エネルギー速報:OPECプラスの減産裏付け(つらつらコラム5月26日)

OPECプラスの減産

年初より新型コロナウイルスが爆発的な広がりを見せたことで、世界の原油需要はおよそ日量3000万バレルともいわれる規模の需要減が発生した。そんな中で、今年3月末にこれまで行われてきた協調減産が産油国の足並みが揃わなかったため終了するというある種のアクシデントに見舞われた。そのため4月一杯は無秩序な増産が行われて、需給バランスと共に原油相場も崩壊した。ようやく、OPECプラスは5月1日から日量970万バレルという歴史的な量の減産に踏み切った。加えてOPECプラスの枠組みの外の産油国も協調して減産を行うことになったが、現状どうなっているのかを確認しておきたい。

4月時点の減産提案

以下が4月11日にまとまった減産案の骨子となる

OPECプラス:

OPECプラス外:

合計:今後2か月間、枠組み内で1370から1470万バレルの減産

ロシアとサウジアラビアの状況

昨日5月25日に報じられたロシアのノバク・エネルギー相の声明によると、ロシアは原油の日量200万バレルの減産を達成した。日量70万バレルのコンデンセートの削減をこれに加えることで250万バレルの約束を履行した。OPECプラスの減産にそれ以外のアメリカ、カナダ、ノルウェーなどの350から450万バレルの減産が加わること、欧州の都市封鎖の緩和による需要増によって、6月から7月の間に需給が均衡すると予想する。ただし、サウジアラビアやクウェート、UAEが独自に実施するような自発的追加減産をロシアが行う予定はないと報道された。
IEAの報告による2020年の世界の原油需要の見通し、前年比で810万バレル減が正しい数字ならば、6月から7月に需要均衡という主張は正しいと思われる。(価格上昇による原油増産が行われなければだが。)

一方でサウジアラビアに関しては4月末の時点で、クウェート、アルジェリア、ナイジェリアと並んで日量450万バレルの減産を開始した他、6月から自発的に日量100万バレルの減産を行うと発表した。この追加減産はサウジアラビアに加えて、UAEが日量10万バレル、クウェートが日量8万バレルで実施する。

海上貨物輸送に見る減産履行の裏付け

市場調査会社のケプラーによると、OPECプラス諸国から海上輸送される原油量は4月時点の日量約3300万バレルから約2700万バレルまで630万バレル減少した。最も減少したのはサウジアラビアで前月比日量220万バレル、ロシアも日量90万バレル減少した。また、別な調査会社ペトロ・ロジスティクスの調査でも、タンカーによる輸送量は4月の平均と比べて5月は日量約600万バレル減少したと発表されている。パイプラインでの輸出や自国の備蓄に回る原油が計算に入らないものの、最低でも970万バレルの目標に対して600万バレルの減産は裏付けられた形となる。また、来月も今月と同水準以上の減産が行われる公算は非常に高い。
なお、原油貨物や洋上備蓄の減少によりタンカーの傭船料は4月の下旬のピーク時の約20万ドル(中東・極東航路)が4分の1となっている。

今後の見通し

アメリカは5月25日までの戦没将兵追悼記念日の連休明けから9月第1月曜日のレイバーデーまで、夏のドライブシーズンに突入する。欧州も少し遅れて、バカンスシーズンへ入る。例年であれば、ガソリン需要の高まりで原油相場に上昇圧力がかかる。しかし、今年は都市封鎖こそ緩和されたものの、依然として新型コロナウイルスの影響が旅行産業や航空産業を中心に続いており、原油より精製されるガソリンや航空燃料、ディーゼル燃料の消費がそれほど増加していない状況が続いている。また、需給のバランスの改善は原油価格の改善に繋がり、原油増産圧力として表れてくることは確実と思われる。7月以降に枠組みに従い減産が緩むと、現在は需給のバランスが改善しているが、増産により再度悪化に反転しするのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。