エネルギー速報:原油余りの終焉?(つらつらコラム5月11日)

原油余りの終焉?

4月下旬に原油相場(期近の5月限)が1バレル-40.32ドルまで下落するという歴史的な安値を記録した後、5月に入って期近の6月限は1バレル当たり6.5ドル付近から24.0ドル付近まで上昇し、約3週間で原油価格は大幅上昇となった。背景には新型コロナウイルス対策として実施されている都市封鎖が欧州とアメリカで緩和され、先週には欧州で商店などが再開され原油需要が読みるとの予測、またEIAの統計でガソリン在庫が減少に転じたことが理由として大きかったと考えている。

また、ゴールドマン・サックスの5月の最新のレポートでは今月末までに需要が供給を超える可能性があると指摘している。4月の時点で新型コロナウイルスの流行前の世界需要およそ日量1億バレルから3000万バレル下押ししていた世界の原油需要が、新型コロナウイルスの影響から経済が脱するに従って需要が回復するとの推定に基づいている。5月の初めの時点でおおよそ8100万バレルから8300万バレルまで回復した需要が、6月初めにはおよそ8800万バレルまで回復し、この時点でOPECプラスの減産幅(1000万バレル以上)と交差し余剰が生じなくなる。8月には需要がおよそ9500万バレルとほぼ平年並みまで回復して、その後は減産による需給バランスの回復から価格も回復していくと予測している。ただし、既に世界には12億バレル以上の在庫があり、需要が回復しても価格が現在より上昇するにはこれらの在庫(特に保管料の高い海上に浮かぶタンカー内の4億5000万バレル)をまず消化する必要があること、1バレル30ドルを超えると、生産増加が始まるため直ぐには価格は回復しないとしている。
ゴールドマン・サックスは先月4月の末の時点での過去最高水準に達している世界の原油貯蔵能力が、大量の余剰原油(5月中旬に日量1800万バレル)によって試されるとのレポートを出しているが、今回、逆方向に見解を大幅に修正している。仮に、最新のレポートの通りに需要回復が進まない場合には期近の原油価格の大きな下振れが予想される。

アメリカの原油需要

直近2週間分のEIA統計を基にすると、原油生産量が減少を続けている他、ガソリン在庫が減少に転じており、ガソリン需要が回復を見せていると考えられている。一方の原油在庫の増加も市場予想の約700万バレルを下回っており、消費量の増大から原油需要が回復してきているように見えるが、ガソリン需要のみの回復で留出油の需要は回復していない。そのため、石油製品全体では出荷量が減少して、3週間ぶりにマイナスとなっており、全体では原油需要が伸び悩んでいることがわかる。

EIA統計
(5月6日)  
EIA統計
(4月29日)  
EIA統計
(4月22日)  
原油生産(万バレル/日)119012101200
原油在庫(万バレル)459増899増1502増
ガソリン在庫(万バレル)315減366減102増
留出油在庫(万バレル)951増509増788増
クッシング在庫(万バレル)      206増363増477増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

表2はアメリカの1ガロン当たりのガソリン価格の変化を表にしたものである。地域ごとに見ると、ミネソタ州やオハイオ州およびシカゴなど中西部(五大湖周辺)の州のガソリン価格は上昇している。その他の地域では都市ごとでは上昇も見られるが、減少幅は狭まっているものの価格の下落が未だ続いており、小売りではそれほど需要が回復していないのではないかと考えている。

表2 アメリカの州別(上段)、都市別(下段)のガソリン価格(出展元 EIA)

表3はディーゼル燃料の地域別の価格変動の表となるが、こちらは全国的に下落速度が落ちておらず、経済と物流を支えるトラックの需要が全く回復していないことを示している。

表3 アメリカの地域別ディーゼル燃料価格(出展元 EIA)
今後の見通し

欧州やアメリカのミシガン州やカルフォルニア州が都市封鎖が緩和に舵を切ったことで、原油需要の回復が期待されたことから、先週の原油相場は上昇を続けている。ただし、あくまで緩和はアメリカでも一部の地域にとどまっている。EIAの統計では封鎖が緩和される週を中心にガソリン需要にある程度の需要回復は見られるが、ディーゼル燃料の需要が全く回復しておらず、経済の本格的な回復と考えるには時期尚早なのではないかと考えている。今後、順調に需要が回復した場合でも、10億バレルを超える原油在庫が世界中に溢れかえっている。これらの在庫が掃けるまでは、供給過多の状況が続くと考えられる。在庫は1日1000万バレル売れても100日掛かるという膨大な量のため、需要回復後もなかなか原油価格は上がらないだろう。また、ある程度の上昇の後は産油国や企業が原油の減産から増産へシフトすると考えて良く、筆者はしばらくの間、期近の原油価格は35ドル手前で低迷すると考えている。そして、都市封鎖の緩和の失敗(新型コロナウイルスの流行の再拡大)などで需要回復が遅れる場合は、世界の原油在庫が溢れる可能性が残されている。この場合は今月中に期近が現状の24ドル前後から10ドル台へ大きく下押しすることが考えられる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。