アメリカの2019年の天然ガス生産と需要(つらつら分析3月4日)

はじめに

EIAが2019年のアメリカ天然ガス消費についてのまとめを公開した。今日は報告から消費量と電力部門の消費量についての詳細、別な資料から生産量と輸出入量の数字を拾い出して解説したい。

2019年のアメリカの天然ガス消費量

図1は1910年からのアメリカの天然ガス消費の推移を示した図で、2010年以来ほぼ順調に増大しており、2019年は2018年と比べて約3%増加し、1日当たり85Bcfを記録した。主な用途は火力発電用で1日当たり31Bcf、全体の36%を消費している。2019年は前年比で発電用が1日当たり2Bcf増大した他、メキシコへの輸出が0.5Bcf、LNG輸出用が2.0Bcf増大している。

annual U.S. consumption of natural gas by sector
図1 2010年から2019年までのアメリカの天然ガス消費量の推移
発電部門での消費量の増加

図2は2010年から19年にかけての発電量の推移を見たもので、2016年に天然ガスが年当たりの発電総量で石炭を抜いて以来、トップを占めている。2019年の実績では、総発電量の38%を占めており、以下石炭、原子力と続いている。天然ガス価格の下落を主な要因として、老朽化した石炭発電所は年5%のペースで天然ガス発電所へ置き換えられ続けている。発電用は冷房用の電力消費量の増える夏に消費のピークがあり2019年8月は1日当たり41.6Bcfと過去最大を記録している。

monthly U.S. net generation by fuel type
図2 2010年から2019年までのアメリカの発電容量の割合
今後30年間の生産量予測

図3は地域別にみる2010年から2019年までの天然ガス生産量の推移と今後の2050年までの生産量予測図となる。天然ガスは油田の副産物として産出されるガス(associated gas)とガス田から産出される通常のガスに分けられる。アメリカでは、東部とメキシコ湾岸(陸地)、南西部で生産量が伸びているが、それ以外の地域での生産は漸減の傾向にある。2019年の総生産量は34Tcf(Trillion Cubic Feet)でEIAの推計では2050年までに45Tcfに達すると予想されている。前述の3つの地域が2019年の生産量の68%を生産しており、2050年の推計では78%を産出するとしている。

U.S. dry natural gas production, AEO2020 reference case
図3 地域別にみる天然ガス生産量(2010-2019年)と生産量予測(2020-2050年)(出展元 EIA)

生産量の増大している3つの地域はいずれもシェールオイル、シェールガスの産出地域で、南西部の主要生産地域はパーミヤン、メキシコ湾岸はヘインズビル、東部はマーセラスとウティカとなる。前者の2つはシェール層からオイルとガスがともに産出されるが、東部の産地はオイルがほとんど産出されない点で特徴的となっている。

図4 アメリカのシェール層の分布(出展元 EIA)
*パーミヤン(Avalonを含んだ地域)、ヘインズビル(Haynesville)、マーセラス(Marcellus)とウティカ(Utica)

図5は天然ガスの輸出の2019年までの実績と2050年までの予測を示していて、アメリカ産天然ガス起源のLNG輸出は2019年の1.7Tcfから2030年に5.8Tcfまで成長を続けると予想されている。2030年以降は横ばいとなるが、これは後発国の成長により販売量が頭打ちになると予想されている。

U.S. natural gas trade, aeo2020 reference case
図5 天然ガスの輸出入量の実績(2000-2019年)と予想(2020-2050年)(出展元 EIA)
まとめ

生産量の増加と暖冬による需要の頭打ちで天然ガス価格は2.0ドル以下で低迷している。ただし、足元では価格の下落を追い風として電力用消費と天然ガス輸出が好調となっている。現在は増加した生産量に需要が追い付いていない状態が続いているが、LNG輸出の増加と夏の電力需要=天然ガス需要が高まること、価格低迷による生産量の抑制で、価格の上昇が予想される。夏にかけて去年、一昨年とほぼ同水準の3ドルに向けて上昇するのではないかと予想している(現時点のCMEの8月限価格は約2.0ドル、12月限価格は約2.4ドル)。長期的には輸出の拡大が需要を支えると考えられるが、価格が低迷した場合には設備投資の減少や企業倒産によって生産量が伸び悩むことが予想される。ただし、アメリカ産のLNGは相対的に安価なため、この場合も輸出の増加は続くと予想している。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。