エネルギー速報:史上初のマイナス価格(つらつらコラム4月21日)

WTI原油先物期近(5月限)の下落

昨日の原油先物市場で、期近の5月渡しのWTI原油が急落した。史上初となるマイナス価格となり-40.32ドルの安値を付けた。背景として、原油受け渡し場所の原油備蓄施設に十分な容量がなく、売り手の生産者が支払いを行っても原油を処分する事態となった。

図1 5月渡しWTI原油先物日足(出展元 CME)
オクラホマ州クッシング

オクラホマ州クッシングは小さな町だが、アメリカを縦横に走るパイプラインが交差する場所であり原油輸送のハブとなっている。そのためクッシングはNYMEX(ニューヨーク商品先物取引所)で取引されるWTI原油先物の受け渡し場所に指定されている。WTI原油先物の取引では差金決済と現物決済が可能となっており、原油の売り手の生産者はパイプラインを通してクッシングへ原油を運び、現物原油で先物を決済することが可能となっている。一方で原油の買い手の消費者はクッシングで現物で受け取り、製油所などの消費地へパイプラインを通して輸送することとなる。このため、原油需要が低迷している場合は売り先の決まっていない原油在庫がクッシングへ在庫として溜まることになる。クッシングの原油貯蓄設備の容量はおよそ9100万バレル、内、利用可能な容量は8000万バレルとされる。適正な在庫水準は4000万バレル程度とされるが、図2に示すEIAの情報によると4月10日の時点で既に5500万バレル(69%)が埋まっており、なお増加が見込まれており、石油調査会社Genscapeによると4月17日の在庫は610万バレルの増加で設備容量の78%へ達していると報じられている。3月末の時点では50%程度だったが、週7%前後のペースで増加しており、このままのペースであれば5月には備蓄設備が満タンになることが予想される。

図2 クッシング原油在庫の推移(出展元 EIA)
今後の見通し

現時点でAPIが推計しているアメリカの原油備蓄容量は約8億5000万バレルとなる。過去5億バレル以上貯蔵されたことはなかったとされるが、既に7億バレルを超えており、残り容量が1億バレルを切っている。容量対策の一つとして原油タンカー貯蔵が使用されており、すでに1億5000万バレルがタンカーに載せられて海上を漂っていると報じられている。アメリカでは海外産原油に関税をかけるとの話が出ているが、アメリカの製油所の多くは安価だった重質油を石油精製に使用するようになっており、国内産大半を占める軽質油を使用するようにはなっておらず、製油所に入る原油価格が上昇するだけで、ほとんど意味がないともいわれている。

また、世界の推定原油備蓄量は68億バレルで、既に6割が使用されているとの推計が出ている。世界の原油需要と生産量の差は3000万バレルに達しているが、生産国の協調減産は5月1日まで発効しないし、発効しても差分を埋めるには十分ではない。このため、新型コロナウイルスの収束後に需要が回復するまでの間、需給のミスマッチが延々続くと考えられる。来月5月20日にもマイナス価格という現象が見られることになるかもしれない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。