エネルギー速報:EIA原油統計と今後の原油相場の見通し(つらつら分析4月23日)

 

EIA週間統計

4月22日にEIAより週間原油統計が発表された。今週の統計ではアメリカの石油製品需要が3割減少したことが示されるなど需要減から原油在庫は大幅増加となった。WTI原油先物のマイナス価格の要因となったオクラホマ州クッシングの原油在庫もなお増加が続いている。今週もEIAの統計の内容を確認しておきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫は4週連続で1200万バレル以上増加した。ガソリン在庫はガソリンの生産量は減少しており、在庫増加は100万バレルにとどまった。留出油は600万バレル以上の在庫増加が続いている。図1から3は在庫の推移を平年と比較したもので、在庫の増加が続いていることがわかる。

表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

API統計(参考) EIA統計 EIA統計前週 
原油(万バレル)1324増1502増1925増
ガソリン(万バレル)344増102増491増
留出油(万バレル)764増788増628増
クッシング在庫(万バレル)491増477増572増
Stock price graphs
図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

1日当たりの原油生産は前週の1230万バレルから1220万バレルへ減少し、前月の1300万バレルと比べると80万バレルの減少となった。輸出入に関しては前週と比べて輸出が54万バレルの減少、輸入が75万バレルの減少となった。戦略備蓄の量には未だ変化は見られない。原油価格の低下と需要減による生産量の低落、輸出入の減少が続いている。

表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)

原油生産と輸出入今週  前週  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)1220123012471220
戦略備蓄(万バレル/日)635635649
原油輸入(万バレル/日)493568614670
原油輸出(万バレル/日)289343355283
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量が前週(4週平均)と比べて約80万バレル減少となり、製油所稼働率は前年と比べて約14%の低下となった。石油製品の需要減によって生産量が減少している。特にガソリン生産は前週より約70万バレルの減少となり平年の3分の2程度まで落ち込んでいる。一方で留出油については引き続き生産量は横ばいとなっている。

表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)

製油所稼働率等(4週平均)今週  前週  2週前   3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)13411425150415561615
製油所稼働率(%)73.678.682.985.687.9
ガソリン生産(万バレル/日)  634703805908992
留出油生産(万バレル/日)   497492486479494
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)はガソリンが89万バレルの減少となっているが、おおよそ600万バレル前後の水準で推移している。ジェット燃料が15万バレル増加し50万バレルの水準で推移している。一方で留出油の供給は16万バレル減少したものの前年度と比べて供給量に大きな減少は見えていない。新型コロナウイルス対策で自動車、飛行機の燃料供給がおおよそ3分の2まで落ち込んでいる。

表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)

石油製品今週  前週  2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)552641506665944
ジェット燃料供給(万バレル/日)614675133182
留出油供給(万バレル/日)340356380390377
石油製品価格

ニューヨーク港渡しの原油価格は2週間前から下落している。ガソリン受渡価格(価格)は供給が絞られたためか2週間前から上昇している。ディーゼル燃料の受渡価格は下落が続いている。

表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

スポット価格(ニューヨーク港渡し)今週(4/3) 前週(4/9)  2週前(4/3) 3週前(3/27) 
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)0.6230.5920.5330.550
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)0.9670.9931.0811.038
原油(ドル/バレル)18.3122.9028.3615.48
今後の見通し

今週のEIA統計では、原油在庫が引き続き大幅な積み増しとなった。ガソリン在庫の積み上げペースは鈍化しているが、これはガソリン生産が落ち込んでいるためとなっている。アメリカでは自動車用燃料需要、航空用燃料が3分の2程度へ落ち込んでいる。一方でトラック燃料用の留出油(ディーゼル燃料)の生産と供給は前年同時期を維持しているが700万バレル以上の在庫の積み上がりが続いていて早晩生産量が減少すると考えられる。石油製品需要の減少に伴い、製油所の稼働率が平年と比べて大幅に低下している。

トランプ・アメリカ大統領は戦略備蓄の積み上げを発表した。これはWTI先物の受け渡し場所として指定されているオクラホマ州クッシングの在庫が6000万バレルに達しており、残り1500万バレルの余地しかない点を、戦略備蓄として振り替えることで補う目的がある。ただし、戦略備蓄の上限まで7700万バレル程度しかないため、このままのページで増加すると約9週間でどちらも上限に達することが容易に想像できる。民間の備蓄施設まで合わせると8億5千万バレルの容量があるが、既に60%以上が利用済みで、設備利用率は上昇を続けている。

今週起きたWTI原油のマイナス価格はWTI特有の問題も大きいためか、OPECプラスの動きは鈍く、電話会談を行ったものの追加の相場維持策は発表されていない。OPECプラスの日量970万バレル減産は5月1日に発効するが、すでに大型タンカーの一部が備蓄用に使用されるなど、原油の備蓄施設を見つけることが困難となっていると報じられている。一方で新型コロナウイルスの収束のめどは全くなっておらず、需要回復は見込めていない。今後、減産量のさらなる拡大がなければ、原油価格は恒常的に10ドルまで下落すると筆者は予想している。仮にそれに加えて、アメリカの原油備蓄施設の余裕がなくなるような事態(今のペースで約半年後)になれば、投げ売りが発生し5ドル付近まで下落する可能性があると筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。