アメリカの2019年の原油生産(つらつら分析3月3日)

はじめに

EIAが2019年のアメリカ産原油の生産量についてのまとめを公開した。今日は報告から数字を拾い出して解説してみたい。

2019年のアメリカの産油量

図1は1940年からのアメリカの産油量の推移を示した図で、これまでは1970年に1日当たり964万バレルが最多生産記録だった。以降、資源枯渇などで漸減してきたが、2010年以来シェール革命によって原油生産量が増加に転じている。2019年の1日当たりの産油量は2018年と比べて、124万バレル増加した1223万バレルとなり、過去最高記録を更新した。なお、2019年11月の時点での1日当たりの産油量は1286万バレルとなっている。ただし、生産増加率では2017-2018年間の17%に対し2018-2019年は11%と下回っており、生産量の増加にはブレーキがかかりつつある。

U.S. crude oil production
図1 1940年から2019年までのアメリカ産油量の推移

次にアメリカの原油がどこで生産されているかを地域別に見たものが図2となる。テキサス州が全国の41%の生産を占めていて、2019年12月の時点で1日当たりの産油量は535万バレルに達している。2010年以来テキサス州の産油量は333%の増加となっている。 次いでニューメキシコ、ノースダコタ、コロラド、オクラホマ、メキシコ湾岸と続く。これら増加した原油の多くはタイトオイル(シェールオイル、ビチューメン=天然アスファルト、オイルサンドなど)と呼ばれる原油由来となっており、メキシコ湾岸のみ深海海底油田が主力となる。

U.S. crude oil production by state
図2 原油生産量の地域別内訳(左)、2018年から19年における主要生産地域の生産増加率(右)
出展元(EIA)

図3は地域別の原油生産量の推移で、かつて多くの生産が行われていたルイジアナやカルフォルニアでの生産落ち込みが目立っている。テキサス州も古くから産油地として知られていたが、1970年以降は資源枯渇でいったんピークの3割まで落ち込み、その後のシェールオイルの開発で息を吹き返している(オクラホマなども同様)。在来型の油田が主力のカルフォルニアやアラスカでは生産増加率がマイナスとなって久しい。

U.S. crude oil production by state or region
図3 地域別産油量推移(出展元 EIA)
*カッコ内の数字は最大生産を達成した年
シェールオイル生産コスト
図4 原油生産コスト比較(出展元 JOGMEC)

上で見てきた通り、アメリカの原油生産量は増加しているが弱点もある。図4は生産方法別の原油生産コストを縦軸に資源量を横軸に取ったもので、シェールオイルは在来型原油より生産コストが高い。ただし、実態がいくらなのかは分かりにくく、複数の推計があるが、おおよそ1バレル当たり50から100ドルあるいは40から90ドルとされている。また、特に条件の良い場所では25-45ドルと紹介されている。2020年3月2日現在の原油先物価格は約48ドルで、この価格では条件の良い場所以外は生産コストを賄うことが困難になりつつあるといって良い。

まとめ

コロナウイルスの世界的流行による需要減予測と、OPEC外の増産による供給のだぶつきが重なり、2018年末以来となる原油価格は50ドルの水準まで下落している。原油価格の低迷は経済にとって朗報である反面、生産コストをペイ出来ないことから、新規開発の停滞や不採算業者の倒産となって影響が出始めている。2015年からの原油価格の低迷では16年までの1年間で約60社が倒産、負債総額200億ドルに達した。その後の原油価格の持ち直しで倒産は減少したが、2019年に入って再度、倒産が増加しており2019年だけで42社が倒産している。今後も原油価格の下落で倒産が増えることが考えられ、企業の淘汰と新規開発の停滞が続けば、アメリカの原油生産が減少に転じることになるのかもしれない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。