サバクトビバッタの蝗害(つらつらコラム3月9日)

図1 ケニアで発生したサバクトビバッタの大群(出展元 ロイター/アフロ)
蝗害(こうがい)の発生

アフリカ東部でサバクトビバッタが大量発生している。FAO(国連食糧農業機関)は過去に前例のない脅威と緊急事態を宣言して警鐘を鳴らしている。図2はFAOのページから閲覧できる現在の発生状況を示していて、赤やオレンジの丸が危険領域にあることを示している ケニアでは過去70年、エチオピアやソマリアでは過去25年で最悪の状況と発表されている。

http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/DL497riskE.jpg
図2 2月時点のサバクトビバッタの発生状況(出展元 FAO)
サバクトビバッタ

サバクトビバッタは体重およそ2グラムのバッタ。日本に生息するトノサマバッタの近縁種で乾燥地帯に生息している。通常は群れることはない孤独相と呼ばれる状態であるが、何かのきっかけで生息密度が上がると群生相と呼ばれる移動に適した形態に変化した個体が生まる。こうなると一日150kmもの長距離を自分の体重と同等の量の植物を一日に手当たり次第に食べながら群れで移動する。群れの大きさは大小さまざまなものがあるが、現在パキスタンに到達している1つの群れは縦横数十kmの大きさで1平方kmあたりに1億5000万匹の群れとなっている。群れはありとあらゆる植物を食べ尽くすこととなる。日本では地理的条件や天敵(カビ)の存在から限られた地域でしか発生していない。

2019年から2020年にかけての大発生と今後の予想

2019年末東アフリカでは降水量が過去40年間で最大となり、高温と大雨によりサバクトビバッタが大発生した。既にケニアでは2000億匹のバッタにより約1億人分の食料に甚大な損害が出ている。その後、バッタの群れは周辺諸国に広がるだけでなく、同様に大量発生が起きているソマリア、エチオピアなどのアフリカ東部から、紅海を隔てたイエメン、サウジアラビアに到達したのち、更にペルシア湾を超えてインド、パキスタンに達している。現在の時点でパキスタンに達した群れの”1つ”の総数はおよそ400億匹と推計されており、パキスタンでは過去30年で最悪の被害が出ている。
今後、図3に示すように春から夏にかけて更なる繁殖と移動が予想されており、中国まで被害の発生リスクが指摘されている。中国前の侵入ルートは3つあるとされている。

  1.  インド・パキスタンからヒマラヤを超えるルート
  2.  アフガニスタンからカザフスタンを通り西側から入るルート
  3.  ミャンマー側から雲南へ侵入するルート

中国国家林草局は2月26日時点で緊急通知を出しており対応に追われているが、FAOによれば、3月5日現在でパキスタンとアフガニスタンに群が到着している状態となっている。

http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/200302forecast.jpg
図3 現状と6月までの予測(出展元 FAO)
まとめ

前回2003年のケースでは西アフリカが発生地だったため、アラビア半島に到達するのに時間が掛かったが、今回はすでにインドへ達している。現在でも数千万人分が飢餓に陥る可能性が指摘される甚大な被害が出ているが、夏までに雨が多い場合、バッタの数は400倍になるともいわれており、被害の規模は想像もつかない。夏から秋にかけてサバクトビバッタの駆除に失敗で、これ以上の被害が拡大した場合は今年の夏以降に食料価格の高騰が予想される。現在繁殖している群れがどこに行くのかや、今後の発生のカギを握るパキスタン・インドでの降雨量などのニュースに注視していきたいと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。