燃料向けバイオエタノール産業の成長によって、図2のように2004/2005年には全体の1割以下であったエタノール向けコーン需要は2014/2015年には4割と急速に成長した。

図2 2004年から15年までのコーンの需要の内訳(出展元 農林水産省)

しかし2012年のシェール革命以来の原油価格の低下と、燃費向上によるガソリン需要の低下によって、その後は横ばいとなり、2019/2020年も約4割の水準にとどまっている。アメリカ政府はコーン農家の支援の一環としてバイオエタノールの配合比率義務を現在のE10(10%配合)からE15(15%配合)への変更を進めようとしているが、石油産業との綱引きもあり、うまく進んでいないのが現状となっている。

新型コロナウイルスの影響と今後の見通し

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で原油価格が下落した結果、エタノール価格は2003年以来最安値(3月10日現在で1ガロン当たり1ドルの水準)を記録している。エタノール需要が配合先のガソリン需要の低下と、バイオ燃料自体の競争力の低下が要因となっている。エタノール工場は在庫の増加と財務状況の悪化から工場の閉鎖や休業が取りざたされる状況にある。原料となるコーンUSDAによる2019/2020年シーズンのエタノール向け需要では54.25億ブッシェルとなっているが、このうち1億7千万ブッシェルが新型コロナウイルス対策の旅行制限によるガソリン需要の低下で今後2か月の間に失われる(単純には年間20億ブッシェルの需要が失われる計算)と予測されている。感染の拡大が続いているため影響がどこまで増えるかを見積もることは難しいものの、ガソリン需要が15%から60%減少するとの予測もある。このような状況が続き、コーン由来のエタノールの需要低下からエタノール工場が閉鎖されると、工場1か所当たりコーン相場が20セント下落するとの予想もある。アメリカだけでなく、ブラジルでもコーン由来のバイオエタノール工場の不振が伝えられており、今後、中国向けの大口輸出がない限り、バイオエタノール産業ひいてはコーン相場にとっての冬の時代が続きそうだ。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。