EIA週間統計
昨日4月30日にEIAから週間原油統計が発表された。今週の統計では原油在庫の増加傾向は変わっていないが、ガソリン在庫が減少したことから、需要回復期待が高まって原油相場が値上がりした。国家戦略備蓄の増加が今年初めて確認されたが、オクラホマ州クッシングの原油在庫はなおも増加が続いている。今週もEIAの統計の内容を確認しておきたい。
原油と石油製品の在庫
原油在庫の増加は5週間ぶりに1000万バレルを割り込んだ。ガソリン在庫は生産量の減少と供給の増加から在庫減少に転じた。留出油は量は減少したが依然として500万バレル以上の在庫増加が続いている。図1から3は在庫の推移を平年と比較したもので、在庫の増加が続いていることがわかる。
API統計(参考) | EIA統計 | EIA統計前週 | EIA統計前々週 | |
原油(万バレル) | 997増 | 899増 | 1502増 | 1925増 |
ガソリン(万バレル) | 110減 | 366減 | 102増 | 491増 |
留出油(万バレル) | 546増 | 509増 | 788増 | 628増 |
クッシング在庫(万バレル) | 248増 | 363増 | 477増 | 572増 |



原油生産と輸出入、戦略備蓄
1日当たりの原油生産は前週の1220万バレルから1210万バレルへ減少している。前月初めの1300万バレルと比べると90万バレルの減少となり100万バレルの大台が見えてきた。前週と比べて輸出が37万バレルの増加、輸入は43万バレルの増加となった。全体として、原油価格の低下による生産量の低落と需要の減少による在庫の増加が続いている。また、今週は戦略備蓄が日量16万バレルで積み増しが行われた。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 前々週 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1210 | 1220 | 1230 | 1250 | 1230 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | 16 | 0 | 0 | – | – |
原油輸入(万バレル/日) | 530 | 493 | 568 | 544 | 741 |
原油輸出(万バレル/日) | 330 | 289 | 343 | 311 | 261 |
石油製品生産量と製油所稼働率
製油所への原油投入量が前週(4週平均)と比べて約50万バレルの減少となり、製油所稼働率は前年と比べて約18%低下した。これは石油製品の需要減によって処理量が減少したためで、ガソリン生産は前週より日量約18万バレルの減少となり平年の6割程度となっている。一方で留出油については引き続き生産量は横ばいとなった。
製油所稼働率等(4週平均) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1287 | 1341 | 1425 | 1504 | 1630 |
製油所稼働率(%) | 70.5 | 73.6 | 78.6 | 82.9 | 88.6 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 616 | 634 | 703 | 805 | 994 |
留出油生産(万バレル/日) | 497 | 497 | 492 | 486 | 501 |
石油製品供給(需要)
石油製品の供給(需要)ではガソリンが日量で55万バレルの増加となっており、減少の傾向に歯止めがかかった。また、ジェット燃料の供給が19万バレル増加しており、留出油の供給は4万バレルの増加で引き続き堅調に推移している。アメリカでは、ロックダウンが続いているが、在宅サービスの増加からトラック輸送量は増加しているとの報告があり、その旺盛な重要を反映していると考えられる。石油製品の需要に回復傾向が見られるといえるが、量自体は前年と比べておよそ3分の2の水準まで落ち込んでいる。
今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 586 | 531 | 508 | 506 | 922 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 80 | 61 | 46 | 75 | 192 |
留出油供給(万バレル/日) | 316 | 312 | 275 | 380 | 421 |
石油製品価格
ニューヨーク港渡しの原油価格の下落は続いている。ガソリン受渡価格(価格)は製油所からの供給が増えたにもかかわらず、価格が横ばいとなっていることから需要増が考えられる。ディーゼル燃料の受渡価格は下落が続いており、今週は大きく値を下げた。
スポット価格(ニューヨーク港渡し) | 今週(4/23) | 前週(4/16) | 2週前(4/9) | 3週前(4/3) |
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン) | 0.617 | 0.623 | 0.592 | 0.533 |
ディーゼル燃料(ドル/ガロン) | 0.677 | 0.967 | 0.993 | 1.081 |
原油(ドル/バレル) | 15.99 | 18.31 | 22.90 | 28.36 |
今後の見通し
今週のEIA統計では、原油在庫は引き続き大幅な積み増しとなった。また16万バレル程度であるが、戦略備蓄の増加が確認されているが影響は小さい。現状では、図4に示すように製油所の原油処理量が平年より大幅に低下している。ただし、前週まで5週間続いてきた原油処理量で見る原油需要の単調減少にブレーキが掛かった。

図5は石油製品の供給量の推移を示している。貨物トラックに使用される留出油の供給量の減少幅は小さく、需要が底堅いことが見える。ガソリン供給も、減少から増加に転じる可能性が見えてきた。ジェット燃料に関しては供給が減少している。これは燃料の性質上、長期保存が不可能なため早期に生産量が絞られたためだと考えられる。

図6はアメリカを5つの地域に分けて、それぞれの地域のガソリンの在庫の推移を見たものとなる。製油所の多いメキシコ湾岸での在庫は増加しているが、人口の多い大量消費地である(コロナウイルスの流行地でもある)東海岸や西海岸でガソリン在庫の増加にブレーキが掛かったことがわかる。

OPECプラスの日量970万バレルの減産は5月1日に発効する。通常の場合は5月1日から生産量が減少を始めるが、既にクウェートを始めサウジアラビアやナイジェリア、アルジェリアなどは前倒しで減産を始めており、特にサウジアラビアは5月1日前に減産目標を達成すると報道されている。この他ノルウェーの減産が6月から日量25万バレルで始まると昨日報じられた。新型コロナウイルスの収束のめどは全く立っていないが、アメリカではガソリンなどの需要回復が始まっているように見える。未だこの動きが本格的なものかどうかはわからないが、需要回復は価格上昇に直結するため、今後の需給情報に特に注意を払いたい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。