エネルギー速報:天然ガス生産地の現状(つらつらコラム5月20日)

シェールオイル・シェールガス産出地域の状況

表1はEIAが発表した5月18日の時点での、地域別の原油と天然ガスの生産量の5月と6月の予測生産量一覧を示している。元々原油の生産量が極めて少ないアパラチア(Appalachia)の原油生産以外すべての地域で原油と天然ガスの生産量が減少している。その減少割合は前月比で原油で約3%、天然ガスで約1%となっている。

表1 原油予測生産量(左)と天然ガス予測生産量(右)(出展元 EIA)
*Changeの欄の()内の数字が減少を意味する。

表2は地域別の掘削済み未仕上げ井戸(DUC)の数となる。DUCの数は原油井戸と天然ガス井戸の区別はなく、生産を開始できる状態になった井戸の数を示している。全体としてDUCの数は増加しており、生産余力が高まっていることが分かる。これは設備投資の全体金額が削減されながらも、生産余力の確保が行われていることがわかる。このDUCの増加は、需要増加時の速やかな生産再開につながると考えられる。

表2 掘削済み未仕上げ井戸数(出展元 EIA)
*Changeの欄の()内の数字が減少を意味する。
2020年の天然ガス生産量見通し

EIAの最新の短期エネルギー見通しによると、新型コロナウイルスの流行による需要低下見通しから、天然ガスの生産量は図1の様に2019年の1日平均99.2Bcfから2020年は97.1Bcfへ約2%減少すると予想されている。

図1 2016年から20年4月前の生産量実績と5月以降の生産量見通し(出展元 EIA)

元々、天然ガスの生産の伸びが需要の伸びを上回り、供給過剰による価格低下で生産量の増加スピードが落ち、生産量の横ばいが予想されていた。そこに新型コロナウイルスによる需要減が価格低下に追い打ちをかけて、生産者が設備投資と掘削規模を削減していることで生産量が減少している。図2は原油と天然ガスの5月と6月の予測生産量の差(濃)を前年度同月の実績(淡)と比べたもので、原油はパーミヤン盆地(Permian)で天然ガスはパーミヤン盆地とアナダルコ(Anadarko)で予測生産量の減少幅が大きい。

図2 5月と6月の予測生産量の差、原油(左)・天然ガス(右)(出展元 EIA)
LNG輸出の見通し

新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖の影響などで、世界的にLNGの使用量は減っており、今年2月に史上最高の日量8.7Bcfに達したが、その後減少して5月には日量6.7Bcfとなった。これは需要減による貨物のキャンセルが続いているためで、例えば4月にはタンカー20隻分の輸出がキャンセルされている。にもかかわらず、EIAはLNGの輸出に関しては強気の見通しを崩していない。

今後の見通し

アメリカのシェールエネルギーの生産地ではコロナウイルスの影響による需要減・原油安によって設備投資を大きく減らしており、原油と同じ井戸からも産出される天然ガスの生産も下向いている他、LNGの輸出も減少している。加えて、一度井戸の閉鎖を行うと、石油・ガス生産再開までのタイムラグが生じるため、今年の後半から2021年にかけて天然ガスの生産量が減少することが見込まれている。一方で、現在のシェールガスの井戸データを見る限りは、採掘業者はDUC数を増加させており、2019年の9月の値まで生産余力が回復してきている。このため、今後コロナウイルスの影響から抜け出して、ガス需要の回復が明らかになった場合にも比較的速やかにガス生産量を回復させることができる可能性がこのデータから言えるのではないかと考えている。このことは、需要回復が起きた際の期近の値上がりに水を差す形になるに違いない。


メモ:今後の天然ガスの消費に占める発電用需要の見通し

今年の初めまでの天然ガスの記録的な生産増加による価格低下と高い運用効率のため、天然ガスによる発電量が増大しており、2022年までに4.3GW(原子力発電所4つ分)分の発電量が追加されて、既存の石炭火力発電所を置き換える予定となっている。これに伴い発電向け天然ガス需要の増加が概ね年1%のペースで増加することが見込まれる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。