エネルギー速報:天然ガス在庫と採掘用リグ数の変化(つらつらコラム5月22日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日発表の天然ガス在庫量(5月9日から15日までの増減)は市場予想の前週比83Bcf増に対して、予想を下回る81Bcfの増加となった。予想を下回っただけでなく、前週の100Bcf以上の在庫増も大きく下回ったが、相場には大きな影響はなかった。一方で需要減見通しが懸念材料になり天然ガス価格は下落した。今日はEIAのレポートの中身を需要を中心にみていきたい。

図1は5月15日時点の天然ガスの在庫量と5年平均の中央値(黒線)および最小値と最大値の幅(灰色)を重ねたものとなる。表1は地域別の天然ガス在庫の内訳で、今週も全ての地域で在庫が増加した。在庫の量は前年度に比べて45%多く、5年平均と比較しても20%多い値となっている。ただし、在庫量の増加は前週に比べて20Bcfほど少ない量となっている。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)
天然ガス需要と供給

表2は5月14日から20日にかけての天然ガス供給側の内訳となる。前週の天然ガスの生産は89.9Bcfと前週の91.8Bcfから減少し、日量90.0Bcfを割り込んだ。カナダからの輸入は横ばいだったため、供給量全体は1.9Bcfの減少となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は5月14日から20日にかけての部門別の需要統計となる。天然ガスの総需要量は前週に比べて7.6Bcfの大幅減少となった。内訳は発電用需要が2.0Bcfと大きく増加したものの、住宅用・商業用が前週から40%近い8.7Bcfの大幅減となった。ただ、前年度の数字と比べると横ばいであり、季節外れの冷え込みによる暖房用需要があったとされている。輸出ではメキシコ向けのパイプライン輸出はほぼ横ばいだったが、LNG輸出は0.9Bcfの減少となった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
リグ稼働数

図2は過去13年分の原油・天然ガス採掘用リグ数の推移を見たものとなる。(色はリグの採掘方法の違いとなるが触れない)。今週もリグ数の大幅な減少が続き、ベーカー・ヒューズ社の発表している稼働中リグ数は337基(前週比37基減)となった。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの採掘用リグ数の前週比からと前年比からの変化を見たもので、5月12日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が34基減った258基(約12%減)、天然ガス採掘用が1基減少した79基(約1.3%減)となった。リグ数の減少が続き、1987年以来最低の数字となっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
EQTの減産とLNG輸出の減少見通し

EQTはアメリカ最大の天然ガス生産者で、ペンシルベニア州のマーセラス地域(推定埋蔵量19.1Tcf)と、オハイオ州のウティカ地域(推定埋蔵量1.61Tcf)において生産を行っているが、5月19日火曜日以降に現在の日量4.2Bcfの生産量の33%に当たる1.4Bcfを削減し、減産を45日間の期間続行して行うと発表した。これらの減産により、アパラチアガス田の5月の生産量は4月に比べて1.2Bcf減少した日量30.7Bcfの水準となる見通し。
一方、LNG輸出に関しては、今後、夏の終わりまで月平均20隻程度のLNG船による輸出がキャンセルされると見通しで、これによるLNG輸出への影響は日量3Bcfに達すると予想されている。

今後の見通し

今週の天然ガスの在庫統計(5月9日から15日)は前週比81Bcfの増加となり、市場予想の83Bcf増加を下回ったが、需要の先行き懸念の方が大きく天然ガス相場は下落した。EIAの報告によると、5月14日から20日までの期間の供給面では採掘用のリグ数の減少スピードはほぼ変わらず、原油採掘用リグと天然ガス採掘用リグの合計は34基減の337基となったことから、天然ガス生産量は減少を続けており、今週、生産量は日量90.0Bcfを割り込んだ。報道によるとアメリカ最大の天然ガス生産者であるEQTはペンシルべルア州とオハイオ州で天然ガスの生産の33%の削減を開始したとあり、今後、天然ガス生産のさらなる減少が予想される。需要面では住宅・商業用需要が8.7Bcfの大幅減、工業用は0.8Bcf減、発電用需要が2.0Bcfの増、LNG輸出は0.9Bcfの減と部門別にまちまちだったが、全体では7.6Bcfの大幅減となった。
アメリカ各州で都市封鎖の緩和で経済活動が再開しているが、天然ガス需要には全く影響が見えていない。世界での需要の落ち込みから夏まではLNGの輸出の先細りが続く見通しとなっている。現状では、一部で減産が始まっているが、アメリカや世界の天然ガス需要がいつ回復するのか分からない状況となっている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。