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南米での非常事態宣言
新型コロナウイルスが南米でも感染が拡大している。アルゼンチン政府は3月15日に非常事態宣言、3月19日に月末までの外出禁止令を発令し、やや遅れてブラジル政府が3月20日に非常事態宣言、翌3月21日に感染の拡大するサンパウロ州に2週間の外出禁止令を発令した。そのほかのペルー(3月18日)やコロンビア(3月17日)、ベネズエラ(3月17日)と言った国々も同様の措置を取っている。これによって、物流を除く国境閉鎖、不要不急の外出禁止、医療や物流、食品など以外の生活に直接の必要ない産業の閉鎖が行われている。
農作物輸出遅延
ブラジルでは非常事態宣言に伴い港湾当局の政府職員も在宅勤務を命じられたため、サントスやパラナグアと言った主要な穀物輸出港で港湾の検査体制が大幅に縮小された。当然のことながら通関遅延が発生し、最盛期を迎えつつある大豆の輸出にブレーキがかかっている。
アルゼンチンでは河川港は機能しているものの、農場から港までのようなトラック輸送が制限(運転手が安全であることの証明が必要)されつつあり、原料の大豆不足で大豆かす生産が影響を受けている他、収穫された大豆や生産された大豆かすの港への輸送が滞っている。加えて、港でも穀物検査官や港湾労働者の保護のため貨物船乗組員の非感染を証明することなどが組合から求められている。港湾当局との協議の後、現在は主要な大豆輸出港は再開しているが、組合の要求は続いており、ストライキなどの可能もあると伝わっている。
天候
下の図1、図2はそれぞれアルゼンチンとブラジルの降水量の分布を見たものとなる。

今週も主要産地である、ブエノス・アイレス州より北側の広い範囲でまとまった雨が降り、乾燥していたこれらの地域のコーンや大豆にとって非常に有益な雨となった。ただし、雨が遅かったため生育状態を大幅に改善するには至らなかったとも報告されている。アルゼンチンのコーンは全体の11%の収穫が完了しており、前年の9%より収穫が進んでいる。今後は気温が再び低下し、乾燥が強まりそうだ。

ブラジルでは乾燥していたマトグロッソ・ド・スル州とより南側のパラナ州やリオグランデ・ド・スル州の一部で雨が降ったが、残りの地域は引き続き乾燥している。ブラジル全体で大豆の66%の収穫が終了している。個別ではパラナ州で大豆の75%とコーンの67%、リオグランデ・ド・スル州で大豆の18%、コーンの63%が収穫されているが、雨が必要な状況となっている。次のブラジルの2019/2020年シーズンの大豆の収穫量予測は4月1週目に発表される予定。
今後の予想
南米の天候状況は先週と大きく変わっておらず、ブラジルとアルゼンチンの一部の地域で乾燥が問題となっている。南米2国の大豆とコーンの収穫は進んでいるものの、新型コロナウイルスの感染拡大によって大豆とコーン輸出に大きくブレーキがかかった。今後の需要は中国次第で読み切れないが、南米の乾燥による生産減、コロナウイルスによる生産減と輸送遅延、輸出量の減少と言った要因で、アメリカ産への期待が高まるため、低迷していた相場の回復が期待できると考えている。
サバクトビバッタ続報
先日のコラムでお伝えしたサバクトビバッタの続報を紹介する。新しい群れが図3に示すようにアフリカの角(エチオピア、ソマリア、ケニア)で増殖中となっており、穀物への脅威がさらに拡大している。他にもイラン南部やパキスタンで新しい群れが確認されている。図4のようにパキスタンのバルチスタン地方では繁殖が進んでいる他、ケニアでも4月の1週目には産卵シーズンへ入るため、予断を許さない状況となっている。ただし、いまだ中国へ向かう動きは見られていない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。