エネルギー速報:17年ぶりの原油安値(つらつらコラム3月30日)

17年ぶりの安値

今日、原油先物相場は寄付きで17年ぶりの安値に急落した。新型コロナウイルス感染拡大を受けて世界各地で都市閉鎖(ロックアウト)が行われたことなどで、燃料需要が落ち込み、原油が供給過剰となっていることに加えて、3月のOPECプラスの会合が決裂したことで、これまで続いていた日量210万バレルの協調減産が明日終了し、明後日以後は産油国各国が増産体制へ入ることが背景となっている。また、先週末にサウジアラビアが減産についてロシアと協議する意思はないと報じられたこと、ロシアの副エネルギー相が現在の価格は不愉快だが大惨事ではないと発言したと報じられたことが、サウジアラビア・ロシア両国が、減産を再開するつもりはないというシグナルとして市場に受け取られている。

新型コロナウイルスの感染が始まる前、世界の原油需要は1億バレル/日だった。IEAのビロル事務局長は、感染拡大防止のためのロックダウンで第1四半期(1月から3月)に2000万バレル/日の原油需要が失われる可能性があると3月26日に述べた。3月26日以後も状況の悪化が続いているため、4月からの第2四半期には需要がさらに減少する見通しが強まっている。この需要の減少によって市場で原油がだぶつき始めており、今後数か月で1億バレル規模の原油が貯蔵に回るとの予測もされている。かつて、2016年に供給過剰に陥った際には陸上の貯蔵タンクが溢れたため、原油を満載したタンカーが港のあちこちに係留されるという光景が見られたそうだが、今回も同様の事態が起こると予想されている。

今日、WTIの先物価格は20ドル前後、北海ブレント原油先物価格も25ドル前後まで下落しているが、現物についてもサウジアラビアがロシアとのシェア争いで大幅値引きを行うと発表するなど、値引き合戦となっており急落している。ロイターによるとサウジアラビアは欧州向けのアラビアンライト原油を1バレル16ドル、ロシアはウラル原油を同18ドルで販売している。この他の国でも販売価格が下落しており、通常は先物価格より高価格で取引される軽質・低硫黄原油で特に値下がり幅が大きくなっている。軽質・低硫黄原油はガソリンやジェット燃料を精製するのに適しているが、品質管理や添加物などのため精製後の製品の長期保存が難しいという理由で値下がりしている。発電用などに使用される重質原油は長期保存が可能だが、こちらも下落傾向にあり、ベネズエラ産メレイ原油は先週末に1バレル8ドルで取引されたと報じられている。

今後の見通し

現在、原油市場の希望の星は中国向け需要のみの状況になっている。中国は新型コロナウイルスの発信地だが、すでに感染者数と死者数でピークアウトが報じられており、都市間交通や工場の操業再開、武漢地域の封鎖が来月4月8日には解かれると報道されている。この他、3月20日には中国沿岸から84隻のタンカーがペルシア湾へ向かったとニューズウィークが報じている。これらの船舶は割安となった原油を大量(約1億バレル)に買い込むとされている。

触れたとおり、油種によっては引き取り手のいないだぶつきが始まっている。今日のWTI価格は20ドルまで下落しているが、この状況にもかかわらず来月から増産が本格的に始まる。需要の取り合いでなりふり構わない値引きが行われて、原油価格にはなお一層の下落圧力がかかると考えられ、20ドルを割り込む状況がしばらく続くだろう。この状況を脱するにはロシアとサウジアラビアが減産に同意する(できればアメリカも含めた形で)ことが必要だと考えられるが、その気配はまだ見えない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。