エネルギー速報:天然ガス在庫と採掘用リグ数の変化、今後の見通し(つらつらコラム5月15日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日発表の天然ガス在庫量(5月2日から8日までの増減分)は市場予想の107Bcf増に対して、予想を下回る103Bcf増となった。前週に引き続き100Bcfを上回る増加となったが、予想を下回ったことと、大手各社の設備投資の削減による生産量減少見通しの方が材料視され上昇した。

図1は天然ガスの在庫量と5年平均の中央値(黒線)および最小値と最大値の幅(灰色)を重ねたものとなる。表1は在庫増減の内訳で、今週の在庫は前年と比べて49.2%多く、5年平均の中央値と比べても20%以上多い量で、在庫の5年平均の最大値に次第に近づいている。地域別でも全ての地域で在庫が増加している。後でも述べるが、南部の地域だけでなく、先週末に季節外れの冷え込みに見舞われた北部の地域でも在庫が増加したことで、アメリカ全体で消費が減っていると考えられる。

表1 地域別天然ガス在庫(出展元EIA)
天然ガス需要と供給

表2は天然ガス供給側の内訳となる。前週の天然ガスの生産は91.8Bcfと前週の91.6Bcfと比べて横ばいとなったが、依然として生産量は前年を上回っている。今週はカナダからの輸入が増加したことで、供給量全体は0.8Bcfの増加となった。

表2 部門別天然ガス供給(出展元EIA)

表3は部門別の需要の統計となる。今週は大幅減となった前週の発表と比べて需要が持ち直し、天然ガスの総消費量は5.5Bcfの増加となった。発電量の需要は今週も横ばいで工業用も横ばいだったが、住宅用・商業用需要が5.4Bcfの増加となった。LNGやメキシコ向けのパイプライン輸出はほぼ横ばいだった。先週頭にあった天然ガスパイプライン爆発の影響はほぼ薄れている(アパラチアのガス価格は下落しており影響はまだ残っている)。

表3 部門別天然ガス需要先(出展元EIA)
リグ稼働数

図2は過去13年分の原油・天然ガス採掘用リグ数を見たものとなる。(色はリグの採掘方法の違いとなるが触れない)。今週も大幅な減少が続き、ベーカー・ヒューズ社の発表する稼働中リグ数は374基(前週比34基)となり、直近の最低数となる2016年5月20日の404基を大幅に割り込んだ。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの採掘用リグ数の前週比からと前年比からの変化を見たもので、5月5日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が33基減った292基(約10%減)、天然ガス採掘用が1基減少した80基(約1.2%減)となった。リグ数の減少が続いているが、やや減少速度にブレーキがかかっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
EIAのエネルギー短観

EIAの見通しによると新型コロナウイルスの蔓延から、需要面では工業用の天然ガス使用量が、経済の落ち込みにより例年より7%の減少となること、LNGの輸出量が世界の天然ガスの消費の低迷で、現在の5.8Bcfから夏には4.8Bcfまで落ち込むと予想されることでアメリカ国内需要の減少が予測される。生産面では2019年の生産量の平均が過去最大の日量92.2Bcfだったのに対して2020年は4月の93.1Bcfを頂点に12月の85.4Bcfまで低下することで、年平均89.8Bcfまで低下すると予測している。天然ガスが豊富に産出するアパラチア地域と、天然ガスに付随して算出される原油価格の低いパーミヤン地域で減少幅が大きくなると予想されている。元々の季節要因による増加に新型コロナウイルスの影響による消費の減少(在庫の増加)が加わって、天然ガスの在庫量は4月時点の2.3Tcfから在庫の積み上げが続き、10月末には記録的な値となる4.2Tcfに達する見通し。

IEA(国際エネルギー機関)による4月のエネルギーレビュー

ウィーンに本部を置いているIEAが発表している毎月のエネルギーレビューによると、2020年第1四半期のの天然ガス消費量は、世界的に穏やかな冬となったため、ヨーロッパでは前年比で、2.6%の減少となった。アメリカでは住宅用・商業用の需要落ち込みから前年比で4.5%の減少、日本も3%減少している。中国1%増と横ばいで、例外的にインドが2月の消費量が1月比で8%近く上昇するなど大量消費国として存在感を増している。供給側は需要側の消費減少に対応できているとは言えず、在庫が昨年比でアメリカで77%、ヨーロッパで40%など、各国で在庫が積みあがってきている。

今後の見通し

今週の天然ガスの在庫統計(5月2日から8日)は103Bcfとなり、予想在庫増加予想107Bcfを下回ったため天然ガス相場は下落した。需要では住宅・商業用需要が5.5Bcfとの大幅増となったが、これは、前週に季節外れの冷え込みがあったことを反映している。そのほかの工業用、発電用需要は横ばい、LNG輸出は世界の天然ガス需要の低迷から今後減少する見通し。供給面では採掘用のリグ数の減少にブレーキがかかって来たものの、原油採掘用リグと天然ガス採掘用リグの合計は33基減の372基となり、直近13年で最低の数であった404基を割り込んだ。天然ガスの生産量にはリグ数減少の影響がじわじわと現れている。対して今週より各州・世界各地で都市封鎖の緩和が始まっており、今後、経済活動の再開で商業用や工業用、発電用、LNG用の需要が上向けば、供給過多である現在よりも需給バランスが安定して、期近価格の低迷も終わると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。