エネルギー速報:アメリカの原油戦略備蓄(つらつらコラム4月16日)

戦略備蓄積み上げ案

アメリカが原油価格の維持のため原油の戦略備蓄(SPR:Stategic Petroleum Reserve)の積み増しを検討しているとの情報が2月に報道されたが、その後4月に入って原油が歴史的な低価格となる中、IEAによると、各国が原油備蓄の積み増しを検討しているとのことだが、原油備蓄量は国家機密に属する情報と言えることもあり、全容を見ることは難しい。筆者がいくつかの主要国についてネット上から拾い出した数字は以下の通りとなる。

注意してほしいのはこの量はあくまで現在の備蓄量で積み増し可能量とはなっていないことである。実態としてはどれだけ積み増せるのかは分からない。その中でも比較的情報が公開されているアメリカをサンプルに備蓄について見てみたい。

アメリカの戦略備蓄の推移と積み増し案

4月14日に報じられたところによると米国エネルギー省(DOE)は、SPRを2300万バレル積み増すため、石油会社と交渉を開始したと報じられた。アメリカの戦略備蓄の容量は7億1350万バレルある。1975年以東石油ショックの反省から7億5000万バレルの備蓄を目標に整備された。2010年に7億2660万バレルをピークに次第に備蓄量や備蓄容量が削減され、図1に示すように現在容量の内6億3500万バレルの備蓄となっている。アメリカ政府の目論見では容量と備蓄量の差分の約7700万バレルの原油を購入して備蓄を行うことで原油価格の安定を図ろうとした。ただし3月の緊急経済対策には原油の購入予算が計上されなかったが、4月2日に今回DOEが3000万バレルの石油備蓄を積み増す計画を発表していた。

図1 SPRの推移 (出展元 EIA)

アメリカにも国家が行う戦略備蓄の他に民間備蓄が存在する。こちらがおよそ1億3000万バレル存在している。数字の根拠としてはかつて2015年から16年の間に原油価格が低迷した際に、約1億3000万備蓄が増加したことが挙げられる。その後原油価格の上昇とともに備蓄量は減少し2015年初めの水準まで減少しており、前回と同レベルの備蓄積み増しは可能と考えられる。以上からアメリカの備蓄拡大容量は最大2億バレル程度と考えられる。

図2 SPR+民間備蓄の推移 (出展元 EIA)
今後の見通し

OPECプラスの減産が日量970万バレルの規模で実施されることが決定したが、新型コロナウイルスによる燃料消費の減少は現時点で日量3000万バレルに達するといわれている。OPECプラスの減産に加えて、OPEC加盟国の自主減産200万バレルと、非OPECプラス構成国の自主減産で日量2000万バレル程度の削減を行う予定と報じられている。生産余剰分も含めて戦略備蓄等の積み上げと考えると2か月60日間300万バレルの供給を減らすことは可能な計算にはなるが、アメリカの備蓄可能量を考えても日量3000万バレル以上の需要減に対して大きくはないため一時しのぎに過ぎず、相場へ大きな影響はないのではないかと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。