エネルギー速報:天然ガス在庫と採掘用リグ数の変化、今後の見通し(つらつらコラム5月8日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日発表の天然ガスの在庫量は市場予想の106~109Bcf増に対して概ね予想通りの109Bcf増となり、前週の74Bcf、前年の96Bcfを上回り、前年の10月以来の100Bcf越えとなった。これを受けて天然ガス価格は大幅下落した。図1は天然ガスの在庫量と5年平均の中央値(黒線)および最小値と最大値の幅(灰色)を重ねたものとなる。表1は在庫増減の内訳で、今週の在庫は前年と比べて796Bcf多く、5年平均の中央値と比べて395Bcf多い量で、在庫の5年平均の最大値に近づいている。地域別にみると、今週も先週と同様全ての地域で在庫が増加した。後で述べるが、生産量が減少している中、暖房用需要の減ってきている北側の地域だけでなく南部の地域でも在庫が増加したことで、アメリカ全体で消費が減っていると考えられる。

表1 地域別天然ガス在庫(出展元EIA)

天然ガス需要と供給

表2は天然ガス供給側の内訳となる。前週の天然ガスの生産は91.8Bcfとその前の週の92.9Bcfと比べて1.1Bcf減と生産の減少が続いているが、生産量は依然、前年を上回っている。カナダからの輸入も減少を続けていることで、供給量全体で1.4Bcf減少した。カナダからの輸入が減った理由は、輸出元のカナダ・アルバータ州の天然ガス在庫が例年より少なく、価格の上昇によりアメリカ産の方が安価となったため、輸入量が減少した。

表2 部門別天然ガス供給(出展元EIA)

表3は部門別の需要の統計となる。今週は前週の発表と比べて天然ガスの総消費量が10.5Bcfの大幅減少となった。発電量の需要は横ばいだったが、工業用が2.7Bcfの減少、住宅用・商業用需要は7.9Bcfの大幅減少となった。新型コロナウイルスの感染拡大による工業施設、商業施設の消費減少で大幅に減少した。一方でLNGやメキシコ向けのパイプライン輸出はほぼ横ばいだった。

表3 部門別天然ガス需要先(出展元EIA)

リグ稼働数

図2は過去13年分の原油・天然ガス採掘用リグ数のグラフとなる。(色はリグの採掘方法の違いとなるが触れない)。前週末のリグ数は406基となっていて今週も59基と50基を超える大幅減が続き、直近の最低数となる2016年5月20日の404基とほぼ同数となった。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの採掘用リグ数の前週比からと前年比からの変化を見たもので、4月28日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が約15%、天然ガス採掘用が約5%の減少となっている。昨年同時期と比べると半分以下と急速なリグ数の減少が続いている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)

今後の見通し

今週の統計では、天然ガス需要の内、工業用需要が日量2.7Bcf、住宅・商業用需要が日量7.9Bcfの大幅減少となり、発電用需要や輸出は堅調だったものの、需要全体で10Bcfを超える減少で、前年の消費実績を割り込んだ。供給面では採掘用のリ今週の統計では天然ガス需要の内、工業用需要が日量2.7Bcf、住宅・商業用需要が日量7.9Bcfの大幅減少となった。発電用需要や輸出は堅調だったものの、需要全体で10Bcfを超える減少で、前年の消費実績を割り込んだ。供給面では採掘用のリグ数が1か月以上の期間で大幅な減少が続いており、原油採掘用リグと天然ガス採掘用リグの合計が406と直近13年で最低の数である404に並んだ。天然ガスの生産量にはリグ数減少の影響がじりじりと現れている。今後の見通しは、現状、生産の減少(約1.0Bcf減)よりも工業向け(2.7Bcf減)などを中心に需要減少のペースの方が速くなっているため、都市封鎖の緩和で需要が上向いたことが確認されるまでは価格の低迷が続くと考えられる。


5月1日にテキサス州のフリーポートのLNG施設の3番目の系列が商業運転を開始した。今後最大で日量0.66BcfのLNG輸出量増加が見込まれるが、現在の新型コロナウイルスによる世界的な需要減の中で、フルに能力を発揮できる日はまだ遠いと考えてよさそうだ。また今週4日にケンタッキー州のパイプライン事故によりアパラチア地域で生産減が生じており、5月4日と5日の天然ガス相場が高騰したが、来週の供給統計にも影響しそうだ。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。