エネルギー速報:EIA原油統計と今後の原油相場の見通し(つらつら分析5月14日)

 

EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では、アメリカで都市封鎖の緩和が始まっている中で、ガソリンの需要増に続いて原油在庫なども改善するかが注目された。発表された内容は、原油在庫が74万バレル減少と、実に16週間ぶりに減少した。ガソリン在庫は351万バレル減少している。原油在庫の減少から需要回復期待が高まり原油相場は一時的に値上がりしたが、長続きせず昨日の原油相場は結局ほぼ横ばいで引けた。国家戦略備蓄の増加は続いているが、アメリカの原油貯蔵施設の在庫率は原油在庫が減少したものの、62%で横ばいとなった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は300万バレルの減少で在庫率は4.6%減の78%となり、80%を割り込んだ。今日は原油需要が回復しているのかを中心に今週もEIAの統計の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫は減少に転じた。ガソリン在庫の減少量は前週から微増した。留出油在庫の増加ペースは鈍ったものの在庫の増加が続いている。

API統計(参考) EIA統計 EIA統計前週EIA統計2週前EIA統計3週前
原油(万バレル)760増74減459増899増1502増
ガソリン(万バレル)191減351減315減366減102増
留出油(万バレル)471増351増951増509増788増
クッシング在庫(万バレル)221減300減206増363増477増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1から3は在庫の推移を平年(過去5年間の在庫レンジ)と比較したものとなる。今週と起筆すべき点は原油在庫の上昇が頭打ちとなったことになる。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は前週の日量1190万バレルから1160万バレルへ30万バレル減少となり、最盛期の1310万バレルから150万バレルの減産となっている。この他、輸出が32万バレルの減少、輸入は2万バレルの減少となった。原油価格低下によって、アメリカにおける原油生産量は低落しつつある。また、戦略備蓄に日量27万バレルの割合での積み増しが行われており、前週の24万バレルから積み増しが加速している。

原油生産と輸出入今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)116011901210122011951210
戦略備蓄増加(万バレル/日)2724160
原油輸入(万バレル/日)539571530493533761
原油輸出(万バレル/日)352354330289331334
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量が前週(4週平均)と比べて約7万バレル減少した。製油所稼働率(4週平均)も同様に減少しており、前年と比べて約21%低下した水準にある。一方で、ガソリン生産(4週平均)は前週より日量約39万バレルの増加、留出油の生産については引き続き生産量は横ばいとなった。製油所への投入量が減っているにもかかわらず、ガソリン生産が増えて見えるが、代わりにジェット燃料(灯油)や重油の生産が減少している。

製油所稼働率等(4週平均)今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)12641271128713411652
製油所稼働率(%)68.969.270.573.689.7
ガソリン生産(万バレル/日)  678639616634993
留出油生産(万バレル/日)   499499497497513
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で73万バレルの増加となっており、前週に続いて増加した。ジェット燃料の供給は16万バレル減少となり引き続き航空需要は低迷していると考えられる。最後に、留出油の供給は69万バレルの増加となった。ガソリンでは生産量よりも供給量が上回っており、原油の処理は増えず、石油製品の在庫の取り崩しが拡大したことがわかる。留出油は供給量が増加したものの、在庫が積み上がる状況に変化はない。
アメリカでは都市封鎖の緩和により、3週連続でガソリン需要が拡大している他、今週はトラック用の留出油(ディーゼル燃料)の供給も増加している。一方、航空需要は回復しておらず、ジェット燃料の生産・供給は低迷している。また、今週は石油製品全体の供給量がやや前週より増加した。

今週  前週  2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)739666586531987
ジェット燃料供給(万バレル/日)35518061173
留出油供給(万バレル/日)381312316312389
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品価格

次に表5のニューヨーク港渡しの石油製品の価格を見てみよう。原油価格は2週連続で上昇した。ガソリン受渡価格(価格)は製油所からの供給が増えたにもかかわらず、引き続き価格が上昇していることから需要増が考えられる。ディーゼル燃料の受渡価格も上昇を続けている。石油製品価格は前年同時期の半額程となっている。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)今週(5/8) 前週(5/1) 2週前(4/24)  3週前(4/17)  前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)0.8770.6860.6170.6231.937
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)0.8890.7920.6770.9672.053
原油(ドル/バレル)24.7319.7215.9918.3161.65
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

更に表6の石油製品の小売価格の全国平均を見てみよう。4月27日の週から価格の上昇が始まっているが、ディーゼル燃料の価格は未だ下落が続いているが、ほぼ横ばいとなった。卸売価格と小売価格がともに下げ止まったことから、需要は確実に回復していると考えられる。

小売価格今週(5/11) 前週(5/4) 2週前(4/27)  3週前(4/20)  前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.8511.7891.7731.8122.866
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)2.2572.2212.2262.2753.258
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.5192.4792.4762.5193.514
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.3942.3992.4372.4803.160
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)

今後の見通し

今週のEIA統計では、原油在庫はガソリン需要の増加から原油消費量が伸びたと数字上からは思われたが、統計の細部を検討してみると、製油所への原油投入量が減少した一方で、産油量が日量30万バレル、210万バレル/週の減少、戦略備蓄への積み増し量が前週の約170万バレル/週から増加し、約190万バレル/週となっている。生産が減った分と備蓄に行った分が約400万バレル/週あり、在庫の減少は76万バレル/週であることから、原油需要の増加による在庫減ではなかったことがわかる。原油貯蔵施設の使用率は62%で横ばいとなった。個々の石油製品では、ガソリン在庫が引き続き減少となったが、留出油の在庫が引き続き増加している。供給面ではガソリン生産だけは増加しているものの、留出油生産やジェット燃料生産は減少した。石油製品全体の総供給量は前週比で増加に転じたものの、今週は生産を絞った分、在庫を取り崩して供給を増やしたといえる。ただ、市中のガソリン価格の上昇は続いており、ディーゼル燃料の価格も底を打ったことから、原油需要が回復する可能性が出てきている。

以上のことから、原油在庫は減少したとはいえ、製油所での消費は減少していることに加えて、戦略備蓄の積み増し分を考えると依然として原油在庫は増加していると言える状態で、本格的な原油需要の回復とは言えない状態にあると考えられる。原油需要の回復はいまだ遠く、原油在庫が溢れるとの見方はやや遠のいたものの、引き続き大きな売りがいつ入ってもおかしくない状況が続いている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。