エネルギー速報:EIA原油統計と今後の原油相場の見通し(つらつら分析5月21日)

 

EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計は、アメリカでの都市封鎖の緩和で原油需要が改善するかが注目された。発表された内容は原油在庫は498万バレル減少し、製油所の稼働率も上向いたものの、これまで3週間減少が続いていたガソリンの在庫283万バレル増加した。原油在庫が減少したものの、石油製品の需要回復期待に反する内容となり、原油相場は値下がりした。終盤買い戻しの動きが入り結局、統計発表後の下落分を全て戻す形で取引を終了した。今日は原油需要が回復しているのかを中心に今週のEIAの統計の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫の減少は2週連続となった。ガソリン在庫は4週間ぶりの増加。留出油在庫の増加は続いている。クッシングの在庫は500万バレルを超える大幅減となった。

API統計 EIA統計 EIA統計前週EIA統計2週前EIA統計3週前
原油(万バレル)480減498減74減459増899増
ガソリン(万バレル)65減283増351減315減366減
留出油(万バレル)510増383増351増951増509増
クッシング在庫(万バレル)500減558減300減206増363増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1原油在庫の、図2はガソリン在庫の、図3は留出油在庫の過去2年分の推移(実践)と平年(過去5年間の在庫レンジ)と比較したものとなる。どの油種も過去5年の実績を上回る水準の在庫となっている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は前週の日量1160万バレルから1150万バレルへと今週も10万バレル減少した。最盛期の1310万バレルに比べて160万バレルの減産となった。この他、輸出が32万バレルの減少、輸入は20万バレルの減少となった。戦略備蓄の積み増し量は26万バレルとほぼ前週と同じだった。

原油生産と輸出入今週  前週  2週前    3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)115011601190121011771220
戦略備蓄増加(万バレル/日)26272416
原油輸入(万バレル/日)519539571530540694
原油輸出(万バレル/日)324352354330340292
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量は稼働率の上昇とともに増加し、前週(4週平均)と比べて約11万バレル増加した。稼働率自体は平年より約20%低い状態が続いている。一方で、ガソリン生産量(4週平均)は前週より日量約24万バレルの増加、留出油の生産量は引き続き横ばいとなった。

製油所稼働率等(4週平均)今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)12751264127112871652
製油所稼働率(%)69.468.969.270.589.6
ガソリン生産(万バレル/日)  702678639616996
留出油生産(万バレル/日)   494499499497517
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で80万バレルの減少となっており、週では560万バレルの供給減少となった。ジェット燃料の供給は28万バレルの増加となったが、依然として例年の4割程度の水準となっている。留出油の供給は15万バレルの減少となった。
ガソリンの生産量は増加したものの、製油所からの供給量は増えておらず在庫増となった。留出油の生産は横ばいで供給量は今週やや減ったことで、引き続き在庫が積み上がる状況になっている。石油製品全体の供給量は日量1658万バレルとなり、前週の1681万バレルに比べて減少している。

今週  前週  2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)679739666586942
ジェット燃料供給(万バレル/日)63355180153
留出油供給(万バレル/日)366381312316378
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格は3週連続で上昇した。表4の通り供給が減少しているにもかかわらず、ガソリン受渡価格(価格)もディーゼル燃料の受渡価格も横ばいとなっている。石油製品価格は前年同時期の半額程となっている。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)今週(5/15) 前週(5/8) 2週前(5/1) 3週前(4/24)  前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)0.8750.8770.6860.6171.937
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)0.8820.8890.7920.6772.053
原油(ドル/バレル)29.4424.7319.7215.9961.65
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

更に表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格の上昇は続いているが、ディーゼル燃料の価格はほぼ横ばいとなった。小売価格には下げ止まりが見られるが、卸価格は横ばいとなっており、今週、燃料需要が回復しているとはいえない。

小売価格今週(5/18)前週(5/11) 2週前(5/4) 3週前(4/27)  前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.8781.8511.7891.7732.866
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)2.2862.2572.2212.2263.258
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.5532.5192.4792.4763.514
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.3862.3942.3992.4373.160
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)

今後の見通し

今週のEIA統計では、原油在庫は498万バレルの減少と前週の74万バレル減少より在庫減が加速した。内訳では、製油所の稼働率が上向き、原油処理量が80万バレル/週が増えた。戦略備蓄への積み増し量は前週の約190万バレル/週から横ばいとなり、前週に比べて原油生産量が70万バレル/週減少、原油輸入量の減少と輸出量の増加で前週に比べて350万バレル/週の在庫減効果があったことを考えると、在庫減少の数字程は需要が回復していない状態といえる。個々の石油製品では、ガソリン在庫は生産が前週を上回ったにも関わらず、市中への供給量が減ったことが在庫の増加要因となった。留出油の在庫は生産量、供給量とも横ばいの状況で引き続き在庫が増加している。供給面では石油製品全体の総供給量が前週比で日量23万バレル減少している。小売りのガソリン価格は上昇し、ディーゼル燃料の価格も横ばいだが、今週、卸価格が横ばいとなったことで、原油需要が本格的な回復に入ったとは言えない状態となっている。

以上のことから、原油需要自体は回復し始めているが、まだ本格的な回復とは言えない。石油製品の総供給量が減少したことは製油所で生産した製品が製油所から市中へ供給されない状態を意味しているが、卸価格には上昇が見られていない。このことは燃料需要がそれほど増加していないことを示している。今週も原油在庫の減少したことで、直近に原油在庫が溢れるとの見方は更に遠のいたが、原油需要増加に伴う買いが入る状態はまだ遠いと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。