OPECプラスの追加減産期待とロシア(つらつらコラム3月5日)

 

まえがき

新型コロナウイルスの流行により原油需要が落ち込む見方が広がっている。実際に中国では移動規制と工場の稼働の抑制によって、原油消費量が落ち込んでいることはこのコラムでも紹介している。需要減見通しから原油価格は先週1週間で、リーマンショックに端を発した金融危機以来の大幅安を記録した。

OPECの追加減産方針

原油価格の維持に向けてOPEC(サウジアラビア)が2月以来働きかけを続けている。クウェートやUAEなどは同調しており、現在の減産量日量210万バレルに上乗せを目指している。ここで時系列を追っておこう。

今日の時点で日量100万バレルの追加減産が提案されているものの、引き続きロシアが反対しており、追加減産が実施されるかどうかは不透明な状況が続いている。

ロシアの対応

2月の追加減産提案に対して、ロシアは元々1月から3月の減産は難しいとの立場ではあるが、消極的であると報じられている。結局、OPECプラス会合の2月への前倒しも検討されながら、ロシアの同意が得られず、流れている。3月1日になってロシアのプーチン大統領が協力する可能性について示唆したと報じられたが、まだ追加減産についての姿勢は明確に示されていない。

ロシアの事情

ロシアが追加減産に消極的である理由は比較的単純で、サウジアラビアとは異なり現状の原油価格がロシアにとって容認できる水準にあることが最大の理由だと考えられる。事実、ロシア国内の会合での発言として、容認できる水準は北海ブレント原油価格で42.40ドルと伝えられており、今日の時点での北海ブレント原油価格が52ドル付近であることを考えると、なお10ドルの余裕がある。

ロシア、アメリカ、サウジアラビアの主要生産3国の大体の採算ラインを調べてみると以下の通りとなる。

生産コストでの比較ではシェールオイルが主体となっているアメリカが最も高く、採掘が容易な在来型の大型油田が主力となっているサウジアラビアが最も低い。しかし、サウジアラビアの油田が国営で、国家財政が原油収入に頼っていることを加味すると、採算ラインが1バレル80ドル以上に跳ね上がる。事実サウジアラビアの財政赤字は低迷する原油価格の元で拡大しており、この改善のために国営石油会社サウジアラムコのIPOや強権的な国政改革が進められている。一方でロシアの油田はコストの低い在来型と深海などコストの高い油田が存在しているが、2016年のガスプロムネフチのCFOの発言を引用すると、ロシアの石油産業は1バレル30ドルで十分な採算性があり、20ドルでも黒字を維持できるとされている。
以上を考えると現状の北海ブレント原油価格1バレル52ドルでもロシアの石油産業には十分な採算性があり、ロシアが追加減産を急ぐ必要はないこととサウジアラビアがなりふり構わず追加減産を急いでいる理由が裏付けられている。

追加減産幅について-中国の需要減少概算からの考察-

今回のコロナウイルスの流行で減少した需要から、価格維持のために必要な追加減産の幅について考察する。世界最大の原油消費国である中国では感染拡大防止のために工場閉鎖や交通規制が行われている。現在工場稼働率は2割から4割に減少しているとの報道から、平年からの消費の減少を5割と仮定し、原油消費全体の7割を占める交通・輸送セクタと工業セクタのみに適用すると、およそ300万バレルとの数字が得られる。このうち中国の国内生産分(およそ3割)を差し引くと200万バレルという数字が得られる。中国以外の需要減少分を含めると、200万バレルの供給減少が最低現必要だと筆者は考えている。

まとめ

今日5日にOPECの臨時総会、明日6日にOPECプラスの会合が開かれるが、協調減産の拡大について検討と実施が行われると見てほぼ間違いない。ただし、減産幅については、日量100万バレルをどれだけ超えるのかが不透明な状況となっている。仮に追加減産幅が市場予想やJTCの勧告を上回る150万バレル程度の場合は大きな上昇インパクトが期待できる。逆に追加減産幅が100万バレルを割り込むよう場合は、失望売りから大きく下落するのは間違いないと考えている。
ただし、中長期な価格に視点を移すとコロナウイルスの流行が終息しない限りは150万バレル規模の追加減産でも上述の需要減見積もりとOPECプラス外の産油国(アメリカ、カナダ、ノルウェーなど)の原油生産の拡大に対応するには不十分だと考えられるため、追加減産拡大による原油価格の上昇は一時的なものにとどまると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。