エネルギー速報:天然ガス在庫と今後の見通し(つらつらコラム4月3日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

表1 地域別天然ガス在庫(出展元EIA)

今週の在庫減少量は-19Bcfとなった。図1は過去2年間の天然ガス在庫の変動を見たもので、例年と比べると底となっており、冬が終わってこれから在庫が増加する時期に入ることが分かる。表1は地域別の在庫の増減を見たものとなる。前年と比べると全体的に在庫が多くなっている。全体的な在庫水準前年と比べて+77%(前週+76%)、過去5年の平均と比べても+17%(前週+16%)の在庫と高い水準だった。

天然ガス需要と供給

表2は天然ガスの供給側の一覧で、天然ガスの生産は93.8Bcfと依然として過去最高水準の値となっていることが分かる。カナダからの輸入は今週アメリカ東海岸で新しい設備が稼働したために輸入の必要性が減り減少した。

表2 部門別天然ガス供給(出展元EIA)

表3は部門別に天然ガス需要をまとめたもので、今週は前週と比べて発電部門や住宅用・商業用需要が減少している。これは主に東部や南部で気温が高かったことと新型コロナウイルスの感染拡大で商業用施設での消費量が減ったことが要因となっている。

表3 部門別天然ガス需要先(出展元EIA)

今後の需要と供給見通し

図2は昨年2019年までの天然ガス輸入量と輸出量の推移を見たもので、輸入にはカナダからのパイプライン輸入が、輸出にはカナダ、メキシコへのパイプライン輸出とLNG輸出が含まれている。今週は合計で70Bcfを積載可能なLNG輸送船19がアメリカ東部を出港したことなど輸出が拡大したことで、3月30日に初めて輸出が1日当たり12Bcfの大台に乗った。

図2 アメリカの天然ガス輸出量(出展元 EIA)
直近の天然ガスを取り巻く状況と今後の見通し

アメリカの天然ガスの多くはシェールガス・シェールオイル由来のため原油価格にも影響を受ける。価格の低迷により石油・ガス会社の多くは人員整理や、設備投資の削減、債務の整理に追い込まれている。図3はノースダコタとコロラドでシェール採掘を行っているホワイティング・ペトロリアムの債券の価格の推移で、価格は2020年に入って急落していることが分かる。このホワイティング・ペトロリアムは昨日経営破綻した。

Line chart of $770m bond maturing in March 2021 showing Whiting Petroleum debt plunges
図3 原油会社の社債価格の推移(出展元: フィナンシャルタイムズ)

アメリカは原油価格の安定のためサウジアラビアとロシアの間の仲介を続けている。昨日はトランプ・アメリカ大統領がTwitterで両国による日量1500万バレルの減産が期待されると発信したことで一時的に27ドル台まで原油価格が急騰した。一方で、原油価格の上昇はシェールオイルの生産量を維持することに繋がり、天然ガスの余剰傾向を悪化させる見方から弱材料となった。
ただし、サウジアラビアとロシアが本当に1500万バレルに及ぶ減産を行うかどうかは全く未知数であり、そのための会合の日程も未定のままとなっている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と需要減で、昨年実績でおよそ日量1億バレルだった原油需要の内、3000万バレルが失われていると試算されている。3000万バレルと言う数字はOPEC全体の産油量(2020年1月時点で2835万バレル)にほぼ等しい膨大な量である。原油価格維持のために1500万バレル減産と言うことは必要最低限の数字として説得力があるが、サウジアラビア・ロシア両国の合計産油量の半分以上に及ぶ膨大なものであること、産油量世界首位のアメリカの具体的な減産量について全く言及されておらず、2国だけが言わば貧乏くじを引かされる状態であることから、このままの割り当てで減産が行われることはまずないだろう。減産によって効果的に原油価格を維持するには抜け駆け増産を禁止する必要があり、そのためにはOPECプラスの枠組みを超えて、アメリカやカナダ、ブラジルや欧州の産油国を含んだ新しい包括的な枠組みが必要だが、その形は全く見えてきていない。しかし、仮にアメリカでも産油量制限の枠組みに従った減産が行われる場合には、天然ガスの減産にもつながるため価格上昇が予想される。今後のアメリカのエネルギー戦略に注目していきたい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。